日本の特許制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 20:05 UTC 版)
保護対象
日本の特許制度で、保護の対象になるのは、2条1項で定義される「発明」である(1条)。すなわち、「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいう(2条1項)。以下この項目では、この定義に基づいて解説する。
自然法則の利用
「自然法則」とは自然界において経験的に見出される法則をいう[要出典]。以下のものは自然法則を利用したものとはいえない。
- エネルギー保存の法則、万有引力の法則などの自然法則自体
- 永久機関など自然法則に反するもの
- 経済法則など自然法則以外の法則、ゲームのルールそれ自体など人為的な取決め、数学上の公式、人間の精神活動又はこれらのみを利用しているものといった、自然法則を利用していないもの
ただし、いわゆるビジネス方法関連発明といわれる発明については、コンピュータソフトウエアを利用するものであって、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウェア資源[1]を用いて具体的に実現されている場合は、保護の対象となる可能性がある。
技術的思想
「技術は一定の目的を達成するための具体的手段であって実際に利用できるもので、技能とは異なって他人に伝達できる客観性を持つものである」と判示されている(最高裁判所昭和52年10月13日第1小法廷判決・判例タイムズ335号265頁)。
ここで技術的思想でないものとして以下が挙げられる。
- フォークボールの投球方法などの技能
- 機械の操作方法又は化学物質の使用方法についてのマニュアルなどの情報の単なる提示
- 絵画、彫刻などの単なる美的創造物
創作
「発明」は創作であるので、例えば新種の鉱物や生物を発見しても、その発見に対し特許を取得することはできない。ただし、鉱物や生物を精製して取り出される物質は特許されうる。また、既知の物質であっても、新規な性質を発見しこの性質をもっぱら利用するようなものは「用途発明」として認められる。例えば、すでに知られているDDT自身に対してもう特許は取れないが、(それまでに使用用途として発見されていなければ)「DDTを用いた殺虫方法」に対して特許を取る事は可能である。「発明」と「発見」の境界は、突き詰めて考えると曖昧であると指摘する研究者もいる[誰?]。
高度のもの
「高度のもの」という部分は、実用新案法における「考案」の定義と区別するためのもので、実質的な意味はないと解される。
高度性と進歩性とを結びつけて考える説もあるが、どちらの立場をとっても実務上の影響はない。
発明のカテゴリ
特許法上、発明には3つのカテゴリがあり、カテゴリが不明確であることは明確性違反として拒絶理由となる。
- 物の発明(プログラム等を含む)
- 方法の発明(いわゆる単純方法)
- 物を生産する方法の発明
- ^ コンピュータなどの物理的装置やCPUなどの物理的要素をいう。
- ^ ここでいう「出願日」は国内優先権出願、パリ条約(第4条C(4)、同条A(2))による優先権出願を主張した場合には、その基礎とした出願日(36条の2第2項)。さらに2つ以上の優先権の主張を伴う特許出願の場合は、それらのうち最初の出願日と認められたものを指す(36条の2第2項かっこ書)。
- ^ 外国語書面出願が出願の分割による子出願(44条第1項、詳細後述)、実用新案登録や意匠登録からの変更出願(46条)又は実用新案登録に基づく特許出願(46条の2第1項)の場合は、この期間が経過した後であっても、これらの出願を行った日から2月以内なら、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出できる(36条の2第2項)。
- ^ 図面は除かれる(36条の2第5項かっこ書)図面について日本語の翻訳文を提出しなかった場合、出願が取り下げたものとみなされず、ないものとして(すなわち、願書に添付しなかったとして)取り扱われる。
- ^ 弁理士など知財業界では、出願審査請求を単に「審査請求」と呼ぶことが多いが、法律上、単に「審査請求」といった場合は、行政不服審査法に基づく請求(行政不服審査法3条、5条等)を指す。
- ^ ただし、分割出願の子出願、実用新案登録や意匠登録からの変更出願、実用新案登録に基づく特許出願の場合、(原出願日ではなく分割等を行った方の)新たな出願日から30日以内に限り、出願審査の請求をすることができる事が定められている(48条の3第2項)。これは、「出願日」は遡及効により原出願日になってしまう為逐条20版(p208)、分割等を行った時点ですでに3年が過ぎている事もありうるため、出願審査請求を可能にするためである。
- ^ なお、出願審査の請求期間は、2001年9月30日以前の出願については、出願日から7年以内であった。
- ^ なお、出願が取り下げられた旨が特許公報に載ってしまうので、これを見た第三者が出願が取り下げを信じてその出願発明を実施(若しくはその準備を)してしまう事が起こりうる。しかし、その後、出願人がこの期限延長制度を用いて出願審査請求を行った場合、実際には取り下げにならず、その後特許が成立してしまっうことがある。こうした場合、上記の発明実施(準備)者は、所定の条件を満たせば、通常実施権が与えられ(審査請求期間徒過後で救済が認められるまでの間の実施による通常実施権、48条の3第8項)、権利侵害を回避できる。
- ^ 平成23年8月1日から当面の間
- ^ 調査業務実施者
- ^ 検索者または特許サーチャーとも呼ばれる。
- ^ 検索指導者ともいう。
- ^ 実務上、明細書等の補正のうち、当初明細書等の範囲内にない事項のことを新規事項(new matter)という。
- ^ "特許権が及ぶべき範囲(特許発明の技術的範囲)" 産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会特許戦略計画関連問題ワーキンググループ. (2003). 特許請求の範囲と明細書の役割について.
- ^ "特許発明の技術的範囲とは、特許権の効力が及ぶ客観的範囲として一般に理解されている概念です。" 湘洋内外特許事務所. (2018). 特許発明の技術的範囲とは、何ですか?.
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