後北条氏 評価

後北条氏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/02 09:52 UTC 版)

評価

軍事面

早雲の代に上杉配下の幕僚だった太田道灌の発案という足軽の軍制を採用し、各城下に侍の屯所である根小屋と技術者保護のための職人町を築いて兵農分離をいちはやく志向した。冑類の生産は全国有数の規模で、鉄砲の導入にも積極的だった。

後北条氏は、小田原城を中心とした本城支城体制を確立した。各城には位が付けられ、城主には勲功によって昇格や降格、配置換えを行うという近代的な制度だった。

最盛期の後北条氏には、10万の軍勢の動員をも可能とした戦力があった。この軍事上の優越とともに、東北の伊達政宗、東海の徳川家康、中部の織田信雄、四国の長宗我部元親などとの外交上の連携をもって、後北条氏は関東自立を目指していた。

内政面

後北条氏は内政に優れた大名として知られている。早雲以来、直轄領では日本史上最も低いと言われる四公六民の税制をひき、代替わりの際には大掛かりな検地を行うことで増減収を直に把握し、段階的にではあるが在地の国人に税調を託さずに中間搾取を排し、また飢饉の際には減税を施すといった公正な民政により、安定した領国経営を実現した。江戸期に一般化する村請制度のさきがけと言える。

また、家督を継承するにあたっては、正室を重んじることにより、廃嫡騒動やそれに起因する家臣団の派閥化といった近隣諸国では頻繁に見られる内部抗争や離反を防ぐことに成功。さらにその結果として宗家のほとんどが同母兄弟となり、その元に構成された一門と家臣団には強い絆が伴った。ただし、近年の研究では系譜上は正室の子とされていた者が実際には側室の子であったことが判明しているケースも多いことに注意を要する(北条氏邦千葉直重など)。

東国において、古河足利氏、両上杉氏、佐竹氏など血統を誇って同族間での相克を繰り返し国人の連合を戦力とした旧体制に対して、定期の小田原評定による合議制や虎の印判による文書官製など創業時の室町幕府系家臣団由来による制度の整った官僚制をもって力を蓄えた。飢饉の年には家督を代替わりすることによって徳政令を出すという施政も見受けられた。


注釈

  1. ^ 近年の研究では諱は長氏ではなく盛時であったとみられている。
  2. ^ ただし、この強引な仲裁がのちの名胡桃城事件の伏線となったことも否めない。
  3. ^ 純長の養子入りの際に伊丹氏から付けられた家臣の一人、とされるので、それまでは伊丹氏の家臣であった可能性もある。
  4. ^ 旧狭山藩は現米5470石(表高1万石)であり、現米5万石未満の旧小藩に該当[20]
  5. ^ 綱成は為昌の養子とされているが、現在では為昌の追善は行っていたものの養子では無いとする説もある。また、為昌の追善に関しても後に北条氏規が継いでおり、その意味では氏規も為昌の後継者と言える[24]

出典

  1. ^ a b c 小田部雄次 2006, p. 335.
  2. ^ a b c d 新田完三 1984, p. 377.
  3. ^ 六巻本『北条記』巻2(4)早雲蜂起之事『北条史料集』21頁
  4. ^ 六巻本『北条記』巻2(4)『北条史料集』22頁
  5. ^ 栗原信充『先進繍像 玉石雑志』続編巻5
  6. ^ 黒田 2012, pp. 72–75.
  7. ^ 黒田 2013, pp. 16–17, §. 伊勢宗瑞論.
  8. ^ 黒田 2016, pp. 8–12, §. 北条氏綱論.
  9. ^ 佐々木 2008, p. [要ページ番号], §. 相模府中小田原の構造.
  10. ^ 佐脇 1997, p. [要ページ番号], §. 北条氏綱と北条改姓.
  11. ^ 黒田 2016, pp. 16–19, §. 北条氏綱論.
  12. ^ 斎藤 2005, p. 132 図.
  13. ^ a b 日本大百科全書(ニッポニカ)『狭山藩』 - コトバンク
  14. ^ 朝日日本歴史人物事典『北条氏勝』 - コトバンク
  15. ^ デジタル版 日本人名大辞典+Plus『北条氏重』 - コトバンク
  16. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)『北条氏長』 - コトバンク
  17. ^ 出羽元祐の孫
  18. ^ 『新編 大村市史』第五巻付録 諸氏系図
  19. ^ 新田完三 1984, p. 163.
  20. ^ 浅見雅男 1994, p. 151.
  21. ^ a b c d 華族大鑑刊行会 1990, p. 314.
  22. ^ 20世紀日本人名事典『北条 浩』 - コトバンク
  23. ^ 黒田 2005, p. 212.
  24. ^ 黒田基樹『戦国北条家一族事典』戎光祥出版、2018年、69・140頁。 






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