大砲 大砲の分類

大砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/10 00:54 UTC 版)

大砲の分類

大砲はその形状・構造や用途・歴史的経緯等によって様々な分類がある。

用途等による分類

M198 155mm榴弾砲 射撃の瞬間
1953年に行われたW9核砲弾の実験。M65 280mmカノン砲で発射。核出力は広島に投下されたのと同じ15kt。
Mk 45 5インチ砲 射撃の瞬間

用途、歴史的分類による種別は以下の通り

射程と弾道による分類

火砲を射程と弾道特性によって大別した模式図
(1)対戦車砲(及び戦車砲)は徹甲弾等によって目標の装甲を貫徹することが主目的で、射角は水平に近く砲弾は低伸弾道をとる。また、(2)対空砲は「より高く」、(5)野砲カノン砲(加農)は「より遠く」へ砲弾を到達させることが求められる。カノン砲や後述する榴弾砲の一般的な弾道は擲射弾道と呼ぶ。
(1)(2)(5)は射角が異なるだけで、いずれも砲弾を高初速で発射する"gun"、つまり広義のカノン砲に含まれ長砲身である。したがって、対戦車戦闘が可能な対空砲やカノン砲も存在し、特に現代の艦砲は遠距離砲戦をはじめ至近での水平射撃から対空戦闘まで幅広くカバーする。
これらと比べ、(3)迫撃砲臼砲)の砲弾は大きく湾曲した曲射弾道を描き、砲口初速を低く抑えているため射程は短い。空気抵抗と安定翼の使用によって着弾時の角度は垂直に近くなる。
狭義の(4)榴弾砲はカノン砲に比べ短砲身・低初速で最大射程も短い。ただし、榴弾砲とカノン砲の定義は曖昧[注 3]で、現代では榴弾砲の長砲身化により野砲・カノン砲は消滅・統合され、(4)(5)ともに"howitzer"と名付けられる例が多い。
なお、対戦車砲・対空砲(機関砲を除く)は現在多くの軍隊でミサイルに代替されている。


構造による分類

ライフル砲
砲身の内側の施条により、砲弾の飛翔時に回転を加えることによって、弾道の安定を図る方式の砲
滑腔砲
砲身の内側が滑らかになっている砲。ライフル砲に対するレトロニム。
ゲルリッヒ砲
砲尾から砲口にかけて口径が小さくなってゆく砲。口径漸減砲とも呼ばれる
多薬室砲(その形状からムカデ砲とも呼ばれる)
通常は尾栓側に入れられた装薬の力によって砲弾を発射する所を、複数の薬室を設け段階的に加速する事で射程の延長などを目指した砲
液体装薬
発射薬として液体の薬剤を使用する砲
無反動砲
ロケット砲
低圧砲
主に対戦車砲ないし軽量戦車砲として運用される。通常の火砲よりも低い腔圧、低初速で発射することにより、軽量低反動化を図った砲の総称。歩兵用擲弾発射器に広く利用される高低圧理論に基づくコッカリル 90mm低圧砲や、無反動砲、ロケット弾発射機などからの派生的形式などがある。
前装式
後装式
嚢砲
弾丸と袋詰された発射薬とを順に込めて使用する砲。砲尾に気密のための構造が必要になる
莢砲
金属薬莢式の砲
固定薬莢砲
砲弾と薬莢が固定されている莢砲
分離薬莢砲
砲弾と薬莢が固定されていない莢砲

注釈

  1. ^ 城郭や軍船などの構造物を破壊する目的で登場したが、近世江戸期になると砲術家が技能を誇示するために用いた[3]
  2. ^ 大友興廃記』天正4年(1576年)の記述として、南蛮から石火矢を得て悦び、「国崩し」と名付けたと記述があり、天正14年(1586年)の薩摩との戦いにおいて使用され、大きな威力を発揮したとされる[7]
  3. ^ 砲全般の分類や用語そのものが曖昧で、厳密な分類は非常に困難。同じ用語でも国や時代によって語義やその範囲が異なることもある。また、日本語には紛らわしい和訳や造語が多いので注意を要する。例として、英語の"cannon(キャノン)"は全ての火砲を包括する名詞だが、大日本帝国陸軍において「加農(カノン砲)」とは長砲身砲を指す(帝国陸軍はドイツ式に範をとったため、ドイツ語の"kanone"に由来)。また、「榴弾」は弾種を指す用語でほぼ全ての火砲(砲種)で使用する砲弾だが、「榴弾砲」として砲自体の名称に用いられる。
  4. ^ ただし、製作したものは今日の分類においては迫撃砲に当たる。

出典

  1. ^ マクニール 2002, p. 114.
  2. ^ マクニール 2002, p. 117.
  3. ^ 『テーマ展 武装 -大阪城天守閣収蔵武具展-』 大阪城天守閣特別事業委員会 2007年 p.76
  4. ^ マクニール 2002, p. 120.
  5. ^ マクニール 2002, p. 121.
  6. ^ 荘司武夫『火砲の発達』愛之事業社、1943年、214-215頁。doi:10.11501/1707339https://dl.ndl.go.jp/pid/1707339/1/123 
  7. ^ 菊池, 俊彦『図譜 江戸時代の技術 下』恒和出版、1988年、544頁。ISBN 4-87536-060-6 
  8. ^ 『歴史を動かした兵器・武器の凄い話』河出書房新社〈KAWADE夢文庫〉、2013年、133頁。ISBN 978-4-309-49884-3 
  9. ^ a b 貝塚 1970, p. 50.
  10. ^ 貝塚 1970, p. 49.
  11. ^ 貝塚 1970, p. 51.
  12. ^ a b 貝塚 1970, p. 52.
  13. ^ ダイアプレス 2009, p. 72.
  14. ^ 荒木 2012, p. 79.
  15. ^ ダイアプレス 2009, p. 73.
  16. ^ 「ワイド特集『文春砲』って何だ?」『週刊文春』2016年12月1日号
  17. ^ 有井太郎 (2016年3月11日). “『週刊文春』編集長が明かした、列島を揺るがす「文春砲」の神髄”. 週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社). http://diamond.jp/articles/-/87743 2016年6月28日閲覧。 
  18. ^ 田代砲 - アンサイクロペディア”. 2023年10月25日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「大砲」の関連用語

大砲のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



大砲のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの大砲 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS