国家の承認 国家要件と承認の関連

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国家の承認

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/26 03:14 UTC 版)

国家要件と承認の関連

国家として承認するには、まず「国家の要件(必要な条件)」が満たされている必要がある。まず「永続的住民」「明確な領域」「政府」という国家の3要件が満たされていないと、そもそも承認を検討する段階に達していないと判断されることになる。国際法的な判断としてはこれが最も大切である。

加えて、各国政府がある政府を承認するかどうか判断するにあたっては、様々な他の条件も加味して検討し、決定されることになる。「新国家が国家としての要件を満たしているかどうか」だけで国家の承認を判断するわけではなく、承認する側の国家の内政的事情によって承認が行われるかどうかが決められることが多い。

主権の発生と承認の関係

どの段階で国家が国際法上、主権を持つ主体になっているのか、ということに関しては2つの説がある。「確認(宣言)的効果説」と「創設的効果説」である。互いに対立する内容の説である。

  1. 宣言的効果説(確認的効果説)(Declarative theory of statehood)
    宣言的効果説(確認的効果説)は、「国家は、事実上、国家としての要件を満たした段階で、国際法上の主体として存在する」ことを前提とした上で、他国家による当該国家の承認は、そのことを確認する行為であると位置づける[5]。「新たに誕生した国家が国際法上の国家として認められるかどうかは承認する側が決めることではなく、新国家が国家としての要件を満たしているかどうかで客観的に決められるべきものである」というものであり、他国家が承認をしない(あるいは承認しない国家がある)ということをもって国際法上の主体であることを否定することにはならない、とするものである。つまり、ある国が3要件を満たしていたら、それで既に主権は発生しており、承認の有無に関係なく、承認する以前から主権は発生している、とするものである。
  2. 創設的効果説(Constitutive theory of statehood)
    創設的効果説は、「国家は、他国家から承認を受けることにより、初めて国際法上の主体として存在することになる」という考え方である[6]。この場合は、他のどこの国からも承認を受けていない新国家は国家ではないとされるが、現実には「一つでも承認している国があれば国際的に国家とみなされる」というほど単純ではなく、明確な区別ができるような基準でもない。

従来は、どちらかというと創設的効果説のほうが有力ではあったが、第二次世界大戦後に相次いで独立を達成した新興諸国は、宣言的効果説のほうを支持する傾向が強く[7]、既に国際社会に新規参入した国の数のほうが既存の国の数をはるかに上回っており、現在では既に宣言的効果説のほうが有力になっている[8][注釈 1]

国家承認・政府承認の方法

国家承認・政府承認には、二種類の方法がある。いずれも先行して国際法上の主体として認められている国家からのアクションを要する。

  1. 明示的承認:新国家からの国家成立の通告に対して書簡、祝電、条約などにより承認の意思を明示的に表明することをいう。
  2. 黙示的承認:明示しなくても外交使節団の派遣・接受、認可状を伴う領事の派遣・接受、二国間条約締結などは相手を国際法主体として認めていることが前提の行為であり承認の意思が推定される。(外交特権を有しない通商代表部を設置することは承認行為とはみなされない)

通常、国家承認は明示的に行われる。しかし国家成立の経緯が複雑な場合などは黙示による承認になろう。

また通常の承認(法律上の承認)が行われる前に“事実上の承認”が行われることがある。新国家が「新国家が政情不安定である」「国際法遵守の意思や能力に疑問がある」など問題が有るが、それでも新国家と外交関係を設定する必要がある場合に暫定的に承認を行う。

事実上の承認はあくまで暫定のものであり、問題が解決されれば法律上の承認に移行され、解決できなければ承認の撤回が可能である(例:1948年アメリカがイスラエルに対し事実上の承認。その後法律上の承認を行う)。


注釈

  1. ^ 現在の世界の通説はあくまで宣言的効果説である。先進諸国、西欧諸国では、ほぼ宣言的効果説が支持されている。だが、例外的に、発展途上国の政府、時代錯誤的に古い考えを持つ人間によって運営され、人権を無視し国民を圧制で苦しめるような傾向が強い政府、また、分離独立運動の危機にさらされている国の政府などでは、創設的効果説を支持する傾向がある。[要出典]

出典

  1. ^ 清水良三 1979, pp. 349.
  2. ^ 大井孝 2008, pp. 791.
  3. ^ Ordre de la LibérationArchived 2009年7月4日, at the Wayback Machine. - 解放勲章博物館(en:Musée de l'Ordre de la Libération)
  4. ^ 長崎暢子 1991, pp. 45.
  5. ^ 清水良三 1979, pp. 356.
  6. ^ 清水良三 1979, pp. 355–356.
  7. ^ 波多野里望、小川芳彦『国際法概論: 現状分析と新時代への展望』有斐閣、1982, p.76
  8. ^ 国際法学会『国際関係法辞典』1995。p.343
  9. ^ 清水良三 1979, pp. 351–352.


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