京都アニメーション 歴史

京都アニメーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/19 15:04 UTC 版)

歴史

創業

創業者の八田陽子(旧姓:杉山)は東京都出身で、高校卒業後にアニメーターである実兄の杉山卓の紹介により手塚治虫に師事し、旧虫プロダクション仕上げ経験を積んだ[10][11]。その後、転職して京都府に移住し、福井県の農家出身で経理担当の鉄道員である八田英明と知り合い、1975年に結婚[12]。宇治市に移り住み、3人の子供を育てる傍ら、そこで近所の主婦に請われてアニメ製作の塾を開講した[10][12][13]。その後、東京にいる実兄やシンエイ動画の社長である楠部大吉郎などの人脈を駆使して仕事を探し、1981年に前述の主婦らと共にシンエイ動画、タツノコプロ及びサンライズの仕上げの仕事を始めたことが事業の始まりである[14][15]。当初は「京都アニメスタジオ」と名乗っていたが、のちに「京都アニメーション」に改称して英明を社長に据え、1985年に有限会社として法人化される。元は仕上げの工程を行う仕上専門会社であったが、1986年に作画部門を設立し、他社の動画の下請けを始めている。

1987年のタツノコプロ制作のテレビアニメ『赤い光弾ジリオン』では実質的な制作を行ったとされ、同作品のプロデューサー石川光久アイジータツノコ(後のProduction I.G)を設立する際には出資を行った[16]。なお、京都アニメーションもアイジーも、設立当初は杉山卓及び陽子の実姉が、大手製薬会社で経理を担当した経験を活かして支援していた[17]。また、当時アニメアールに所属していた逢坂浩司を招いて、社員の指導を依頼する事もあった[18][19]

体制確立後

1991年、既に東京で著名なアニメーターだった木上益治が入社し、後進の育成も含めて大きな原動力となった[20]。やがて1990年代半ばから、演出・作画・仕上げ・背景・撮影などを自前で行う体制を整え、テレビアニメのグロス請けを行うようになった。スタジオを4か所構えた時期もあったほか、ゲームソフトのパッケージデザインや、そのソフトに関連したコミック版も請け負っていた。一方で、他社同様に雇用条件は厳しく、社員の入れ替わりが激しかった[21]

1992年にはシンエイ動画からの受注で内田春菊原作のテレビアニメ『呪いのワンピース』を、演出から仕上げまで初めて社内スタッフだけで制作した。このころにはすでに質の高い仕事で評判になっていた。その後、長らく主要取引会社であるシンエイ動画・サンライズ・ぴえろ・タツノコプロ・GONZOなどの制作作品のグロス請け等の下請けを行った。また、『紅の豚』や『魔女の宅急便』などのスタジオジブリ作品の制作にも参加した。アニメ監督の杉井ギサブローによると、その評判から仕事の依頼が絶えず、発注元の制作会社では京都アニメーションに仕事を依頼するためにスケジュール調整を行うことがあったという。

1999年、株式会社に組織変更。このころから、デジタルペイント・デジタルコンポジット制作体制へと移行する。

元請制作参入後

2002年、グロス請けを担当していたテレビアニメ『The Soul Taker 〜魂狩〜』のスピンオフ作品であるOVAシリーズ『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』にてタツノコプロと共同元請制作ながら一般作品の元請制作に参入(1・2話のみ)。

2003年、初の元請制作のテレビアニメ『フルメタル・パニック? ふもっふ』をいくつかの話数でタツノコプロの制作協力を得ながら制作し、アニメファンの注目を集めた。2005年には全話グロス請けに出さずに制作した『AIR』を手がけ、他を圧倒するほどの作り込みと巧みな演出が話題を呼び、京都アニメーションの名はアニメファンの間でブランド化した[22]。以後、グロス請けは動画仕上げにとどめ、1話毎のグロス請けを請けず自社元請制作に専念するようになり、『AIR』以降、ゲームブランドKeyが製作した恋愛アドベンチャーゲームをテレビアニメ化し、『Kanon』、『CLANNAD』、『CLANNAD 〜AFTER STORY〜』と毎年1作ずつ制作した。

2006年、初めて地上波UHFアニメとして制作した『涼宮ハルヒの憂鬱』は、「時系列シャッフル」と呼ばれる手法などで同年上半期最大の話題作となった[23]

2009年、自社オリジナル企画OVA『MUNTO』に新作カットを加えたディレクターズカット版として『空を見上げる少女の瞳に映る世界』を制作し、UHFアニメとして放送。同時期に劇場版企画『天上人とアクト人 最後の戦い』で劇場アニメに初進出した。

同年、軽音楽をテーマとした同年4月の『けいおん!』では、キャラクター名義のCDとして初のオリコンチャート1位獲得や、登場人物の使用する楽器が急激に売り上げを伸ばすなどの結果、日経MJ2009年ヒット商品番付の西前頭に選出されるなど[24]、その経済的影響力にも大きな注目が集まり、マスメディアから社会現象と呼ばれるまでに至った[25][26]。本作は2010年に第15回アニメーション神戸において作品賞・テレビ部門を受賞。2011年に公開された劇場作は興行収入19億を記録し、2012年に第17回アニメーション神戸において作品賞・劇場部門を受賞した。

文庫レーベル展開後

2009年10月2日から第1回京都アニメーション大賞を開催し、2011年にはKAエスマ文庫レーベルを立ち上げ、奨励賞のうち『中二病でも恋がしたい!』(著:虎虎、イラスト:逢坂望美)と京アニBON!での連載作品『夕焼け灯台の秘密』(著:志茂文彦、イラスト:門脇未来)を文庫本化した。

2012年からは上記の京都アニメーション大賞の受賞作品を中心としたKAエスマ文庫原作・原案作品の制作が多くなり、他社の原作付きの作品は『氷菓』を最後にしばらく制作が行われなかった[注 1]が、2014年に以前アニメ化している「フルメタル・パニック」シリーズでつながりのある賀東招二著・富士見書房発行のライトノベル『甘城ブリリアントパーク』のテレビアニメ制作が発表され、2014年10月から12月まで放映された。

2014年10月、第19回アニメーション神戸賞において特別賞を受賞した。

2016年9月、『映画 聲の形』が公開。本作は京都アニメーションとしては初となる、テレビシリーズを挟まない映画となった[5]

第1スタジオにおける放火事件

放火事件により全焼した第1スタジオ(2019年7月21日撮影)

2019年7月18日、第1スタジオ(後節参照)で放火による火災が発生し、建物が全焼。国内の放火事件では平成以降最悪となる36名の死者(内3名は病院へ搬送後に死亡)を出し、33名が負傷、1名は無傷だった[27][28]。一方で2019年7月20日から8月31日まで徳島市書店小山助学館本店で京アニ原画展「私たちは、いま!!特別展」が企画されており、事前に貸し出されていた原画70点は被害を免れている。尚、原画等の紙書類は殆どが焼失したが、サーバルームは火元から遠くコンクリートで囲われていたことから被害を免れ、画像データは全て回収された。




注釈

  1. ^ 長年、ソフト発売元として、2000年代前半からゲートキーパーズやキディ・グレイド等のグロス請けから付き合いがあったKADOKAWAとポニーキャニオンが製作枠を分け合っていたが、『氷菓』以降はKADOKAWA製作枠がなく、ポニーキャニオン製作枠が京都アニメーションが版権を持っている作品しかなかったため。
  2. ^ 一部は原作に逆輸入されている。
  3. ^ ただし前述の通り、『甘城』筆者の賀東招二は本スタジオと関わりが深い。
  4. ^ 当初は2020年1月10日に世界同時公開予定としていたが[41]、諸般の事情によって公開延期となる[42]。その後新たに4月以降の公開を目指していた[43]ものの、新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受け、公開の再延期が4月6日に発表された[44]
  5. ^ 当初は2020年夏公開予定だったが、放火殺人事件により一旦は公開中止が発表されたものの、2019年11月11日、公開延期という形で再び公開が発表された。2020年8月15日、ティザーPVにて2021年公開が発表された。
  6. ^ 『TV版Key作品 オーディオコメンタリー』での発言が複数回あるのに加え、ビジュアルファンブックの中でも取り上げている。

出典

  1. ^ 「京アニ」スタジオで爆発=複数死亡か、負傷30人以上-放火の疑い、男を確保」『時事通信』時事通信社、2019年7月18日。2019年7月18日閲覧。オリジナルの2019-07-18時点におけるアーカイブ。
  2. ^ a b 第35期決算公告、2020年(令和2年)9月16日付「官報」(号外第193号)95頁。
  3. ^ 京アニ放火1年、犠牲者の妻「毎日会いたくて探してしまう」…涙の追悼式」『読売新聞』読売新聞社、2020年7月18日。2020年8月2日閲覧。
  4. ^ 会社概要”. 京都アニメーション. 2010年8月16日閲覧。
  5. ^ a b “映画「聲の形」2016年秋、松竹系公開 山田尚子監督、京都アニメーションの話題作”. アニメ!アニメ!. (2016年1月1日). https://animeanime.jp/article/2016/01/01/26369.html 2017年5月23日閲覧。 
  6. ^ 丁寧な作品、幸せに満ちた日常…京アニにエール集まる理由」『京都新聞』京都新聞社、2019年8月1日。2019年8月2日閲覧。オリジナルの2019-10-13時点におけるアーカイブ。
  7. ^ 木村正人 (2019年7月19日). “「京アニは作品でも暴力を使わず誰も傷つけていないのに」理不尽な大量殺人に広がる悲嘆の声”. ニューズウィーク日本版. CCCメディアハウス. p. 1. 2019年11月6日閲覧。
  8. ^ 大串誠寿 (2019年8月28日). “京アニが示した「世界」”. 西日本新聞社. 2019年11月6日閲覧。
  9. ^ 河嶌太郎 (20190719T110900+0900). “日本の至宝「京アニ」 狙われた精鋭集まる「第1スタジオ」 〈dot.〉”. AERA dot. (アエラドット). 2019年7月19日閲覧。
  10. ^ a b 「魂込めた作品 作り続けて」 京都アニメ創業者の兄 呼び掛け”. 東京新聞TOKYO Web. 中日新聞東京本社 (2019年7月20日). 2019年8月13日閲覧。
  11. ^ 妹が育てた京アニ、再興を 創業者の兄、「後輩」への思い」『朝日新聞』、2020年11月18日、朝刊14版、30面。2020年1月26日閲覧。
  12. ^ a b Johnson, Scott; Brzeski, Patrick (2019年12月20日). “Tragedy in an Animation Utopia: Horror, Heartbreak and Mystery After an Arson Massacre” (英語). The Hollywood Reporter, LLC. https://www.hollywoodreporter.com/features/tragedy-an-animation-utopia-picking-up-pieces-wake-a-japanese-massacre-1263818 2020年1月26日閲覧。 
  13. ^ 奪われた輝き: 京アニ放火殺人事件/上」『毎日新聞』、2019年8月17日、22面。2019年8月18日閲覧。
  14. ^ 世界中から悲しみが届く、京都アニメーションの偉大な功績”. NEWSポストセブン. 女性セブン2019年8月8日号. 小学館 (2019年7月28日). 2019年8月13日閲覧。
  15. ^ 杉山卓 (2019年8月18日). “京都アニメーションとわたし1”. 「テレビアニメ全集」のころ. 2019年8月25日閲覧。
  16. ^ 「この人に話を聞きたい 第六十九回 石川光久」『アニメージュ』徳間書店、2004年1月号
  17. ^ 杉山卓 (2019年8月19日). “京都アニメーションとわたし2”. 「テレビアニメ全集」のころ. 2019年8月25日閲覧。
  18. ^ Ogawa55animatorのツイート(1152711208983601152)
  19. ^ 赤根和樹監督が語る“日本のアニメを存続させるために、いまできること””. アキバ総研. カカクコム (2020年4月12日). 2020年4月13日閲覧。
  20. ^ 毎日新聞2020年7月18日朝刊14版30面
  21. ^ 京アニ元社員、古巣への思い 感謝とエール、社長に届け」『産経新聞』産業経済新聞社、2019年7月30日。2020年8月2日閲覧。
  22. ^ 大野修一「秋新番◆極私的考察」『アニメージュ』徳間書店、2006年12月号、78頁
  23. ^ ここがすごいよ『涼宮ハルヒの憂鬱』 [リンク切れ]オリコン、2006年6月21日
  24. ^ 日経ヒット商品番付、Twitterが小結に ドラクエIXやけいおん!も」『ITmedia NEWS』アイティメディア、2009年12月2日。2020年1月26日閲覧。
  25. ^ オタクも女子高生も熱狂、150億円市場生んだ「けいおん!」人気の理由」『NIKKEI STYLE』日本経済新聞社、2012年1月9日。2020年1月26日閲覧。
  26. ^ もはや社会現象!アニメ『けいおん!』から主人公・平沢唯愛用のギターが発売」『ORICON NEWS』オリコン、2009年8月8日。2020年1月26日閲覧。
  27. ^ 京アニ生存者 2階から飛び降り救助か 被害者8割が20~30代”. 産経ニュース. 産業経済新聞社 (2019年8月14日). 2019年8月25日閲覧。
  28. ^ 京アニ事件、死者36人に”. 共同通信 (2019年10月5日). 2019年10月5日閲覧。
  29. ^ 小林佑基 (2009年7月22日). “アニメ「けいおん!」関連商品人気”. 読売新聞 (読売新聞社). オリジナルの2009年7月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090723095623/http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/tv/20090721et03.htm 2009年7月24日閲覧。 
  30. ^ 山崎健太郎 (2009年7月21日). “「けいおん!」の新作番外編が製作決定-Blu-ray/DVDの第7巻に収録。BDは初回限定”. AV Watch (Impress Watch). https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/303873.html 2009年7月24日閲覧。 
  31. ^ 原口正宏「夏…再訪」『アニメージュ』徳間書店、2006年7月号
  32. ^ 「他愛ない愛しさ キャラクターデザイン・池田和美さんが語るKanonの少女たち」『アニメージュ』徳間書店、2006年7月号
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  34. ^ 京アニ放火 バケツに向きしゃがむ男、叫び声と同時に炎・煙…発生時の第1スタジオは」『産経新聞』産業経済新聞社、2019年7月31日。2020年1月26日閲覧。
  35. ^ 第1スタジオの解体始まる 京アニ放火事件」『時事ドットコム』時事通信社、2020年1月7日。2020年2月16日閲覧。
  36. ^ 事件現場の京アニスタジオ 解体工事が終了”. 産業経済新聞社 (2020年4月28日). 2020年4月28日閲覧。
  37. ^ 京都アニメーション商品開発部”. foursquare. 2017年8月8日閲覧。
  38. ^ 会社概要”. アニメーションドゥウ. 2014年11月15日閲覧。
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  40. ^ 合併公告、2020年(令和2年)9月16日付「官報」(号外第193号)95頁。
  41. ^ “ヴァイオレット・エヴァーガーデン:完全新作劇場版アニメが20年1月に公開”. MANTANWEB. (2018年7月2日). https://mantan-web.jp/article/20180702dog00m200015000c.html 2018年7月2日閲覧。 
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  43. ^ “京アニ放火から3カ月、八田社長が事件後初会見 「7月18日以来忘れていない。何も変わっていない」”. ねとらぼ. (2019年10月18日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1910/18/news102.html 2019年10月18日閲覧。 
  44. ^ “『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公開延期のお知らせ”. 『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』公式サイト. (2020年4月6日). http://violet-evergarden.jp/news/?id=108 2020年4月6日閲覧。 
  45. ^ オンライン ショッピング 通販”. 角川書店. 2010年9月23日20:21閲覧。
  46. ^ NHK 大津放送局 | 番組情報 | おうみ845 タイトルロゴについて”. NHK大津放送局. NHK. 2010年8月16日23:17閲覧。
  47. ^ 『京アニ&Do C・T・F・K 2013』特設サイト | 京都アニメーション 2013年10月5日閲覧。
  48. ^ 第3回京アニ&Doファン感謝イベントのビジュアルと内容が公開”. おた☆スケ. 2017年5月20日閲覧。





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