ルパン三世 PART5
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/09 14:25 UTC 版)
概要
2015年放送のシリーズ(以下『TV第4シリーズ』)から2年ぶりとなるシリーズである。『TV第4シリーズ』に関わった主要スタッフが中核として引き続き起用され、アニメーション制作をトムス・エンタテインメント(以下、TMS)自社ではなく『TV第4シリーズ』と同じくTMSの子会社であるテレコム・アニメーションフィルム(以下「テレコム」)が担当している。また、テレビシリーズでは初となる製作委員会方式が用いられた。
主な舞台はフランスとなっている[1]。これに関しては、イタリアを主な舞台とした『TV第4シリーズ』終了から期間がそれほど空いておらず、地続き感のあるドラマを感じてもらうためであるほか、その最終話でイタリアから旅立ったルパン達が現在もヨーロッパに滞在し、ルパン一世の生まれた地であるフランスを拠点にしている流れを作りたかったためである。ただし、舞台がほぼイタリアに固定されていた前作とは異なり、劇中では物語の舞台がフランス国外に移ることも多い。
作品のテーマは「ルパンがネット社会を生き抜いていく」など現代的なものになっている[2]。
出演者の津田健次郎によると、本作は若い世代による「新しいルパンを作り上げていく」という意気込みが強く、長年続いてきた世界観をいかに損なわず新しくできるかを模索していたといい、原点回帰でもある作品だったという[3]。そのため、それまでは躊躇されてきたという人が死ぬ場面もしっかり描写され[3]、被弾などによる流血の描写も過去作より多い。
これまでのシリーズは1話完結が基本だったが、本作は4本の中編と7本の1話完結型のエピソードで構成されており、中編では各話のラストで次回への引きが入るクリフハンガー構成になっている。そのため、各中編の冒頭に「EPISODE○○」、最後に「EPISODE○○ Fin」の表記が入る[4][5][6]。
2018年6月には、シリーズレギュラーのエンゾ・ブロン役として俳優の上川隆也が出演することが発表された。上川はすでに本作の第1話に同役で出演していたが、その時点ではノンクレジットであった[7]。
1971年放送開始の『TV第1シリーズ』から次元大介役を務めてきた小林清志が”最終話まで出演した”最後のテレビシリーズとなった[8][注 1]。
服装デザイン
それまでは各シリーズごとに色が変わっていたルパンのジャケットに関して、本作では過去作の歴史を全肯定する意味で過去にテレビシリーズで使われた色が再び採用された。「現代のルパン」であるため『TV第4シリーズ』と同じ青[注 2]を本シリーズ標準服装デザインと設定しており、脚本に合わせて緑(TV第1シリーズ)や赤(TV第2シリーズ)、ピンク(TV第3シリーズ)[注 3]のジャケットを着用する[4][5]。また、次元・五ェ門・銭形警部に関してもルパンのジャケットに合わせ、各テレビシリーズ放送当時のデザインで登場する。
製作概要
シリーズ構成・脚本には大河内一楼が初起用され、設定考証は『Lupin the Thirdシリーズ』にて設定考証を務めた白土晴一が務める。大河内の起用は、『TV第5シリーズ』にて企画開発を務めている鈴木常泰が、トムス・エンタテインメント制作の映画『伏 鉄砲娘の捕物帳』で、共に作品制作に携わったことのあった大河内をシリーズ構成にオファーしたことによる[9][10]。
大河内は最初、「今までの『ルパン』とは違う新生『ルパン』にする」という企画書を制作陣に提出した。これに、長年『ルパン三世』に関わってきたスタッフたちは驚き、警戒する者もいたという。そんな中、大河内の提案は監督の矢野雄一郎には前向きに受け入れられ、大河内は「現代の新しいルパン」を目指しながらも「これまでのシリーズを全肯定する」シナリオになるように取り組んだ。今回、大河内が「現代のルパン」を作ることを企画の要としたのは、今までルパンを観たことがない若い層に観てもらえる作品にするため、舞台を21世紀の現代としてルパンたちがスマホなどのデジタルガジェットを駆使して「お宝」を盗む、本作のキーキャラクターにも「天才ハッカー少女」が登場するなど、「デジタル」や「サイバー」が物語の重要な要素となっている。また、旧来のファンにも楽しんでもらうために「これまでのシリーズを全肯定する」シナリオを目指し、原作漫画や過去のアニメシリーズのキャラクターが登場するなど、さまざまな取り組みがなされている[9]。
これらの取り組みは、最終的にスタッフたちから好評を得た。クリエイティブプロデューサーの浄園祐は大河内のシナリオを称賛しており、「もっと早くに出会いたかった」「今作はルパンシリーズの分岐点になるという手ごたえを感じる」と評している[9]。
中編エピソードの脚本は「EPISODE I」「EPISODE III」「EPISODE IV」を大河内、「EPISODE II」を雑破業、1話完結型エピソードの脚本は大河内や副監督の酒向大輔をはじめ、野島一成、大倉崇裕、綾奈ゆにこ、時雨沢恵一、西田シャトナーがそれぞれ務めた。1話完結型エピソードではそれぞれのルパン像が描かれ、キャラクターデザインや背景イメージには当時のスタッフが参加するなど、エピソードに合わせて異なる演出を盛り込んでいる[4][5]。
上述の通り、主要スタッフの多くは『TV第4シリーズ』から引き継がれた。キャラクターデザインも引き続き横堀久雄が起用されたため『TV第4シリーズ』から大きな変更はないが、現代を描くにあたって『TV第4シリーズ』における強弱のある線から少しスッキリした線に変更された[9]。
アフレコに関して、初代ルパン三世役である山田康雄は映像が完成していないと「仮に録音した台詞と後からニュアンスや長さの違う絵が完成しても、リテイクの時間的余裕は無くそのまま放送される。その場合、演技で恥をかくのは役者である」との考えから収録を共演者と共にボイコットしたという逸話を持っており、そうした声優側の意向を「役者さんに100%の演技をしてもらおう」と山田の没後もスタッフが可能な限り守っていることから、近年では珍しく映像は毎週完成された状態で収録された[2]。
音楽はこれまでのシリーズと同様大野雄二が担当。180曲以上の書き下ろし曲[11]のほかに、「デンジャラス・ゾーン」や「マグナム・ダンス」、「恋はサンパウロ」など過去作のアレンジ版BGMや『TV第4シリーズ』のBGMも使用されている。
- ^ 2021年放送開始の『TV第6シリーズ』第0話をもって降板した。その後、2022年7月30日に肺炎で死去。
- ^ ただし、『TV第4シリーズ』での青よりも若干明るくなっている(ネクタイも赤からピンクに変更)。
- ^ 栗田がピンクのジャケットのルパンを演じるのは本作が初となった。
- ^ 正しい発音は後ろにアクセントが入る「アミ」だが、殆どの人物から「アミ」と呼称されている。
- ^ 第9話で彼もまたルパン三世候補であったことが明かされる。また、ダンドレジーはアルセーヌ・ルパンI世の母親の姓であり、本作のダンドレジーもルパン一族の血縁者である。
- ^ 前回の登場は『ルパン三世 PARTIII』第11話「ルビーは血の汗を流す」、詳しくはルパン三世 PARTIIIの登場人物#第11話「ルビーは血の汗を流す」を参照
- ^ 「脳力」ゼロの者のみ開錠できる。
- ^ EDクレジットでは「マック」と表記。
- ^ 伝統派が支配する旧市街では一切ネットが敷かれていないが、実際には王宮に最新のセキュリティシステムを導入していた。
- ^ EDクレジットでは「ミラージュ母」と表記。
- ^ EDクレジットでは「ミラージュ」と表記。
- ^ ロシア語で「お金」「銭」(厳密には「硬貨」)の意
- ^ 加盟していない理由はルパン曰く、国自体が巨大なヤクザだと銭形に説明しており、実際に軍の司令官がルパンゲームの配当金を目当てにルパンの殺害を命じるほどである。
- ^ A判定が最高評価
- ^ ただし、「死の翼アルバトロス」においてはすき焼きを食べており、五ェ門もこの時はビールだったが本作では日本酒に変更されている。
- ^ カリオストロの城では偽者であったが本作は傷だらけになった本人で当時いなかった不二子も乗っている
- ^ TVシリーズのパラレルワールドもしくはルパンのでっち上げであるはずのファーストコンタクトでの決闘も過去の出来事として描かれていた。
- ^ 第1シリーズ第8話のMr.ゴールド、第17話の星影銀子、第2シリーズ第144話のナンジャ・モンジャ兄弟、第3シリーズ第1話のスターモーなど。
- ^ なお、次元だけはルパンが不二子の元へ向かう際、素顔を知っているかのような素振りを見せていた。
- ^ スピンオフ作品である『LUPIN the Third -峰不二子という女-』と『PART4』未放送話2話を除く。
- ^ 第20話から最終話は、2018年8月25日放送の24時間テレビ 「愛は地球を救う」放送の為、1週遅れとなった。
- ^ 初回のみ土曜 2:29 - 2:59(金曜深夜)にて放送。
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