ルイーズ (オペラ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/28 05:18 UTC 版)
あらすじ
時と所:19世紀末のパリ、モンマルトル地区
第1幕
労働者街にあるルイーズの家
ルイーズは自宅のバルコニーで、向かいのアパートのテラスにいるジュリアンと恋人同士の会話を楽しんでいる。ジュリアンと結婚したいが、両親を悲しませることになり、反対に両親の言いなりになって、ジュリアンと別れるなら、自分の心は死んでしまうと心情を吐露する。ジュリアンはルイーズの父に手紙を書いて、二人の結婚を許してもらおうと提案する。さらに、それが受け入れられなければ駆け落ちしかないと言う。ジュリアンは「君のようなとびきりの笑顔のモナリザはいない」と歌い。音楽は抒情性を高めつつ、二人が並行するオクターヴで愛を語っている。 威圧的な音楽と共に買い物から帰って来たルイーズの母親は、2人の姿を見つけるや否やルイーズを家の中へ入れ、あんな男を相手にしてはいけないと娘を叱りつけた。ルイーズの母は、安定した収入もなく芸術家のつもりでいるジュリアンと、娘が付き合うことに反対なのだ。ルイーズはジュリアンだって、しっかりした伴侶がいれば、酒場に入り浸ったりしないと主張し、ジュリアンの心を射止めたことを自慢し、母の怒りを煽る。この場面はシャルパンティエには珍しく半音階和声を多用している。 父親が空腹を抱えて「夕飯はできているか」と仕事から帰えると夕飯の食卓の場面となる。母は恋に一生うつつをぬかして過ごす金持ちの話をすると、父は「平等なんて、ただのご立派な言葉だな」とこぼすが、これは政治的なメッセージを含む最初の言葉として注目される。「隣のジュリアンから、ルイーズと結婚したい」という手紙を貰っていると話す。ルイーズは父の反応を心配そうに観察していると「一度家に連れて来なさい」と言う。父親としては娘可愛さから同情的な態度を示す。一方、母親としては妥協を許さぬ厳しい態度をとって、「そんなことは許さない」と激しく怒り出す。父は母との力関係から母親の意見に従わざるを得ず、結局父親はルイーズにジュリアンとの結婚は諦めるよう諭さざるを得なかった。ルイーズはそれならどうやって最良の結婚相手を選べばいいのかと食い下がる。父親は経験が大事なのだと優しく彼女に言った。そして娘の気を落ち着かせようと、いつものように新聞を読んでくれと頼むと、ルイーズは新聞を読み始めると感情を堪えきれず泣き出してしまうのだった。
第2幕
第1場
モンマルトルの丘のふもと
「目覚めるパリ」と題される前奏曲と共に幕が開く。この前奏曲は最初に出てきた単純な動機をつなぎ合わせたものである。早朝。丘のふもとの四つ角で、物売りの女たちが話をしていると、一晩中この周辺を彷徨っていた一人の夢遊病の男が現れ、自由を謳う演説を始める。この男が物売りの若い娘にちょっかいを出すので、周りの女たちは彼を追い払う。様々な物売りたちが「柔らかいベッドと心地よい服は皆のものじゃないの」と政治的なメッセージを含む話をする。近くにいたくず屋が「俺の大事な一人娘もあんな男に騙されて家を出て行った」と溜息をつくと、牛乳屋の女が私なんか忙しすぎて恋をする暇なんかなかったと言う。他の者が天国の話をし出すと、別の者が「天国と言えばやっぱりパリだ」と呟く。路地では警官が浮浪者を追い払っている。ジュリアンが友達のボヘミアンたちを伴って現れ、恋人のルイーズがお針子として働いている仕事場の前で立ち止まる。ここならルイーズの母親に邪魔されずに、彼女と話せると思ったからだ。ボヘミアンたちはルイーズを我々のミューズにしようなどと言う。哲学者が「私の人生の夢は中産階級になることさ」などと話している。ボヘミアンたちは「彼女とうまくいくことを祈るよ」と去っていく。ジュリアンはひとりルイーズがやって来るのを待った。程なくして母親に伴われたルイーズがやって来て、母親と別れたところをジュリアンが捉まえるが、ルイーズは両親の気持ちを無視できずにいることもありもう仕事が始まる時間だからと仕事場へ入ってしまうのだった。
第2場
お針子の仕事場
お針子たちがルイーズを「恋煩いの娘」と冷やかしていると、外から楽隊の音楽と共にジュリアンの歌声が聴こえてきた。ジュリアンはギターを弾きながら恋のセレナードを歌っている。お針子の娘たちは窓辺で喜んできれいな声だと言いつつ歌を聴いているが、肝心のルイーズは浮かない顔をしている。娘たちは「ルイーズは恋をしているんでしょ」としきりに冷やかす。そのうち歌に飽きてきた娘たちが、深刻そうにしているルイーズを非難し出したので、居たたまれなくなったルイーズは、体調が優れないと言って仕事を早退すると告げてジュリアンの許へと向かうのだった。お針子の女監督はルイーズの反抗的な態度に唖然とするばかりであった。
第3幕
モンマルトルの丘の上
前奏曲「遠い街で」で幕が上がる。丘の上の小さな庭から、ルイーズとジュリアンがパリの街を見下ろしている。ジュリアンとしびれるような同棲生活を始めたルイーズは、甘い愛の歌を歌う「その日から」(Depuis le jour ou je me suis donnee)。自由を手中にしルイーズは、今まで自分がいかに束縛されていたかと語ると、ジュリアンはそれを親のエゴイズムだと非難した。街に灯りがともり始める中、2人がパリを讃える歌を歌っていると、ボヘミアンたちや浮浪者、野次馬などが集まって来て、周囲が騒がしくなる。「愚者の法王」と称する男(実は第2幕の夢遊病の男)が現れて、ルイーズをモンマルトルの女神として崇め、戴冠式を行うと言い、場は大いに盛り上がる。ここはグランド・オペラ並みのスペクタクルとなっている。そこへルイーズの母親がやって来て、父親が病気で弱っており、ルイーズに会いたがっているので、少しの間でいいから帰って来てほしい、そうすれば父親の病気もきっと回復するだろうと懇願する。周りの者は皆立ち去り、ジュリアンは母親の娘は必ずジュリアンに返すと約束するとそれを信じて「帰ってあげなさい、自分は首を長くして待っているから」とルイーズを送り出すのだった。ルイーズは後ろ髪を引かれる思いで母と共に実家へ帰るのだった。
第4幕
ルイーズの実家のアパート
母親はジュリアンが住んでいたアパートが取り壊され、見晴らしが良くなったと言いつつ、父親の面倒を見ている。ルイーズの父親は「運命のくびきに押しつぶされ」と嘆き、気難しい性格になってしまった。ルイーズはジュリアンの許に返すという約束を母親に反故にされ、母親を責めるばかりである。母親は本気で返す気などなかったと開き直る。そのうち父親は娘が生まれてこの方ずっと娘の幸福ばかりを願ってきたのにジュリアンのような男と駆け落ちして出ていくとは何と言う裏切りだと嘆く。そして、小さな頃は素直で可愛い子だったとルイーズを小さな子供のように自分の膝の上に乗せる。ルイーズはもう子供じゃないし、私には自由に恋愛をする権利があるはずと訴える。その言葉に始めは穏やかだった父親も、次第に興奮して怒り始める。そして、ついに激しい口論となり、ルイーズは狂ったように両親を「勘違いの愛情だ」と責めると、声が聞こえると言い、狂ったように歌い出す。見境が無くなった父親がルイーズを家から叩き出すと、ルイーズは夜の闇へと消えていった。父親は興奮が冷めると我に返り、「ルイーズ!ルイーズ!」と娘の名を叫ぶが、娘の姿は見当たらない。父親はパリを恨みながら「パリめ!」うなるのだった。こうして、詩情に溢れた大都会パリへの壮大な賛歌が幕を閉じるのであった。
- ^ a b 『新グローヴ オペラ事典』P762
- ^ 『オペラは手ごわい』P38
- ^ 『新グローヴ オペラ事典』P763
- ^ 『オックスフォードオペラ大事典』P745
- ^ Louise {1} Matinee ed. Metropolitan Opera House: 01/15/1921
- ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
- ^ http://tc5810.fc2web.com/operat/100.htm
- ^ 当時はヴァンサン・オリオール
- ^ a b 『歌劇大事典』P311
- ^ https://www.memopera.fr/FicheSpect.cfm?SpeCode=LOUI&SpeNum=10257
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- ^ Théophile Briant (1989) (フランス語). Saint-Pol-Roux. Poètes d'aujourd'hui. Éditions Seghers. p. 230
- ^ Besnier, Patrick (2016-09-23). “L’univers sonore de Saint-Pol-Roux”. In Le Han, Marie-Josette (フランス語). Saint-Pol-Roux : Passeur entre deux mondes. Rennes: Presses universitaires de Rennes. pp. 109–120. ISBN 9782753547285
- ^ “Chronologie IV : 1900-1905” (フランス語). Société des amis de Saint-Pol-Roux. 2019年9月17日閲覧。
- ^ 『フランス・オペラの魅惑』P203
- ^ 『オペラ史(下) 』P625~626
- ^ 『ラルース世界音楽事典』P1922
- ^ 『新グローヴ オペラ事典』P765
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