ベラルーシ 経済

ベラルーシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/26 09:29 UTC 版)

経済

IMFの統計によると、2013年のベラルーシのGDPは717億ドルである。一人あたりのGDP(為替レート)は7,577ドルで、バルト三国を除く旧ソ連構成国の中では、ロシア (14,818)、カザフスタン (12,843) についで3番目であり、隣国ウクライナ (3,919) の2倍である。[1]

1991年の独立後、他のCIS諸国と同様に市場経済化を推進していた。しかし、1995年に大統領に就任したルカシェンコは、「社会主義市場経済」を導入し社会主義政策を開始した。これに基づき、統制価格の導入や、政府による民間企業への介入により自国の製造業の保護に努める傍ら、ロシア関税同盟を結ぶなどの経済統合政策により、経済成長を実現させた。しかし、1998年8月に発生したロシア財政危機に伴い、1998年から1999年の2年連続で悪化し、激しいインフレーションや生産の低下に見舞われた。2000年1月1日にはデノミネーションが実施された。以降はロシア経済の急速な回復に支えられ順調な経済成長を続けているが、2016年7月には再びデノミネーションを実施している。

対露経済統合はロシア側に政治、経済的に大きく左右される事、ベラルーシ側に大幅な貿易赤字をもたらすなど問題があり、近年はロシアに自国の産業が脅かされるとの警戒感から、経済統合政策は事実上停滞している。ただ、当分の間ベラルーシは西欧型の市場経済からは離れ続けると見られているが、2011年に入り、国内の経済状況が極度に悪化しており、ロシアがベラルーシの吸収合併へ向けた動きを加速させている。

2009年5月29日、ロシアのアレクセイ・クドリン財務相は、ベラルーシが近い将来支払不能(すなわち破産)に陥るとの見方を示した。これは、ベラルーシが市場改革を行わず、ソ連型社会主義体制のままであることによる。天然資源にも乏しく、国家財政の基盤となるものが脆弱なのにも関わらず、ルカシェンコ個人の趣味であるアイスホッケー場を多数建設させたり、食品や生活用品の価格に税金をかけず、逆に国の補助金で安く抑えるなどの放漫財政を行っている。ただ、こうした政策を行っているからこそ、ルカシェンコによる独裁体制が支持されているという側面もあった。ルカシェンコ大統領は体制維持のためロシアとEUを天秤にかけ、双方から経済支援を引き出すしたたかな外交を展開していた。しかし、この手法も2010年代に入ると、もはや通用しなくなった。

まず、2010年6月21日より、ロシアのガスプロム天然ガスの代金未払いを理由にベラルーシへのガス供給の削減を開始した。しかし今度はベラルーシがガスプロムに対して「欧州向け天然ガスにおけるパイプラインの通過料が未払いであり、翌日(24日)の朝までに支払われなければ、欧州向け天然ガスの供給を全面的に停止する」と警告をした。これにより、『欧州を含めた、新たな天然ガス供給に関する紛争』が生じ、ルカシェンコ大統領は「ロシアとの間でガス戦争が始まった」と発言したが、6月24日にベラルーシ側が未払い代金を支払い、ガス戦争は早々と終結した。しかし、ベラルーシとロシア間で強いわだかまりが残る結果となった。

そして、2010年12月にルカシェンコが四選を果たした直後から、2009年のロシアのクドリン財務相の予言通り、ベラルーシが経済危機に陥った。ロシア産石油天然ガスの価格引き上げと、先述したバラマキ放漫財政に耐えられず、外貨準備が底をついた状況になっている。ベラルーシ各地の両替所では外貨を求める人々の長蛇の列ができ、物価高騰を恐れる庶民は商品買い占めに走っている状況となった。ロシア側はベラルーシの国営企業売却などを求めており、これによりベラルーシのインフラを掌握し、また、通貨をロシアルーブルにすべきだという意見も出ており、ベラルーシをロシアに事実上吸収合併しようとする動きを強めている。過去に「ロシアに泣きついて頭など下げない」(ロシアの経済支援棚上げについて)などといった強気の発言を繰り返してきた、「ヨーロッパ最後の独裁者」と呼ばれているルカシェンコ大統領は崖っぷちの状況に陥っている。この状態を打破するには、ルカシェンコが採用していたソ連型社会主義経済から、完全な市場経済社会へ向けた痛みを伴う大掛かりな改革が必要であるとされる[19]

紆余曲折の末、ルカシェンコ大統領がロシア主導の「ユーラシア連合」への参加を表明し、その見返りにロシアは天然ガスを特別割引価格で提供、また、ガスパイプラインをロシアが買い取る協定が結ばれ、ベラルーシ経済がロシアに掌握された格好となった。

だが、国営企業で働く従業員の賃金未払いや工場の操業停止など、深刻な経済状況は依然として続き、更に、ロシアは国営企業の民営化の遅れなどを理由にベラルーシへの資金援助を2013年に打ち切った。崖っぷちに追い込まれたルカシェンコ大統領は今度は中華人民共和国へ急接近、中国との間で15億ドルの経済投資協定を締結、中国は欧州進出の足掛かりを得ることができ、ベラルーシは財政破綻を回避できた[20]。同時期には蘇州工業園区に倣った中国-ベラルーシ工業園区英語版も開設され、これによりベラルーシの軍事パレードでは中国の紅旗がパレードカーになって中国人民解放軍もベラルーシ軍とともに行進し[21][22]、中国製武器の購入[23][24]弾道ミサイルを共同開発[25][26]するなど経済的にも軍事的にも密接な関係が続いている。

色と面積で示したベラルーシの輸出品目(2009年)

ベラルーシの鉱業は、原油、天然ガス、ソリゴルスクで採掘される岩塩(カリ塩 KCl)に限定されている。原油だけは自国内の消費量の数割を賄うことが可能である。農業では、麦類の生産に向く気象条件から世界第4位(150万トン、2002年)のライ麦を筆頭に、大麦燕麦の生産が盛ん。春小麦の栽培も見られる。工芸作物としては世界第5位(3万2000トン)である亜麻の生産が際立つ。工業は繊維業、化学工業(肥料)が盛ん。羊皮の生産量は世界第4位(8万トン)であり、カリ塩の採掘に支えられたカリ肥料の生産は世界第3位(369万トン)となっている。硝酸の生産量は世界第8位(88万トン)。

貿易

2002年時点では輸入90億ドルに対し、輸出は81億ドルであり、わずかに入超である。主な輸入品は原油、機械類、鉄鉱。輸入相手国は、ロシア、ドイツ、ウクライナである。ロシアとの取引が65%を占める。主な輸出品は、石油製品、自動車、機械類であり、輸出相手国はロシア、ラトビア、イギリスである。輸出ではロシアの占める割合は50%にとどまる。日本との貿易では、乳製品を輸出(全体の44%)し、無線通信機器を輸入(全体の35%)している。




  1. ^ a b c d e World Economic Outlook Database, October 2014” (英語). IMF (2014年10月). 2014年10月18日閲覧。
  2. ^ a b c 服部倫卓、越野剛編著 『ベラルーシを知るための50章』 明石書店〈エリア・スタディーズ〉、2017年、58-59頁。ISBN 978-4-7503-4549-9
  3. ^ 伊東孝之、井内敏夫、中井和夫 編『世界各国史20 ポーランド・ウクライナ・バルト史』(山川出版社、1998年)p110
  4. ^ a b c d 服部倫卓、越野剛編著 『ベラルーシを知るための50章』 明石書店〈エリア・スタディーズ〉、2017年、122-127頁。ISBN 978-4-7503-4549-9
  5. ^ a b Population classified by knowledge of the Belarusian and Russian languages by region and Minsk City”. Belstat.gov.by. 2017年8月3日閲覧。
  6. ^ Gordon, Raymond G., Jr. (ed.), 2005. Ethnologue: Languages of the World, Fifteenth edition. Dallas, TX: SIL International. Online version: Ethnologue.com.
  7. ^ *J. P. Mallory, "Zarubintsy Culture", Encyclopedia of Indo-European Culture, Fitzroy Dearborn, 1997.
  8. ^ Kazakov V.S., Demidchik E.P., Astakhova L.N. et.al., Thyroid Cancer after Chernobyl, Nature 359, 21-22, 1992
  9. ^ 「統合迫るロシア ベラルーシ反発/プーチン氏 資源輸出で揺さぶり/両首脳、作業部会設置は合意」東京新聞』朝刊2019年1月13日(国際面)2019年1月28日閲覧。
  10. ^ 2011年2月3日の『朝日新聞』朝刊9面
  11. ^ “Belarus Police Stifle Protests On Independence Day”. Radio Free Europe Radio Liberty. (2011年7月3日). http://www.rferl.org/content/belarus_marks_independence_amid_crackdown_on_dissent/24254152.html 2011年7月9日閲覧。 
  12. ^ “ロシアなど3ヵ国がユーラシア経済連合条約に署名−2015年1月1日に発効、域内の経済統合が加速− (ロシア、ベラルーシ、カザフスタン)”. JETRO. (2014年6月2日). http://www.jetro.go.jp/biznews/538be118a7f80?ref=rss 2014年8月1日閲覧。 
  13. ^ 半年無職だと「罰金3万円」を科せられる「ニート罰金法」 もし日本で制定されたら?
  14. ^ ベラルーシで「社会的寄生虫税」撤回求め抗議、大統領辞任要求も
  15. ^ 「社会寄生虫駆除法」成立 働かない者は罰金、拘束も
  16. ^ ベラルーシ大統領に「おもちゃ」で抗議、男性に有罪判決
  17. ^ ベラルーシの「拍手デモ」を警官隊が鎮圧、「蜂起を夢想するな」と大統領
  18. ^ http://www.huffingtonpost.jp/2013/09/13/ig-nobel-prize_n_3919177.html
  19. ^ “「欧州最後の独裁者」ルカシェンコ大統領窮地 ベラルーシ経済危機 露、統合路線を加速”. 産経新聞. (2011年5月31日). http://sankei.jp.msn.com/world/news/110531/erp11053100570002-n1.htm 2011年5月31日閲覧。 
  20. ^ “中国に急接近の独裁国家ベラルーシ 「スラブの兄弟」露はいらだち”. 産経新聞. (2013年7月3日). http://sankei.jp.msn.com/world/news/130730/erp13073023220007-n1.htm 2013年8月3日閲覧。 
  21. ^ Independence Day parade in Minsk” (2018年7月3日). 2018年7月4日閲覧。
  22. ^ 中国のパレードカー、ベラルーシの閲兵式に登場” (2015年7月5日). 2016年8月21日閲覧。
  23. ^ ベラルーシ、中国製ロケット砲を公開” (2016年7月1日). 2018年5月7日閲覧。
  24. ^ The Belarusian Army Is Using A Lot Of Chinese Hardware” (2017年7月9日). 2018年5月7日閲覧。
  25. ^ Belarus Tests Secretive Rocket Launcher System in China” (2015年6月16日). 2017年6月22日閲覧。
  26. ^ Belarusian defence industries: doubling exports and launching ballistic missile production” (2018年4月30日). 2018年5月7日閲覧。
  27. ^ Belarusian traditional clothing”. Belarusguide.com. 2013年4月29日閲覧。
  28. ^ Belarus – Ornament, Flags of the World”. Fotw.fivestarflags.com. 2013年4月29日閲覧。
  29. ^ Canadian Citizenship and Immigration – Cultures Profile Project – Eating the Belarusian Way Archived 20 March 2007 at the Wayback Machine. (1998); retrieved 21 March 2007.





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