ブッラ 使用法

ブッラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/26 22:36 UTC 版)

使用法

ブッラの中に入っていたトークン。さまざまな形があり、物資の種類を表していたとされる[11]

ウルク文化の後期から物資の管理が多種類かつ大量となり、必要にともなってブッラやトークンの管理システムが発達した。貯蔵された物資は神殿を中心に記録され、住民に分け与える再配分の制度や、他の地域との交易に使われた[15]

トークンとブッラは、物資を送る時に渡したと推測されている。送り手は物資の内容を示したトークンをブッラの中に入れ、受取手は物資の確認が必要なときにブッラを割って物資の数量を確認した。または物資を管理する者が、倉庫の中にある物を記録するためにブッラとトークンを使った。現在における商品送り状や、管理の申し送り状のような機能を果たした[10]。トークンやブッラの使用者は、神殿で働く官僚や書記であり、古代の簿記システムでもあった[16]シュメルでは、文字を読めない者のためにトークンとブッラが粘土板と併用された[17][18]

トークンには、地域を越えて使われたものと、地域内で使われたものがある。南メソポタミアでは種類が多様化し、交易をする地域では同様のトークンが使われた。それに対して地域内の物資管理用のトークンが中心となった地域では、独自のものを使い続けた[12]

文字との関係

ウルク文化圏にはさまざまな言語があったが、ブッラやトークン、粘土板などは文化圏内で広く使われていた。このため、経済的には類似した制度や度量衡が普及していたと推測される[19]。たとえば南メソポタミアではプロト・シュメル語、スーサではプロト・エラム語が使われていた時代に、同じウルク様式の物資管理が行われており、植民の可能性もある[20]

トークンやブッラが、文字の起源になったという研究もある。シュマント=ベッセラは、プレーン・トークンを押した跡が数詞の起源となり、複雑な形をもつコンプレックス・トークンは記号として絵文字の起源になったと論じている。また、中空のブッラとトークンによる記録が簡略化されて、トークンを押した粘土板へと変化したと推測した[21]

出典・脚注


注釈

  1. ^ ウルク文化における都市化は、シュメルの外からの移住によっても進んだ。また、遊牧民と定住民は相互依存の関係にあり、遊牧民の来訪が増えて交易品の貯蔵や生産が増量したことも一因とされる[7]
  2. ^ シュメル神話の英雄ギルガメシュレバノンスギを獲得する物語も、こうした事情にもとづいている[8]
  3. ^ トークンの研究が進むまでは、無用な遺物として捨てられていた[10]

出典

  1. ^ a b 大津, 常木, 西秋 1997, pp. 122–123.
  2. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, pp. 122–123, 126.
  3. ^ a b 大津, 常木, 西秋 1997, p. 126.
  4. ^ a b 木原 2006, p. 62.
  5. ^ 小泉 2016, pp. 165–166.
  6. ^ 木原 2006, pp. 61–62.
  7. ^ 小泉 2016, p. 164.
  8. ^ 岡田, 小林 2008.
  9. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, pp. 126, 130–132.
  10. ^ a b 大津, 常木, 西秋 1997, p. 123.
  11. ^ a b 木原 2006, pp. 62–63.
  12. ^ a b 木原 2006, p. 75.
  13. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, pp. 125–126.
  14. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, pp. 123–125.
  15. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, p. 126, 130.
  16. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, p. 130.
  17. ^ 小泉 2016, p. 165.
  18. ^ 木原 2006, pp. 61–62, 78–79.
  19. ^ 大津, 常木, 西秋 1997, p. 313-132.
  20. ^ 木原 2006, p. 76.
  21. ^ 小泉 2016, pp. 166–168.


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