ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜 制作背景

ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 04:30 UTC 版)

制作背景

動機

作者の泰は警察官時代に多岐にわたる警察業務を日々こなす、多忙な警察官の過労死を目の当たりにしていた。ある時高校に就職説明に出向いた際に唯一警察に興味を持っていた男子が親の反対で進路変更したことを知る。これを受け、一般的に大変な仕事と思われている警察業務に従事する人は「いい意味でしょうもない」人たちであり、頑張りながらも楽しく仕事をしていることを伝えたいと考え、またそれによって警察官希望者が増えることで個々の負担が減り、警察の過労死を減らす一助になることを期待して警察を題材とした漫画を描くに至った[35]

構成

当初、泰は主人公である川合の新任から4〜5年後の状況を描くつもりでいたが、連載が始まることが決まったとき、制作を手伝っている泰の姉からは藤とペアを組んでいるときの新任時代を描いた方が分かりやすいと指摘された[36]。そのため本作は当初から泰が構想する4〜5年後の状況に向かって話を展開している[37]。ただし実際に川合を藤の年齢に近づけてしまうと、藤と川合がペアでいられなくなってしまうため、本作は季節が変わっても登場人物は年を取らない形式を採用している[37]

第1巻から3巻までは1話完結のシンプルで笑える話が大半であった[36]が、メディアミックスなど商業的な面も考慮するようになった4巻以降は伏線や長編を入れ始め、トラウマなどの笑えないテーマも掲載するようになった[37][38]

また泰は『アンパンマン』を例に挙げたうえで、精神的に安定した状態で町の平和を守るだけの作品にならないように、例えば恋愛要素など読者が望んでいない、嫌われる要素を含んだ人間の悩みや弱さも作中に意識して取り入れている[39]

最終的には川合が藤を支える立場になることを目指している[40]。そのため当初は最終回に用いることを予定していた「伊賀崎警部補の胸襟」のエピソード[39][41]では、読者からクレームがくる[42]ほどに川合の活躍を描き、指導員と新任の立場からペア長とペアっ子への立場に変化させた[43]

キャラクター設定

登場人物のキャラクター設定に関して、泰は最初に身上調書[注 4]水準の内容を考えてから登場させるようにしている[44]。この結果、最終的に癌の再発で亡くなる生活安全課の西川には63話で「胃痛持ち」と台詞を用意し、69話では若い時の西川には髪の毛があるが、癌発症後の西川はスキンヘッドであることを対比させるなど、担当編集者が気が付かないほど巧妙な伏線となった[45][44]

また「本題を伝えるためには話中のうち9割が笑い話であることが必要」という自身の経験から、長所以上に欠点や残念な部分を考えるのに工夫を凝らしている[46]。その結果、捜査二課の如月には川合からは「王子様的な方」、源からは「優しいし紳士」と評される一方で「AV8段」という段位が設定された[46]

伊賀崎に関しては、天才肌の人は現実に存在するとしつつも、10年に1人というのはフィクションであると語る[47]

課長の4人に関しては、キャラクター設定が被らないように考慮している[48]。具体的には秀山交通課長は頭脳派[31]、生活安全課長は署員の育成能力に優れ[30]、三鷹刑事課長は職人気質[25]、中富地域課長は努力家で穏やか[23]

鬼瓦と横井に関しては対照的に描いている[49]。具体的には鬼瓦は全て完璧に行う設定[50]で、作中ではスーパー戦隊シリーズのピンクと評している[51]。一方で横井は万能ではないが、自分のやりたいことを地道に実践する設定である[49]。このような設定になったのは現実の警察組織において、女性警察官が男と同等の働きを求められる一方で女の立ち振る舞いも求められる[51]が、そんな鬼瓦のような人物はいないことを描きたかったためである[49]

藤に関しては「男社会で優秀なばかりにちょっと嫌われている異質な存在」という設定を与えた[40]。この設定の元は『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラであり、泰自身がオハラに対して望む幸せな結末を幼少期から考え続けた結果である[52]

山田に関しては、泰は彼を描きたいがために本作を創作したと述べる[53]。山田のモデルは前述の過労死した警察官のペアであった刑事であり、泰は山田が誰からも嫌われないように意図して描いている[54]。また泰が読者に伝えたいと考えるメッセージを主人公が述べてしまうと、説教らしくなり、また目立つことで攻撃対象になりやすいという理由で重要な内容は山田に述べさせている[55]


  1. ^ 別章にした理由は作者コメントによると「『アンボックス』の題材は殺人事件で、楽しい事は何も出てこないので、目にしたくない方が飛ばしやすいように」読者に配慮したためである[11][12]
  2. ^ 現実世界でも2021年3月に茨城県警における女性初の警視正で警察学校長に就任した例がある[20]
  3. ^ 現実世界でもキャリアの田中俊恵が2013年8月20日に当時47歳で女性初の本部長に就任している[33]
  4. ^ 生まれてから現在までの履歴を記した調書
  5. ^ 第4話から第6話までは写真による出演
  6. ^ 当初は菅原の名がトップで発表されていたが、後に公式サイトから名前が削除された。
  7. ^ 当初は22:10 - 23:10の放送予定だったが[86]、後述により5分繰り下げ。
  8. ^ テレビドラマ版も放送実績あり。





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