ツバキ 下位分類

ツバキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/28 14:20 UTC 版)

下位分類

琉球列島から台湾のものをタイワンヤマツバキあるいはホウザンツバキ C. j. subsp. hozanensis としたこと、あるいは屋久島のものは果実が大きく果肉が厚いことからリンゴツバキ C. j. var. macrocarpa として分けたこともあるが、それぞれに中間型もあり、分けないことも多い。ユキツバキは種内変異として変種ないし亜種とされたこともあるが、別種との扱いもある。

園芸品種

ヤブツバキは園芸品種の母種でもあり[5]他家受粉で結実するため、また近縁のユキツバキなどと容易に交配するために花色・花形に変異が生じやすいことから、古くから選抜による品種改良が行われてきた[9]江戸時代には江戸将軍肥後加賀などの大名、京都の公家などが園芸を好んだことから、庶民の間でも大いに流行し、江戸・上方(京都)・加賀・中京・肥後などの地域ごとに育成された品種が作られた[9]。なお、「五色八重散椿」(ごしきやえちりつばき)のように、ヤブツバキ系でありながら花弁がバラバラに散る園芸品種もある。

17世紀に日本から西洋に伝来すると、冬にでも常緑で、日陰でも花を咲かせる性質が好まれ、大変な人気となり、西洋の美意識に基づいた豪華な花をつける品種が作られた。ヨーロッパイギリスアメリカで愛好され、現在でも多くの品種が作出されている[11]

花色は赤色と白色があり、それぞれ紅椿、白椿と呼ばれるほか[14]、作出されたツバキには一重咲きから八重咲き、斑入りの品種もあり、その数は極めて多数ある[15]ワビスケ(侘助、学名:Camellia wabisuke)というツバキは、茶花としてよく知られているが、これはトウツバキ(唐椿、別名:カラツバキ、学名:Camellia reticulata)と同様に中国原産種の栽培品種である[15]

花容による品種

花色

白斑の例
  • 白斑 - 星斑、雲状斑、横杢斑
  • 覆輪 - 白覆輪、紅覆輪、底白
  • 絞り - 吹きかけ絞り、小絞り、縦絞り、紅白絞り

花形

千重咲きの例
千重咲きの例。乙女椿(オトメツバキ)
獅子咲きのツバキ
蝦夷錦 'Ezo-nishiki'
  • 一重咲き - 猪口咲き、筒咲き、抱え咲き、百合咲き、ラッパ咲き、桔梗咲き、椀咲き、平開咲き
  • 八重咲き - 唐子咲き、八重咲き、千重咲き、蓮華咲き、列弁咲き、宝珠咲き、牡丹咲き、獅子咲き

花の大きさ

  • 極大輪 - 13 cm以上
  • 大輪 - 10 - 12 cm
  • 中輪 - 7 - 9 cm
  • 小輪 - 4 - 6 cm
  • 極小輪 - 4 cm以下

地域による品種

江戸のツバキ
徳川幕府が開かれると、江戸に多くの神社寺院武家屋敷が建設された。それにともない、多くの庭園が営まれ、ツバキも植栽されていった。ことに徳川秀忠が吹上御殿に花畑を作り、多くのツバキを含む名花を献上させた。これが江戸ツバキの発祥といわれる。『武家深秘録』の慶長18年には「将軍秀忠花癖あり名花を諸国に徴し、これを後吹上花壇に栽(う)えて愛玩す。此頃より山茶(ツバキ)流行し数多の珍種をだす」とある。権力者の庇護をうけて、ツバキは武士、町人に愛されるようになった。江戸ツバキは花形、花色が豊富で、洗練された美しさをもつ、一重では清楚な「蝶千鳥」「関東月見草」「蜀紅」、唐子咲きでは「卜伴」。八重では蓮華咲きの「羽衣」「春の台」「岩根絞」など。
上方のツバキ
古来、がおかれた上方でもツバキは古くから愛玩されてきた。ことに江戸期には徳川秀忠の娘東福門院和子中宮として迎えた後水尾天皇誓願寺安楽庵策伝などの文化人がツバキを蒐集した。寛永7年(1630年)には安楽庵策伝によって「百椿集」を著した。さらに寛永11には烏丸光広によって『椿花図譜』が著され、そこには619種のツバキが紹介されている。現在でも京都周辺の神社仏閣には銘椿が多い。品種としては「五色八重散椿」「曙」「菱唐糸」など。上方のツバキは変異の多いユキツバキが北陸から導入されたことと、京都、大坂の人々の独自の審美眼によって選抜されたことに特色がある。
尾張のツバキ
江戸時代より名古屋を中心に育成されてきた品種群は、一重、筒咲き(または抱え咲き、椀咲き)、小中輪の茶花向きのものが多いのが特徴である。「関戸太郎」「窓の雪」「紅妙蓮寺」「大城冠」などがあるほか、名古屋好みの豊満な花容のものもある。近隣の三河伊勢美濃のものとあわせて「中部ツバキ」とも呼ばれている。
加賀のツバキ
北陸各地に誕生したユキツバキ系の品種の京都の中継地として、この地は園芸の隆盛の大きな役割を果たした。茶の湯のさかんな土地柄ゆえに茶花向けの品種が多く、旧家の庭に多くの銘木がある。代表的な品種には「東方朔」「ことじ」「祐閑寺名月」などがある。
富山越後のツバキ
ユキツバキの自生地であることから、変化に富んだ選抜品種や、ヤブツバキとの交配によるユキツバキ系の品種が古くから栽培されてきた。氷見市老谷の「さしまたの椿」のような巨木も多い。代表的な品種に「大日の暁」「雪白唐子」「栃姫」「千羽鶴」など。
山陰のツバキ
「つばきのふるさと」と言われるほどの自生地の多い地域である。古くから品種改良が盛んで、ことに江戸期松江藩がおかれてから盛んになり松平不昧は各地からツバキを集めた。から松江にかけて清楚な一重咲きが作られ愛好されている。代表的な品種は「花仙山」「意宇(おう)の里」「角(すみ)の光」など。
久留米のツバキ
肥後のツバキ
肥後椿(ひごつばき)は、肥後・熊本藩の大名だった細川家にて、育種・保存されていた系統で、かつては門外不出であったが、現在では苗木が販売され、愛好者が多い。鉢植え・盆栽として栽培され、花は大輪一重で、梅蕊(ばいしん)咲きという花形で、花の中心から多数のおしべが放射状に広がり、赤・白・ピンクやその絞り咲きの花の色と、黄色のおしべとのコントラストが非常に美しい。肥後六花の一つ。

利用

Camellia japonica

庭木に良く植えられ、種子からとれる椿油は上質で、整髪用や養毛剤に用いる。材はかたく緻密で、ツゲ材と同様に木具材や細工物に使われる。材の灰は、紫根染の媒染剤になる。

植栽
庭木として良く植えられ[5]、住宅等の植栽では防音の機能を有する樹種(防音樹)として知られる[16]。植栽適期は、3 - 4月上旬、6月下旬 - 7月上旬、9月とされる[12][9]。日当たりが良く乾燥した場所は好まない性質で、やや湿った半日陰に植栽する[17]。土壌の質は砂壌土にで、そこに根を深く張る[9]。施肥は1月 - 3月上旬と5月下旬 - 7月に、剪定は2月下旬 - 3月と5月、8月に行う[9]
材木
ツバキは生長すると樹高20 mほどになるが、日本のツバキの大木はほとんど伐採され、最後の供給地として屋久島からも切り出されたが、現在では入手の難しい材である。大木は入手しにくいので、建築用にはあまり使われない。木質は固く緻密、かつ均質で、木目は余り目立たない、摩耗に強くて摩り減らない等の特徴から、工芸品、細工物などに使われる。代表的な用途は印材将棋の駒楽器そろばんの玉などである[3]。近年は合成材料の判子が多くなったが、椿材は、ツゲ材に次ぐものとして、安価な印鑑などに利用されていた。平成20年度税制改正により、法人税等の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」が改正され、別表第四「生物の耐用年数表」によれば、平成20年4月1日以後開始する事業年度にかかるつばき樹の法定耐用年数は25年となった。
木灰
日本酒醸造には木灰が必要で、ツバキの木灰が最高とされている。また、アルミニウムを多く含むことから、古くは紫根染の媒染剤として、染色用にも用いられた[3]。しかし、ツバキが少ないため、灰の入手は難しい。
木炭
ツバキの木炭は品質が高く、昔は大名の手焙りに使われた。
椿油
椿油は、種子(実)熱を加えずに押しつぶして搾った[4]、「東の大島、西の五島」の名産品としてもよく知られている[15][18]。高級食用油、機械油、整髪料、養毛剤として使われるほか[4][5]、古くは灯りなどの燃料油としてもよく使われた。ヤブツバキの種子[19]から取る油は高価なため、同じくツバキ属の油茶などから搾った油もカメリア油の名で輸入されている。また、搾油で出る油粕は川上から流して、川魚タニシ川えび等を麻痺させて捕獲する毒もみ漁に使われた。

薬用

花を山茶花(さんちゃか)、葉を山茶葉(さんちゃよう)、果実を山茶子(さんちゃし)と称して薬用にする[7]。花は天日乾燥して生薬にし、葉は随時採って生を用い、果実は圧搾して油を採る[7]。葉のエキス止血薬になる。

葉にはタンニンクロロフィル(葉緑素)などが、花にはアントアチニン、ユゲノール、ブドウ糖果糖蔗糖マルトースなどを含む[4]。また種子には、オレイン酸パルミチン酸ステアリン酸配糖体のカメリン、カメリアサポニンなどを含む[4]。タンニンは収斂作用、クロロフィルには肉芽の発生作用があることから傷薬に用いられ、花は滋養保健、種子から採れる椿油は精製して育毛剤軟膏基剤の原料に使われる[4]

民間療法では、切り傷、腫れ物に花や生葉を揉んだり、かみつぶしてつけたり、蒸し焼きした生葉に椿油をつけて冷ました後に患部につける[4][7]。花を干したものを細かく刻み、小さじ1杯ほどをカップに入れて熱湯を注いで、蜂蜜などで調味したものを飲むと、滋養保健や便通に役立つとされる[4]。椿油は昔から養毛料として使われていたもので、洗髪に使うとサポニンが汚れを落として、頭部にできた湿疹、かぶれに良く、養毛に役立つ[4]

食用

花を採って、根元側から甘い蜜を吸うことができる[10]。また、ごみなどを除いてから天ぷらにすると、花蜜由来の甘味があり、食べられる[10]

花以外の観賞

ツバキは葉や枝も観賞の対象になる。

斑入りの園芸品種「越の吹雪」。覆輪または散り斑が入る
ウイルス斑の例

江戸時代には好事家たちが、葉の突然変異を見つけ出し、選抜育成して観賞した。

  • 錦魚葉(金魚葉と書かれることもある)
  • 梵天葉
  • 百合葉・孔雀葉
  • 鋸葉・柊葉・やすり葉・銀葉などの鋸歯の鋭い細葉
  • 斑入り(ウイルスの感染により葉に斑のような模様が入ることもあるが、ツバキ園芸においてはこれは園芸品種として区別されていない)
  • 弁天葉
  • 盃葉
  • 桜葉・枇杷葉

  • 雲龍(三河雲龍、三原雲龍、紀州雲龍など)
  • 枝垂れ(孔雀椿など)

注釈

  1. ^ 日本において広く見られる野生の「ツバキ」はヤブツバキであり、植物学上はこの名で呼ばれる。ただし、標準和名としてツバキの名を採用した例もある(北村・村田(1979))。

出典

  1. ^ Wheeler, L., Su, M. & Rivers, M.C. (2015). Camellia japonica. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T62054114A62054131. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T62054114A62054131.en. Downloaded on 22 October 2018.
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Camellia japonica L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2014年1月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j 田中潔 2011, p. 35.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 田中孝治 1995, p. 161.
  5. ^ a b c d e f g h 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 18.
  6. ^ 沖森卓也ほか『図解 日本の文字』三省堂、2011年、52頁
  7. ^ a b c d 貝津好孝 1995, p. 199.
  8. ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 251.
  9. ^ a b c d e f g h 正木覚 2012, p. 77.
  10. ^ a b c d e f g h i 川原勝征 2015, p. 57.
  11. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 254.
  12. ^ a b c d e 山﨑誠子 2019, p. 86.
  13. ^ 田中潔 2011, p. 34.
  14. ^ a b 辻井達一 1995, p. 252.
  15. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 253.
  16. ^ 藤山宏 『プロが教える住宅の植栽』学芸出版社、2010年、9頁。 
  17. ^ 山﨑誠子 2019, p. 87.
  18. ^ つばきのしまだより五島市
  19. ^ Flavon (2003年1月13日). “Camellia japonica (Seeds) フラボンの秘密の花園:ヤブツバキの種子”. フラボンの山野草と高山植物の世界. 2014年1月22日閲覧。
  20. ^ 萬葉集1巻54, 巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を, 坂門人足
  21. ^ 萬葉集1巻56, 川上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は, 春日蔵首老
  22. ^ 萬葉集1巻73, 我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ, 長皇子
  23. ^ 萬葉集7巻1262, あしひきの山椿咲く八つ峰越え鹿待つ君が斎ひ妻か
  24. ^ 萬葉集13巻3222, みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし 山ぞ 泣く子守る山
  25. ^ 萬葉集19巻4152, 奥山の八つ峰の椿つばらかに今日は暮らさね大夫の伴, 大伴家持
  26. ^ 萬葉集19巻4177, 我が背子と 手携はりて 明けくれば 出で立ち向ひ 夕されば 振り放け見つつ 思ひ延べ 見なぎし山に 八つ峰には 霞たなびき 谷辺には 椿花咲き うら悲し 春し過ぐれば 霍公鳥 いやしき鳴きぬ 独りのみ 聞けば寂しも 君と我れと 隔てて恋ふる 砺波山 飛び越え行きて 明け立たば 松のさ枝に 夕さらば 月に向ひて あやめぐさ 玉貫くまでに 鳴き響め 安寐寝しめず 君を悩ませ 大伴家持
  27. ^ 萬葉集20巻4418, 我が門の片山椿まこと汝れ我が手触れなな土に落ちもかも, 物部廣足
  28. ^ 萬葉集20巻4481, あしひきの八つ峰の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君, 大伴家持
  29. ^ 辻井達一 1995, pp. 251–252.
  30. ^ 桐野秋豊写真・著 『椿 : 色分け花図鑑 : 名前の由来と系統がわかる : 庭を美しく彩る品種選びに役立つ本』学習研究社、2005年。ISBN 4-05-402529-3 





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