ツバキ 文化

ツバキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/28 14:20 UTC 版)

文化

水路の落椿

ツバキの花は古来から日本人に愛され、『万葉集』のころからよく知られ、京都市龍安寺には室町時代のツバキが残っている。

茶道でも大変珍重されており、冬場の炉の季節は茶席が椿一色となることから「茶花の女王」の異名を持つ。美術音楽の作品にもしばしば取り上げられている。

ツバキの花は花弁が基部でつながっており、多くは花弁が個々に散るのではなく、を残して丸ごと落ちる。それが、人のが落ちる様子を連想させるために忌み、日本においては屋敷内に植えない地方があったり、病人のお見舞いに持っていくことはタブーとされている[3]。この様は古来より落椿(おちつばき)とも表現され、俳句においては季語である[3]

「花椿」は季語であるが、「寒椿」「冬椿」は季語

ツバキの花言葉は、「理想の愛」「謙遜」である[3]

歴史

ツバキは『日本書紀』において、その記録が残されている。景行天皇が九州で起こった熊襲の乱を鎮めたおり、土蜘蛛に対して「海石榴(ツバキ)の椎」を用いた。これはツバキの材質の強さにちなんだ逸話とされており、正倉院に納められている災いを払う卯杖もその材質に海石榴が用いられているとされている。733年の『出雲風土記』には海榴、海石榴、椿という文字が見受けられる。しかし、これらが現在のツバキと同一のものであるかについては議論の余地がある。

『万葉集』において、ツバキが使用された歌は9首ある[20][21][22][23][24][25][26][27][28]サクラウメといった材料的な題材と比較すると数は多くない。『源氏物語』においても、「つばいもち」として名が残されている程度であり、室町時代までさほど芸術の題材として注目された存在ではなかった。しかし、風雅を好む足利義政の代になると、から椿堆朱盆、椿尾長鳥堆朱盆といった工芸品を数多く取りよせ、彫漆螺鈿の題材としてツバキが散見されるようになった。また、豊臣秀吉茶の湯にツバキを好んで用い、茶道においてツバキは重要な地位を占めるようになる。江戸時代に入るとさまざまな花が観賞の対象になったが、椿も例外ではなかった。二代将軍徳川秀忠がツバキを好み、そのため芸術の題材としてのツバキが広く知られるようになった。この時期、伝狩野山楽筆『百椿図』(根津美術館所蔵)が描かれた。これは数ある品種の椿をそれぞれフラワーアレンジメントのように描き、それらに烏丸光広林羅山、水戸光圀ら公家、儒学者、大名といった文化人たちが漢詩、和歌の賛を書き添えた絵巻物である。以後、絵画、彫刻、工芸品のモチーフとしてツバキが定着する。ツバキの栽培も一般化し、園芸品種は約200種にも及んだ。

西洋ヨーロッパでは17世紀末に園芸植物として大流行し、19世紀の小説椿姫』(アレクサンドル・デュマ・フィスの小説、またそれを原作とするジュゼッペ・ヴェルディオペラ)にも主人公のヒロインが好きな花として登場する[29][3]。西洋で園芸家に注目されたのは、ヤブツバキが花とともに、葉が常緑で地中海地方の樹木にはないツヤが見栄えすることが認められたのではないかとする説が言われている[14]

伝承

年を経たツバキは化けるという言い伝えが日本各地に残る。新潟の伝説では、荒れ寺に現れる化け物の正体が椿の木槌であったり、島根の伝説では、牛鬼の正体が椿の古根だったという話がある。

忌避

花がポトリと落ちる様子から、の世界においても落馬を連想させるとして、競馬競走馬馬術競技馬の名前としては避けられる。特に競馬では、過去にはタマツバキの様な名馬もいるが、1969年の第36回東京優駿日本ダービー)で大本命視されたタカツバキが、スタート直後に落馬で競走中止するというアクシデントを起こして以降、ほとんど付けられることがなくなった。

武士は、打ち首により首が落ちる様子に似ていることを連想させることを理由にツバキを飾るのを好まなかった[10]、という話もあるが、それは幕末から明治時代以降の流言であり、江戸時代に忌み花とされた記述は見付からない[30]1600年代初頭には多数の園芸品種が流行。1681年には,世界で初めて椿園芸品種を解説した書物が当時の江戸で出版される。

作品

切手

  • 1961年(昭和36年)3月20日発売 10円 花切手シリーズ
  • 1969年(昭和44年)10月26日発売 15円 第24回国民体育大会 ラグビー大浦天主堂ツバキ
  • 1972年(昭和47年)5月20日発売 20円 国土緑化運動
  • 1980年(昭和55年)10月1日発売 30円 普通切手
  • 1994年(平成6年)1月28日発売 80円 四季の花シリーズ第4集 寒椿図(酒井抱一
  • 1997年(平成9年)4月10日発売 コイル切手、額面印字
    • 50円、80円、90円、120円、130円用 スズメイネツバキ
    • 270円用 スズメ・モミジツバキ
  • 2001年(平成13年)6月1日発売 50円 ふるさと切手 東京の四季の花・木
  • 2012年(平成24年)12月3日発売 50円と80円 ふるさと切手 季節の花シリーズ第4集

模造

プラスチックなどで椿の花を象ったブローチ(一般にカメリアと呼ばれる)が作られ、女性の礼装で装飾として用いられる。

自治体の木・花

※ユキツバキおよびその園芸種のオトメツバキはユキツバキ参照。 州の花

県の木

市区町村の木・花

各地のツバキの名所


注釈

  1. ^ 日本において広く見られる野生の「ツバキ」はヤブツバキであり、植物学上はこの名で呼ばれる。ただし、標準和名としてツバキの名を採用した例もある(北村・村田(1979))。

出典

  1. ^ Wheeler, L., Su, M. & Rivers, M.C. (2015). Camellia japonica. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T62054114A62054131. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T62054114A62054131.en. Downloaded on 22 October 2018.
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Camellia japonica L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2014年1月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j 田中潔 2011, p. 35.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 田中孝治 1995, p. 161.
  5. ^ a b c d e f g h 西田尚道監修 学習研究社編 2000, p. 18.
  6. ^ 沖森卓也ほか『図解 日本の文字』三省堂、2011年、52頁
  7. ^ a b c d 貝津好孝 1995, p. 199.
  8. ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 251.
  9. ^ a b c d e f g h 正木覚 2012, p. 77.
  10. ^ a b c d e f g h i 川原勝征 2015, p. 57.
  11. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 254.
  12. ^ a b c d e 山﨑誠子 2019, p. 86.
  13. ^ 田中潔 2011, p. 34.
  14. ^ a b 辻井達一 1995, p. 252.
  15. ^ a b c 辻井達一 1995, p. 253.
  16. ^ 藤山宏 『プロが教える住宅の植栽』学芸出版社、2010年、9頁。 
  17. ^ 山﨑誠子 2019, p. 87.
  18. ^ つばきのしまだより五島市
  19. ^ Flavon (2003年1月13日). “Camellia japonica (Seeds) フラボンの秘密の花園:ヤブツバキの種子”. フラボンの山野草と高山植物の世界. 2014年1月22日閲覧。
  20. ^ 萬葉集1巻54, 巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を, 坂門人足
  21. ^ 萬葉集1巻56, 川上のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は, 春日蔵首老
  22. ^ 萬葉集1巻73, 我妹子を早見浜風大和なる我を松椿吹かざるなゆめ, 長皇子
  23. ^ 萬葉集7巻1262, あしひきの山椿咲く八つ峰越え鹿待つ君が斎ひ妻か
  24. ^ 萬葉集13巻3222, みもろは 人の守る山 本辺は 馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く うらぐはし 山ぞ 泣く子守る山
  25. ^ 萬葉集19巻4152, 奥山の八つ峰の椿つばらかに今日は暮らさね大夫の伴, 大伴家持
  26. ^ 萬葉集19巻4177, 我が背子と 手携はりて 明けくれば 出で立ち向ひ 夕されば 振り放け見つつ 思ひ延べ 見なぎし山に 八つ峰には 霞たなびき 谷辺には 椿花咲き うら悲し 春し過ぐれば 霍公鳥 いやしき鳴きぬ 独りのみ 聞けば寂しも 君と我れと 隔てて恋ふる 砺波山 飛び越え行きて 明け立たば 松のさ枝に 夕さらば 月に向ひて あやめぐさ 玉貫くまでに 鳴き響め 安寐寝しめず 君を悩ませ 大伴家持
  27. ^ 萬葉集20巻4418, 我が門の片山椿まこと汝れ我が手触れなな土に落ちもかも, 物部廣足
  28. ^ 萬葉集20巻4481, あしひきの八つ峰の椿つらつらに見とも飽かめや植ゑてける君, 大伴家持
  29. ^ 辻井達一 1995, pp. 251–252.
  30. ^ 桐野秋豊写真・著 『椿 : 色分け花図鑑 : 名前の由来と系統がわかる : 庭を美しく彩る品種選びに役立つ本』学習研究社、2005年。ISBN 4-05-402529-3 





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