タリエシン
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神話上の生涯
16世紀中頃、エリス・グリフィズはタリエシンの神話上の生涯について描いた。ここにはアイルランドの英雄フィン・マックールと知恵の鮭のエピソードにいくつかの類似点が見られ、また創作神話の特徴を多く持っている。John Jones of Gellilyfdyによって1607年ごろ書かれたと思われる、これとわずかに異なるバージョンも存在する。以下の物語はこれら両方をあわせたバージョンのものである。
誕生
タリエシンはかつて、魔女ケリドウェンの召使いグウィオン・バハ(Gwion Bach Gwyonとも)として生まれついた。ケリドウェンには美しい娘と、他にモルブラン(アヴァズとも呼ばれた)という醜い子供がいた。いかなる魔法もモルブランの顔を整えることはできなかった。そこでケリドウェンは、彼には美しさの代わりに知識を持たせようと考え、知識とひらめきを与える霊薬(Awen)を、一年と一日をかけて作ることにした。その間、大鍋の下でモルダという盲目の男に火を焚かせ、グウィオンには大鍋をかき混ぜさせていた。
ある時グウィオンが鍋をかきまぜていると、大鍋の液体のうち三滴のしずくが彼の指にはねて、グウィオンは思わず親指をなめてしまう。この最初の三滴だけが霊薬となり、グウィオンはその瞬間にあらゆる知識を得た。大鍋の中の残りは毒となってしまった。すぐにグウィオンは、このままではケリドウェンに殺されると悟り、逃げ出した。
グウィオンはまもなくケリドウェンの怒号と、追いかけてくる足音を聞いた。グウィオンが鹿に変身して逃げると、ケリドウェンは猟犬になった。グウィオンが魚になって川に逃げると、ケリドウェンはカワウソになって追いかけた。グウィオンが鳥になって空に逃げると、ケリドウェンは鷲になって追いかけた。
疲れ果てたグウィオンは一粒の麦になって隠れたが、ケリドウェンは雌鳥になってグウィオンを食べてしまった。するとケリドウェンは妊娠した。腹の中にいる子供がグウィオンだと分かっていたため、ケリドウェンは子供を殺そうと決めたが、いざ生まれてみると子供のあまりの美しさにできず、結局革袋に包んで海へと捨てたのだった。
エルフィンとの出会い
やがてグウィズノの息子エルフィンが鮭を釣っているとき、子供が浮かんでいるのを見つけた。この時エルフィンが「dyma Dal Iesin(輝く額だ!)」と叫んだため、赤子はタリエシン(Taliesin)と名付けられた。赤子は、このような美しい詩を吟じはじめた。
- 美しいエルフィンよ 悲しまないで!
- ……わたしは小さく弱いのに
- 押し寄せる波の上にいた
- あなたのために役立ちます
- 三百匹の鮭よりも
- 気高く優しいエルフィンよ
- どうか釣果を悲しまないで
- わたしは弱く 籠の中
- わたしの舌に 不思議が起きた……
エルフィンは驚き、なぜ赤子が喋れるのかと問うた。するとタリエシンはこのように詠った。
- 小舟のように漂うは
- 暗い袋にくるまる私
- 果てなき海にさまよって
- 息絶えんとき お告げを受けた
- 天の主が 自由をくれた
マーレグン・グウィネッズの宮廷
月日が過ぎてタリエシンが13歳になったとき、エルフィンはマーレグン・グウィネッズ王の宮廷に仕えていたが、彼はタリエシンはこの宮廷のどの詩人よりも優れており、自分の妻はどの宮廷の女性よりも優れていると発言した。そこでマーレグンの息子ルーンが、エルフィンの妻を誘惑して彼の言葉が真実ではないことを示すため、エルフィンの家を訪れた。ルーンはエルフィンの妻を酔わせて結婚指輪を外させ、彼女の放埒さを証明した。だがエルフィンの嘘はまだ確信できないとされた。次にマーレグンは、タリエシンに対して宮廷の詩人よりも優れていることを証明しろと迫った。すると、タリエシンは長大な詩で王の凋落を予言した。王の詩人たちは赤子のうめきのような声を上げるだけであった。こうしてエルフィンは牢から釈放された。
- 1 タリエシンとは
- 2 タリエシンの概要
- 3 神話上の生涯
- 4 日本語訳
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