ケミカルピーリング 用途

ケミカルピーリング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/22 03:12 UTC 版)

用途

ケミカルピーリングは、痤瘡(ざ瘡、ニキビ)、色素沈着、光老化アンチエイジング、しみ、くすみの改善を目的とする[1]。表面的な傷跡や、手や首の若返り (rejuvenate) にも用いられる[2]。一般に25歳以下の健康な肌の人には、AHAは不要で、ニキビなどのトラブルがある場合に考慮される[7]

2008年の日本皮膚科学会ガイドラインで、良質な証拠はないが選択肢のひとつとされているのは、ざ瘡の皮疹、小斑の日光黒子(老人性色素斑)、小じわに対する、グリコール酸とサリチル酸マクロゴールである[1]。ざ瘡の陥凹性瘢痕、大斑の日光黒子肝斑(しみ)、雀卵斑(そばかす)、炎症後の色素沈着において、またサリチル酸エタノールの使用は証拠がないため推奨できない[1]。『尋常性痤瘡治療ガイドライン2017』でも、グリコール酸とサリチル酸マクロゴールでは選択肢だが、サリチル酸エタノールは推奨されていない[10]

施術前に、創傷の治癒が遅れたり、感染に弱くなるとか毒性のリスクが高まる内臓疾患や糖尿病、免疫抑制といった既往歴が考慮され、ヘルペスや感染症に留意される[2]。放射線治療を受けていれば、再上皮化を遅らせ、皮膚剥離による瘢痕のリスクは高くなるし、イソトレチノイン(レチノイド作用のニキビ治療薬)を使っていれば中間以降の皮膚の層の剥離が起きているため同様のリスクがある[2]。光感受性を増加させるホルモンや経口避妊薬では、色素沈着が起こりやすくなる[2]

6-12か月以内にイソトレチノイン内服薬を使用していた場合瘢痕化や治癒の遅延を生じやすいとして、その際には様々な皮膚の処置が推奨できないとして広く実践されているが、この件について米国皮膚科学会第74回年次総会を通じて、各専門家(皮膚外科、美容皮膚、小児皮膚、創傷、ざ瘡、イソトレチノン)が審査を行ったが、ケミカルピーリングではその裏付けはなかったことが確認された[12]

悪化する可能性のあるものには、湿疹、乾癬白斑酒皶脂漏性皮膚炎がある[2]

禁忌は、傷口への施術、妊婦、また細菌性、ウイルス性、真菌性の感染症、また薬剤に対するアレルギー、中等度の層以上へ作用する薬剤では、半年以内のイソトレチノインの使用となる[2]

施術後は遮光が必要となり、レチノイドの使用も注意が必要となる[1]。また禁忌として、マイクロニードリング後の強いピーリング成分では傷跡が残る可能性があり、アスコルビン酸は脱色素斑ができるおそれがあり、レチノイン酸は刺激感が強くなるため使用に困難を生じる[7]


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p ガイドライン3版 2008.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u Chemical peels: A review of current practice 2018.
  3. ^ a b c d e Castillo DE, Keri JE (2018). “Chemical peels in the treatment of acne: patient selection and perspectives”. Clin Cosmet Investig Dermatol: 365–372. doi:10.2147/CCID.S137788. PMC 6053170. PMID 30038512. https://www.dovepress.com/chemical-peels-in-the-treatment-of-acne-patient-selection-and-perspect-peer-reviewed-fulltext-article-CCID. 
  4. ^ a b デスモンド・フェルナンデス 著、畠山けんじ 訳『デスモンド・フェルナンデスのスキンケア・ハンドブック』(新訂版)ハック畠山けんじ事務所、2002年、136-137、201-206頁頁。ISBN 4-939097-02-1 
  5. ^ デスモンド・フェルナンデス『Dr.フェルナンデスのスキンケアのすべて 世界70ヶ国以上の人から愛される美容の真実』幻冬舎、2011年、95-97頁。ISBN 978-4-344-99796-7 
  6. ^ Sumita JM, Leonardi GR, Bagatin E (2017). “Tretinoin peel: a critical view”. An Bras Dermatol (3): 363–366. doi:10.1590/abd1806-4841.201755325. PMC 5514577. PMID 29186249. https://doi.org/10.1590/abd1806-4841.201755325. 
  7. ^ a b c d e f g h i j デスモンド・フェルナンデス『Dr.フェルナンデスのスキンケアのすべて 世界70ヶ国以上の人から愛される美容の真実』幻冬舎、2011年、155、158、160-162、168-170、224頁頁。ISBN 978-4-344-99796-7 
  8. ^ a b Katie Rodan, Kathy Fields, George Majewski, Timothy Falla (2016-12). “Skincare Bootcamp: The Evolving Role of Skincare”. Plastic and reconstructive surgery. Global open 4 (12 Suppl Anatomy and Safety in Cosmetic Medicine: Cosmetic Bootcamp): e1152. doi:10.1097/GOX.0000000000001152. PMC 5172479. PMID 28018771. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/28018771/. 
  9. ^ デスモンド・フェルナンデス『Dr.フェルナンデスのスキンケアのすべて 世界70ヶ国以上の人から愛される美容の真実』幻冬舎、2011年、166-168頁。ISBN 978-4-344-99796-7 
  10. ^ a b 林伸和、古川福実、古村南夫 ほか「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」『日本皮膚科学会雑誌』第127巻第6号、2017年、1261-1302頁、doi:10.14924/dermatol.127.1261NAID 130007040253 
  11. ^ 渡辺幸恵、森田明理「ざ瘡に対するグリコール酸ピーリング199例の治療経験」『西日本皮膚科』第68巻第5号、2006年、548-552頁、doi:10.2336/nishinihonhifu.68.548NAID 130004831577 
  12. ^ Spring LK, Krakowski AC, Alam M, et al. (August 2017). “Isotretinoin and Timing of Procedural Interventions: A Systematic Review With Consensus Recommendations”. JAMA Dermatol (8): 802–809. doi:10.1001/jamadermatol.2017.2077. PMID 28658462. 


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