ガイドウェイバス 導入事例

ガイドウェイバス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/06 21:45 UTC 版)

導入事例

オーストラリア

公園地区内を走るオーバーン 途中停留所では通常のバスも乗り入れ可能(パラダイス)
公園地区内を走るオーバーン
途中停留所では通常のバスも乗り入れ可能(パラダイス)

アデレードの北東部に新興住宅地が開発され、この地区と都市部を結ぶ公共交通機関の整備にあたり、当初は市の南部で運行しているトラムの延伸導入も検討されていた[6]。しかし、既存のバス路線網との連携が図れる[6]上に整備費も安価である[6]ことから、ドイツで既に導入されていたシステムをそのまま採用することとなった[6]。1986年3月に都市部からパラダイスまでの6kmが開業し[7]、1989年にはモドバリーまで延伸され、全長約12kmの専用路が完成した[7]。整備された当初は「バスウェイ」と称していた[7]が、「オーバーン (O-Bahn) 」と俗称されていた[7]ことから、1995年には正式名称も「オーバーン (O-Bahn) 」に変更された[7]

専用路はアデレードの都市部外周にある公園地区内に整備され[6]、全て地平に設置されている[14]。用地取得費用が不要だったことから建設費は1kmあたり6億円に低減された[6]。専用路での最高速度は100km/hで、2005年時点では世界最速のガイドウェイバスである[6]。専用路区間の途中停留所ではガイドウェイは設置されておらず、乗り継ぎの便を図るために通常のバスも乗り入れが可能になっている[7]

2005年時点では単一路線としては世界最長距離のガイドウェイバスである[6]。それまで通常のバスで30分から40分程度かかっていた所要時間がわずか6分から7分程度に短縮され[14]、1日15,000人程度の利用者数となっている[14]。しかし、1989年の延伸は経営上から必ずしも成功ではなかったとみられ[6]、以後の延伸計画はない[6]

ドイツ

アウトバーン中央分離帯に設けられた専用路を走るバス トラム乗り入れに対応し、左側にも乗降用扉を有する「デュオバス」
アウトバーン中央分離帯に設けられた専用路を走るバス
トラム乗り入れに対応し、左側にも乗降用扉を有する「デュオバス」

1980年9月にエッセン郊外のエアバッハ地区で開業した、世界で初めて実用化されたガイドウェイバスである[5]。当初の距離は1.3kmであった[2]が、数次に分けて4路線に対して整備され[14]、専用路の区間は2005年時点で合計8.9kmに達している[2]。1kmあたりの整備費は3900万円[15][注釈 2]で、トラムの整備費とほぼ同額であるとされている[15]が、1kmあたりの運行経費はトラムが27.3円[注釈 3]であるのに対し[15]、バスでは3.9円[注釈 4]とされている[15]

当初は廃止されたトラムの軌道敷跡を利用したものであった[2]が、その後の延伸区間においては道路(アウトバーン)の中央分離帯部分が専用路に充てられている[16]。専用路区間での速度は60km/h程度であるが、直線区間であれば80km/h程度でも走行は可能[15]。専用路は全て地平に設置されている[17]

1988年9月24日からは、都心部でトラム地下区間への乗り入れが開始された[4]。この区間では軌道敷の両側にガイドウェイを敷設し[18]、地下区間では排出ガスの影響を考慮してトロリーポールによって集電を行なう仕組みにした[4]。これに対応して、両側側面に乗降用の扉を設置し[5]、内燃動力であるディーゼルバスと電気動力であるトロリーバスの双方の機能を有するデュアルモード連節バス(通称「デュオバス」)が導入された[16]。都心部では地下のトラムと同じホームから発着し[16]、地上に出た後もトラムの併用軌道区間をトロリーバスとしてそのまま運行[16]、さらにガイドウェイ区間はディーゼルバスとして運行し[16]、一般道路区間では必要に応じてディーゼルバスかトロリーバスのどちらかのシステムで走行する。利用者の少ない時期などはトラムを運休し、代わりに「デュオバス」を運行することもあった[4]

トラム地下駅に乗り入れた「デュオバス」 マンハイムの軌道併用ガイドウェイバス
トラム地下駅に乗り入れた「デュオバス」
マンハイムの軌道併用ガイドウェイバス

バスの機動性と軌道の確実性を併せ持つシステムとして注目された[17]が、トラムの信号システムが稠密な運行に対応していなかった[6]上、軌道脇に設置されたバス用の走行面(木製)の磨耗が早く[6]、水がたまることでスリップが多発するようになった[6]。2005年までにトラムへのバス乗り入れは廃止された[6]

これとは別に、マンハイムでは渋滞のひどい交差点を回避するため[6]、1992年にトラム軌道の両脇にガイドウェイを整備し、バスの乗り入れを開始した[6]。都心へ向かう方向のみの設定で、距離も0.8kmと短い距離である[6]。ガイドウェイバスでは世界で初めて低床バスを導入した[6]

この2都市の事例以後、ドイツではガイドウェイバスの延伸計画はない[6]

日本

1985年に建設省(当時)を主体としてガイドウェイバスの開発が開始され[8]、1989年にアジア太平洋博覧会の会場内輸送機関として0.9kmのガイドウェイバスが運行されたのが始まりである[8]。1990年には名古屋市において事業化が決定し[8]、1994年には主体となる事業者が設立され[8]、2001年3月23日に大曽根駅小幡緑地駅を結ぶ6.5kmの区間において、名古屋ガイドウェイバスによって「ゆとりーとライン」として本格的な営業運行が開始された[19][20]

高架の専用路を走行する「ゆとりーとライン」 停車場もバス用としては大規模な構造物となっている(大曽根駅)
高架の専用路を走行する「ゆとりーとライン
停車場もバス用としては大規模な構造物となっている(大曽根駅)

日本で導入されたガイドウェイバスは、他国のものと異なる特徴をいくつか有する[11]。 他の国では専用路区間を平地に設けているのに対し、日本では全線高架で整備されている[11]。このため、1kmあたりの整備費は54億円に達し[11]、他の導入国と比較すると異常なほど高額の整備費である[11]。バスの乗降施設についても、モノレールの駅に匹敵する大掛かりな規模となっており[21]、通常のバスのように路上から乗れる気軽さはない[21]。さらに、運行規定では1駅間の走行台数は1台以下と決められており[22]、通常のバスのような続行運転は出来ない[11]。このような事情から、日本のガイドウェイバスに対しては「バスの機動性を十分に生かせていない」[11]、「整備費用の低減というメリットも実現できていないのでは」[21]という意見もある。

運行車両については、全車両ともツーステップバスが採用されている[23]。2001年の開業時点では既にワンステップバスノンステップバスは普及が進んでいた[23]が、その時点で案内輪をはじめとするシステムの開発が既に終了しており[23]、低床バスのために新たに開発する時間的余裕がなかったためである[23]。案内輪は一般道路区間では収納されるが[9][23]、これも日本独特の仕様である[11]

法規上の位置づけ

日本のガイドウェイバスの位置づけの特徴は、他の導入国では専用路区間であってもバスとして扱われているのに対し[11]、日本においては無軌条電車(トロリーバス)、つまり軌道法の適用を受ける鉄道の一種として扱われていることである[22]。このため、アジア太平洋博覧会が行われた福岡では路面電車の運転免許(乙種電気車運転免許)とバスを運転するための免許(大型自動車第二種免許)を両方とも保持する乗務員が運行を担当した[22]。名古屋の「ゆとりーとライン」でも無軌条電車の運転免許(無軌条電車運転免許)を取得したバス乗務員が運行を担当している[22]。専用路区間での最高速度は60km/hで、これも無軌条電車の法規が由来である[22]

イギリス

1984年にバーミンガムで650mの区間に "TRACLINE 65" として導入されたのが始まりである[3]が、これは実験的な要素が強く、2年ほどで廃止されている[3]

片方向だけ整備された専用路(マンチェスター) ダブルデッカーのガイドウェイバス(イプスウィッチ)
片方向だけ整備された専用路(マンチェスター)
ダブルデッカーのガイドウェイバス(イプスウィッチ)

その後、バス事業の自由化に伴い、1995年イプスウィッチ郊外にて "Superoute 66" として200mの区間に導入された[3]。この区間は一般道路では大きく迂回しなければならない区間をガイドウェイバスによって短絡することによって、自家用車からバスへの転移を促したもので[3]、専用路区間にはスーパーマーケット保健所が存在する[3]。同じ年にはリーズで幹線道路の一部を専用路に転用したガイドウェイバス "Superbus" の運行が開始された[3]。リーズの導入事例では、片方向のみの整備区間が多いこと[3]や、バスレーンの整備もあわせて行われていることが特徴である[3]。リーズでは、ガイドウェイバスを将来のLRT計画の補完として位置づけている[3]。その後、2001年にブラッドフォードでリーズと同様のガイドウェイバス "Quality Bus" が運行されているが、こちらはバスを都市交通の主体と位置づけている[3]。その後2003年にはロンドン郊外のクローリーで "Sussex Fastway" として、2004年にはエディンバラでも "Fastlink" として導入が行なわれた[3]

これらイギリスのガイドウェイバスの特徴として、ダブルデッカーの運行が行なわれている点が挙げられる[24]。2005年時点では6箇所にガイドウェイバスの整備計画が存在する[3]。このうちケンブリッジでは延長27.4kmで、完成すれば世界最長のガイドウェイバスとなる[3]




注釈

  1. ^ 鉄道車両を使用する場合、運行する全区間において軌道の整備が必要である。
  2. ^ 文献では「1mあたりの建設費は600DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。
  3. ^ 文献では「1kmあたり0.42DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。
  4. ^ 文献では「1kmあたり0.06DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。

出典

  1. ^ a b 『バスラマ・インターナショナル』通巻5号 p.65
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.87
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.89
  4. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.15
  5. ^ a b c 『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.14
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.88
  7. ^ a b c d e f g 『鉄道ジャーナル』通巻350号 p.117
  8. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.13
  9. ^ a b c 浅井建爾 2001, p. 252.
  10. ^ a b 『路線バスの現在・未来 PART2』p.77
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.90
  12. ^ 『路線バスの現在・未来 PART2』pp.78-79
  13. ^ 『バスラマ・インターナショナル』通巻5号 p.66
  14. ^ a b c d 『路線バスの現在・未来 PART2』p.78
  15. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.16
  16. ^ a b c d e 『鉄道ジャーナル』通巻340号 p.142
  17. ^ a b 『路線バスの現在・未来 PART2』p.79
  18. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻340号 p.143
  19. ^ 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.12
  20. ^ 浅井建爾 2001, pp. 252,253.
  21. ^ a b c 『路線バスの現在・未来 PART2』p.80
  22. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.15
  23. ^ a b c d e 『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.17
  24. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻466号 pp.88-89




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