カフラー 古代ギリシアの伝承の中のカフラー

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カフラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 15:05 UTC 版)

古代ギリシアの伝承の中のカフラー

ファラオ、カフラー像, 恐らくメンフィス出土。現在エジプト考古学博物館収蔵。アラバスター製であり彩色の跡がある。

古代の歴史家マネトはカフラーを「スフィス2世」と呼んでいる。そしてその在位年数を66年としているが、それ以外に彼について何も記していない[10][11][12][13]

古代ギリシアの歴史家ディオドロスヘロドトスはカフラーを異端者、冷酷な独裁者として描く。彼らはカフラー(どちらもカフラーの名前から変化した名前、ケフレンと呼んでいる。)は父である誇大妄想の独裁者ケオプス(クフ)の死後王位を継いだとしている。また、ヘロドトスとディオドロスはカフラーが50年統治したとし、貧しいエジプト人達は二人の王の合わせて106年の治世の間苦しまなければならなかったと主張している[10][11][12]

しかしまた、彼らはカフラーの後継者としてメンカウラー(彼等は「ミュケリノス」と呼んでいる)について述べ、この王は二人の前任者のカウンターパートであるとしている。ヘロドトスはメンカウラーについてクフとカフラーの残酷さに悲しみ失望し、平和と善とをエジプトに取り戻したと記述している[10][11][12]

現代のエジプト学者達はヘロドロスとディオドロスの物語は同時代の価値観[14]による一種の中傷であると評価する。ギーザのピラミッド群のような特大の墳墓はギリシア人や、後の新王国時代の神官達をも悪い意味で驚かせたに違いない。なぜならばこれらは必ずや異端のファラオ・アクエンアテンと、その誇大妄想的な建築計画を思い起こさせたからである。この非常にネガティブな人物像は明らかにカフラーと彼の威圧感のあるピラミッドに投影された。このような見解は或いはカフラーの生きた時代、貴重な石で造られた巨大な彫像を作成し公衆の面前に設置することは王にのみ許されていたという事実によって増大されたかもしれない。ギリシア人の著作家と葬儀神官や神殿の神官達は、この壮大なモニュメントについて誇大妄想的な性格の結果とする以上の説明をすることができなかった。これらの見解と事の顛末はギリシア人の歴史家達によって熱心に収集されたので、カフラーについての否定的な評価が構築された。なぜならば、スキャンダラスな物語は聖徳の王について語る(退屈な)物語よりも読み手に好まれたからである。[10][11][12][13]


注釈

  1. ^ トリノ王名表には、カフラーとメンカウラーの間に1人分の空白がある[1]

出典

  1. ^ フィネガン 1983
  2. ^ Sphinx Project: Why Sequence is Important” (2007年). 2010年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月27日閲覧。
  3. ^ a b c Dodson, Aidan and Hilton, Dyan. The Complete Royal Families of Ancient Egypt. Thames & Hudson. 2004. ISBN 0-500-05128-3
  4. ^ Grajetzki, Ancient Egyptian Queens: A Hieroglyphic Dictionary, Golden House Publications, London, 2005, ISBN 978-0-9547218-9-3
  5. ^ Tyldesley, Joyce. Chronicle of the Queens of Egypt. Thames & Hudson. 2006. ISBN 0-500-05145-3
  6. ^ Anthony Spalinger, Dated Texts of the Old Kingdom, SAK 21 (1994), p.287
  7. ^ 訳注:徴税のために行われていた牛の頭数調査であり、この実施回数で治世年が記録されていた。新王国時代には毎年行われていたが、古王国時代には隔年で行われていたと考えられている。
  8. ^ a b c d Porter, Bertha and Moss, Rosalind, Topographical Bibliography of Ancient Egyptian Hieroglyphic Texts, Statues, Reliefs and Paintings Volume III: Memphis, Part I Abu Rawash to Abusir. 2nd edition (revised and augmented by Dr Jaromir Malek, 1974. Retrieved from gizapyramids.org Archived 2008-10-11 at the Wayback Machine.
  9. ^ Markowitz, Haynes, Freed (2002). Egypt in the Age of the Pyramids 
  10. ^ a b c d Siegfried Morenz: Traditionen um Cheops. In: Zeitschrift für Ägyptische Sprache und Altertumskunde, vol. 97, Berlin 1971, ISSN 0044-216X, page 111–118.
  11. ^ a b c d Dietrich Wildung: Die Rolle ägyptischer Könige im Bewußtsein ihrer Nachwelt. Band 1: Posthume Quellen über die Könige der ersten vier Dynastien (= Münchener Ägyptologische Studien. Bd. 17). Hessling, Berlin 1969, page 152–192.
  12. ^ a b c d Wolfgang Helck: Geschichte des Alten Ägypten (= Handbuch der Orientalistik, vol. 1.; Chapter 1: Der Nahe und der Mittlere Osten, vol 1.). BRILL, Leiden 1968, ISBN 9004064974, page 23–25 & 54–62.
  13. ^ a b Aidan Dodson: Monarchs of the Nile. American Univ in Cairo Press, 2000, ISBN 9774246004, page 29–34.
  14. ^ 訳注:原文はphilosophyであるが、文脈上価値観と訳す。


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