ウィリアム・テル (オペラ) 楽譜

ウィリアム・テル (オペラ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/16 08:05 UTC 版)

楽譜

『ギヨーム・テル』の批判校訂版(Critical Edition)[12]ロッシーニ財団イタリア語版による全集版によるもので、M.エリザベス・C.バートレット編「Fondazione Rossine di Pesaro」のクリティカル・エディションが1992年に刊行されると、これが決定版となり、1990年代以降の新演出による本作の上演はオリジナルのフランス語によるものが一般的になっている。イタリア語改訂版の『グリエルモ・テル』(Guglielmo Tell)はカリスト・バッシイタリア語版ルイジ・バロッキイタリア語版、パオロ・カッテランなどによるもの及びその折衷版などが多数存在し、楽譜の版により訳詩者が異なるという状況であった[13]。また、イタリアにおいては検閲などの影響で、イタリア語への翻訳ばかりでなく、作曲家が関与しない翻案をも余儀なくされこともあるほか、長大な作品であるため様々な形でカットが行われてきたことも決定版が存在せず、混沌とした状態になっていた原因であった[14][15]

リブレット

エティエンヌ・ド・ジュイ
イポリット=ルイ=フローラン・ビス

リブレットはシラーのスイスウィリアム・テルの伝承を素材とした『ヴィルヘルム・テル』(1804年)を原作としてヴィクトール=ジョゼフ・エティエンヌ・ド・ジュイ英語版イポリット=ルイ=フローラン・ビス英語版、の2人の共同によりフランス語で制作された。このほかにアルマン・マラ英語版アドルフ・クレミューが協力したほか、ロッシーニ自身も携わった[16]。原作との相違は原作ではルーデンツとベルタ嬢(いずれもスイス人の設定、オペラには登場しない)の恋愛は控え目に書かれているが、オペラではアルノールとマティルドの恋愛関係が重要な要素として設定されている。原作にはアルノールとマティルドは存在しない。また、第2幕の三重唱「彼らが奪い取った父の日を」ではシラーの戯曲をはっきりと逸脱する。戯曲ではメルクタールは目をつぶされるだけで惨殺されるわけではないし、またテルも純朴な行動の人と描かれており、リュトリの丘で開かれる様々な政治集会への参加も辞退するのである[17]

演奏時間

セミラーミデ』や『泥棒かささぎ』の3時間20分より長く、当時のパリの最大の同僚のマイアベーアの5幕物のグランド・オペラの規模を模したものである。約4時間(各幕80分、50分、65分、45分)


注釈

  1. ^ Guillaumeの正確な発音はギヨムだが[2]ギヨームと慣例的に表記されている。

出典

  1. ^ a b c 『オックスフォードオペラ大事典』P80
  2. ^ Guillaume Tell の フランス語 の発音”. Forvo Media SL. 2019年7月3日閲覧。
  3. ^ ただし、日本ロッシーニ協会サイト内では『ギヨーム・テル』と読んでいる。日本ロッシーニ協会〜ニューイヤー・ロッシーニ・コンサート
  4. ^ a b 『パリ・オペラ座-フランス音楽史を飾る栄光と変遷-』P56
  5. ^ 『オペラは手ごわい』P47
  6. ^ 『新イタリア・オペラ史』P183
  7. ^ 『オペラは手ごわい』P48~49
  8. ^ 『フランス音楽史』P299
  9. ^ Braunstein, Joseph (1952). “Reviews of Records - Rossini: William Tell. The Musical Quarterly 38 (4): 667–671. http://mq.oxfordjournals.org/cgi/reprint/XXXVIII/4/667-b 2007年10月21日閲覧。. 
  10. ^ 外国オペラ作品322の日本初演記録
  11. ^ Fregosi, William (1993). Guglielmo Tell. Gioachino Rossini”. The Opera Quarterly 9 (4): 259–264. doi:10.1093/oq/9.4.259. http://oq.oxfordjournals.org/cgi/reprint/9/4/259 2007年10月21日閲覧。. 
  12. ^ 主観的解釈を退け、原典資料の綿密な批判的検討を通じて実証的に作品を再構成したエディションを指す。19世紀イタリア・オペラの批判校訂版はロッシーニ財団による全集版(1979年刊行開始)が先鞭をつけた(『新イタリア・オペラ史』P302)
  13. ^ 『イタリア・オペラ・ガイド』P76
  14. ^ 『新グローヴ オペラ事典』P245
  15. ^ 『イタリア・オペラ・ガイド』P82
  16. ^ 『新グローヴ オペラ事典』P244
  17. ^ 『新グローヴ オペラ事典』P246
  18. ^ Kirby, Percival R., "Rossini's Overture to William Tell" (April 1952). Music & Letters, 33 (2): pp. 132-140.
  19. ^ スイスの伝統的な民謡で、牛追いのための唄。





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