インシデント・コマンド・システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/25 03:56 UTC 版)
米国以外のインシデント・マネジメント・システム
ICS と同様のインシデント・マネジメント・システムは、オーストラリア、イギリスなどでも導入されている。米国とは異なり、全国的に導入されているわけではなく、主として消防組織の間で広がっており、組織名称なども少し異なっている。しかし、監督限界の設定やボトムアップによる組織編成などは米国と同じである。
- オーストラリア - Incident Control System
- イギリス - Incident Command System
- カナダ - Incident Command System
- ドイツ - German Regulation 100 "Leadership and Command in Emergency Operations"
ICS のメリット
ICS には、次のメリットがある。
- 組織は大きくなると「官僚制の逆機能」のために様々な弊害が出てくるが、ICS では監督限界によって徐々に組織を拡大するので、必要以上に大きくならない。
- 用語、様式、手続きなどの全てが標準化されており、関係者の意思疎通がスムーズになる。
- 組織内の勢力および情報の「縦断的」「横断的」流れが全レベルにおいて確立でき、迅速な動員、物資の流通・展開が可能となる。
- 運用上の傾向・パターンの発見が容易になり、混乱やミスを最低限に抑制する効果がある。
- 目標管理による関係者の主体的な行動が期待できる。
- 現場指揮官は、必要以上に上部組織による介入を受けないので、意思決定が短時間に行える。
簡潔に言い換えれば、調整コストの最小化(迅速な意思決定・伝言ゲームの抑制など)である。
ICS 教育
ICS は全ての関係者が知識を共有しておかなければならないので、米国では数多くの研修機関が設置されている。FEMA などは、インターネット上で無料の研修コースも提供している。次のような段階的な研修コースが用意されている。
- 基礎コース (IS-100, IS-200)
- 中・上級コース(IS-300, IS-400: この2つのコースは実地研修)
- NIMS 初級コース (IS-700)
- NIMS 多機関調整システムコース (IS-701)
- EOC マネージメント&オペレーションコース (IS-775)
- NRF 初級コース (IS-800)
これらのコースを受けていることを昇進の条件にしたり、職種によっては必須の研修項目にしている政府機関が多い。 (FEMA Training Courses参照 [注釈 1])
日本ではまだ ICS に相当するシステムが導入されていない。導入のためには、まずシステムの標準化、そして関係者の教育などが必要となる。
- 1 インシデント・コマンド・システムとは
- 2 インシデント・コマンド・システムの概要
- 3 歴史
- 4 仕組み・特徴
- 5 組織の基本機能
- 6 施設
- 7 統一された用語
- 8 統一された現場作業計画
- 9 米国以外のインシデント・マネジメント・システム
- 10 脚注
- インシデント・コマンド・システムのページへのリンク