アンモニア 性質

アンモニア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/18 14:59 UTC 版)

性質

アンモニア分子は窒素を中心とする四面体構造を取っており、各頂点には3つの水素原子と一対の孤立電子対を持つ。常温常圧では無色で刺激臭のある可燃性気体。水に非常によく溶け、水溶液は塩基性を示す。 様々なと反応して、対応するアンモニウム塩を作る。また、有機反応において求核剤として振る舞う。例えば、ハロゲン化アルキルと反応してアミンを、カルボン酸ハロゲン化物カルボン酸無水物と反応してアミドを与える。塩化水素(塩酸)を近づけると塩化アンモニウム (NH4Cl) の白煙を生じる。ネスラー試薬では褐色の沈殿を生じる。アンモニアは湿ったリトマス紙を青に変える事が可能である。

液体アンモニア

アンモニアは液化しやすく、20℃では、0.857 MPa (8.46気圧)で液化する。また沸点が-33℃と高いため寒冷地では冬季に自然に液化することもあり得る。液体アンモニアの性質は水と似ている。例えば、様々な物質を溶解し、液体アンモニア自体も水溶液と似た性質を示す。

液体アンモニア中では弱い自己解離が存在し、-33℃(沸点)におけるイオン積は以下の通りである[5]

液体アンモニアの白色ボンベ。日本においては内容物によって塗装色が定められている。

液体アンモニアは単体アルカリ金属アルカリ土類金属およびユウロピウムなどを溶解する性質を持つ。アルカリ金属、特にセシウム溶解度は非常に大きく、これらの金属の希薄溶液は溶媒和電子により青色を呈するが、濃厚溶液は金属光沢ブロンズ様の液体となる。液体アンモニアに溶解した金属ナトリウムは、バーチ還元などの有機反応に利用される。さらに、金属溶液は高濃度で金属的な伝導挙動を示すことが知られている。

比誘電率は-33℃において22.4と水に比べてはるかに低い。無機塩類の液体アンモニアに対する溶解度は一般的に低いが、アンモニアの配位能力によりヨウ化銀(AgI)などは非常によく溶ける。

人体においては、摂取した蛋白質肝臓で分解される過程でアンモニアが生じ、さらに尿素へと変化する。肝機能が低下するなどしていると「がアンモニア臭い」と感じられることがある[6]。またアンモニアを吸引するなどした場合は量によっては危険であるため、中アンモニア濃度を測定する。また、魚介類などの人間以外の生体については、環境水における濃度を測定する。

毒性

粘膜に対する刺激性が強く、濃度 0.1% 以上のガス吸引で危険症状を呈する。悪臭防止法に基づく特定悪臭物質の一つであり、毒物及び劇物取締法においても劇物に指定されている。日本では高圧ガス保安法で毒性ガス及び可燃性ガスに指定され、白色のボンベを用い、「毒性」などの注意書きは赤で書くように定められている。液体状のものが飛散した場合は非常に危険で、特に目に入った場合には失明に至る可能性が非常に高い[7]。高濃度のガスを吸入した場合、刺激によるショックが呼吸停止を誘発することがある[8]。生体において、血中アンモニア濃度が高くなると、中枢神経系に強く働き、意識障害が生じる。

急性毒性[8]

  • 吸入 ラット LC50 2000ppm/4hr
  • 吸入 マウス LC50 4230ppm/4hr
  • 吸入 ウサギ LC50 7 mg/m3/1hr
  • 吸入 ネコ LC50 7 mg/m3/1hr
  • 経口 ラット LD50 350 mg/kg

燃焼

通常の状態における空気中での引火性は知られていない。発火点は651℃で空気中のアンモニア含有量が16–25%で爆発性ガスができる。液体アンモニアはハロゲン強酸と接触すると激しく反応して爆発・飛散することがある。酸素中では燃焼し、窒素酸化物を発生する[9]


  1. ^ NIST Chemistry WebBook (website page of the National Institute of Standards and Technology) URL last accessed 15 May 2007
  2. ^ a b c Ammonia”. NIST. 2021年3月8日閲覧。
  3. ^ a b c 厚生労働省モデルSDS
  4. ^ MSDS Sheet from W.D. Service Co.
  5. ^ シャロー 『溶液内の化学反応と平衡』 藤永太一郎、佐藤昌憲訳、丸善、1975年
  6. ^ 汗が臭くなる病気沢井製薬(2017年7月)2018年4月12日閲覧。
  7. ^ 山崎昶 『ミステリーの毒を科学する』講談社ブルーバックス〉、1992年。ISBN 4-06-132919-7ISBN 978-4-06-132919-5 
  8. ^ a b アンモニア (PDF) 化学物質安全シート 高千穂科学工業
  9. ^ MSDS 液体アンモニア (PDF)
  10. ^ a b D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982)
  11. ^ FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年、原書:F. ALBERT COTTON and GEOFFREY WILKINSON, Cotton and Wilkinson ADVANCED INORGANIC CHEMISTRY A COMPREHENSIVE TEXT Fourth Edition, INTERSCIENCE, 1980.
  12. ^ 田中元治 『基礎化学選書8 酸と塩基』 裳華房、1971年
  13. ^ a b c 江崎正直、アンモニア合成 (PDF)
  14. ^ 秋鹿研一、小山建次、山口寿太郎 ほか、「アンモニア合成用カリウム金属添加ルテニウムおよびオスミウム触媒の製法に関する研究」『日本化学会誌』 1976年 1976巻 3号 p.394-398, 日本化学会, doi:10.1246/nikkashi.1976.394, NAID 130004155575
  15. ^ 秋鹿研一『化学と教育』第10巻、1994年、 680 - 684頁。
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  18. ^ 世界最高の活性を示すアンモニア合成触媒の開発に成功 東京大学、九州大学、科学技術振興機構
  19. ^ 貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発 東京工業大学、Yutong Gong, Jiazhen Wu, Masaaki Kitano, Junjie Wang, Tian-Nan Ye, Jiang Li, Yasukazu Kobayashi, Kazuhisa Kishida, Hitoshi Abe, Yasuhiro Niwa, Hongsheng Yang, Tomofumi Tada & Hideo Hosono., Ternary Intermetallic LaCoSi as a Catalyst for N2 Activation(日本語タイトル:窒素分子の活性化触媒としての3元系金属間化合物LaCoSi)., Nature Catalysis, doi:10.1038/s41929-017-0022-0
  20. ^ 経済産業省生産動態統計・生産・出荷・在庫統計 平成20年年計による
  21. ^ http://www.ueri.co.jp/jhif/12Conference090610/doshisyauniv.pdf [リンク切れ]
  22. ^ 「自然冷媒(アンモニア)高効率ヒートポンプチラー」の開発・販売について 〜地球環境にやさしいアンモニア冷媒を採用、4月より販売開始〜 2004年3月30日 東京電力
  23. ^ 石炭火力発電所向け 燃焼試験設備で世界最高水準のアンモニア混焼を実証~CO2排出量低減に寄与 アンモニアの燃料利用を可能にする燃焼技術を開発~ IHIプレスリリース(2018年3月28日)2018年4月12日閲覧。
  24. ^ アンモニアを直接燃焼させる 炭素を含まない燃料による火力発電 科学技術振興機構(2018年4月12日閲覧)。
  25. ^ 世界初,カーボンニュートラルな「ブルーアンモニア」を利用する混焼試験を実施 ~CO₂フリーアンモニアのバリューチェーン構築に向けて,燃料製造側と利用側をつなぐ~”. 株式会社IHI. 2021年3月15日閲覧。
  26. ^ 燃料アンモニアサプライチェーンの構築」 プロジェクトの 研究開発・社会実装の”. 経済産業省. 2021年6月30日閲覧。
  27. ^ 永岡 勝俊 (2016). “触媒の酸化熱を利用したアンモニアの酸化分解による水素製造プロセスのコールドスタート”. ENEOS Technical Review 58 (2). https://www.noe.jxtg-group.co.jp/company/rd/technical_review/pdf/vol58_no02_04.pdf. 
  28. ^ 排煙脱硝装置 (PDF) 」 『エネルギア総研レビュー』第33巻第3号、エネルギア総研、2013年、 23頁、2021年3月15日閲覧。
  29. ^ アメリカ合衆国特許第 125,577号
  30. ^ アメリカ合衆国特許第 105,581号
  31. ^ Louis C. Hennick; Elbridge Harper Charlton (1965). The Streetcars of New Orleans. Pelican Publishing. p. 14-16. ISBN 9781455612598 
  32. ^ キンカン」など。
  33. ^ 坂口力、「環境要因とアンモニア代謝 第1報: 各種環境要因における脳, 肝, 血液のアンモニア濃度変化」『日本衛生学雑誌』 1965年 19巻 6号 p.369-373, 日本衛生学会, doi:10.1265/jjh.19.369
  34. ^ 福嶋真理恵、古藤和浩、遠城寺宗近 ほか、「バルプロ酸ナトリウムにより高アンモニア血症をきたしたC型慢性肝炎の1例」『日本消化器病学会雑誌』 2005年 102巻 1号 p.42-47, 日本消化器病学会, doi:10.11405/nisshoshi.102.42
  35. ^ “新年企画 食べるって何だ? 郷土の味 知恵凝縮”. 朝日新聞栃木版 (朝日新聞社). (2009年1月1日). http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000360901010002 2009年8月10日閲覧。 
  36. ^ 加藤章信、鈴木一幸、「肝性脳症: 診断・検査」『日本消化器病学会雑誌』 2007年 104巻 3号 p.344-351, doi:10.11405/nisshoshi.104.344
  37. ^ ヤリイカの人工飼育”. 松本 元先生 メモリアルサイト. ブレインビジョン株式会社. 2011年12月15日閲覧。






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