LTEの補題とは? わかりやすく解説

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LTEの補題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/18 13:04 UTC 版)

初等整数論において、LTEの補題 (LTEのほだい、: LTE lemma, lifting-the-exponent lemma)とは、特別な整数p-進付値がより次数の低い整数のものと等しいという補題である。ヘンゼルの補題と関連している。

背景

LTEの補題の起源は明確でない。補題の結果及び名称と形は近10,20年以内に注目されたと言われる[1]。ただし、補題の核となる発想はカール・フリードリヒ・ガウスDisquisitiones Arithmeticae において言及されている[2]競技数学の分野で使われることがある一方で、楕円曲線の研究にも応用される[3][4]

主張

任意の整数x, y及び正整数nx, yの素因数でない素数pについて、次の主張が成立する。

  • pが奇素数であるとき、
    • であれば(複号同順)。
    • かつnが奇数ならば、
    • かつnが偶数ならば、
  • pが偶数の素数つまり2であるとき、
    • かつnが偶数ならば、
    • かつnが奇数ならば、
  • 任意のpについて、
    • かつ、npで割り切れないならば
    • かつ、npで割り切れないかつ、nが奇数ならば

p = 2の場合のには以下の様なものがある。

  • で、x, yがともに奇数ならば、で、
  • かつnが偶数のとき、
  • かつnが奇数のとき、

証明

基本的な場合

npで割り切れない場合について、 を証明する。 より、

(1)

また、であるから題意は示された。nが奇数の場合の式 については、yをその反数-yに置き換えることで得られる。

pが奇数の場合

y = x + kpkは整数)を代入しn = pとして、二項展開することで、(1)式左辺はpで割り切れるがp2では割り切れないことが分かる。したがって[1]。同様に

n = pabbpで割り切れない)とすると、基本の場合より

a回用いることで、

が示される。の場合も同様にして証明できる。

pが2の場合

p = 2のとき、二項展開の際に奇素数とは異なりp(p - 1)/2pの倍数とならない。

であるとき、n = 2abbは奇数)とすると、

ここで より、kは非負整数)であることを用いた。

また、より強い形としてならば、が証明される[1]

一般化

LTEの補題はxn - yn/x - yが整数となるような複素数x, yにおいても同様に成立する[5]

応用

LTEの補題の利用例として2020年のAIME英語版の問題を挙げる。

149n - 2n33 × 55 × 77で割り切れるような最小の正整数nについて、nの正の約数の個数を求めよ[6]

149 - 2 = 147 = 3 × 72である。149と2は3で割り切れないが、147は3で割り切ることができるから、

が成り立つ。したがって

である。同様にして、

が分かる。

147は5で割り切れないため、因数5については次のように処理をする。149nを5で割った余りは4,1,4,1...という周期となること、2nを5で割った余りは2,4,3,1...という周期となることにより、149n - 2nを5で割った余りは2,2,1,0...という周期となる。したがってkを整数として、

LTEの補題を再度使用して、

である。

より、

ゆえに、

であるからn =22 × 32 × 54 × 75。以上よりnの正の約数の個数は210個。

出典

  1. ^ a b c Pavardi, A. H. (2011年). “Lifting The Exponent Lemma (LTE)”. 2020年7月11日閲覧。
  2. ^ Gauss, C. (1801). Disquisitiones arithmeticae.. pp. 86-87. https://gdz.sub.uni-goettingen.de/id/PPN235993352 
  3. ^ Geretschläger, R. (2020). Engaging Young Students in Mathematics through Competitions – World Perspectives and Practices.. World Scientific.. https://books.google.com/books?id=FNPkDwAAQBAJ&pg=PP1 
  4. ^ Heuberger, C.; Mazzoli, M. (2017). “Elliptic curves with isomorphic groups of points over finite field extensions”. Journal of Number Theory 181: 89–98. https://doi.org/10.1016/j.jnt.2017.05.028. 
  5. ^ S. Riasat, Generalising `LTE' and application to Fibonacci-type sequences.
  6. ^ 2020 AIME I Problems.”. Art of Problem Solving (2020年). 2020年7月20日閲覧。

関連項目




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