Butterfly Soup
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/21 07:27 UTC 版)
| ジャンル | ビジュアルノベル |
|---|---|
| 対応機種 | |
| 開発元 | Brianna Lei |
| 人数 | シングルプレイヤー |
| 発売日 | 2017年9月16日 |
| エンジン | Ren'Py |
| 対応言語 | 英語、中国語、日本語、韓国語、ポルトガル語、チェコ語、ポーランド語、ペルシア語、インドネシア語 |
『Butterfly Soup』(バタフライスープ)は、アメリカ合衆国のゲーム開発者ブリアナ・レイ(Brianna Lei)により2017年に公開されたビジュアルノベル。2008年のカリフォルニア州フリーモントを舞台に、LGBTのアジア系アメリカ人の少女4人の視点から高校生活が描かれる。4人が野球同好会に入部する成長物語であるとともに、登場人物の2人ディーヤとミンのロマンスも中心に取り扱っている。
開発には2年半が費やされ、スポーツアニメやティーン向けのドラマの影響から登場人物の性格描写が重視されている。またレイが高校生の時にあったら欲しかったようなゲームを開発しようと、自身のアジア系アメリカ人の子どもとしての生い立ちやセクシュアリティに対する開かれた視点などの要素も取り入れられている。批評家は特にリアルなティーンエイジャーの性格描写を挙げてストーリーとシナリオを評価し、PC Gamerは2017年の「最高のビジュアルノベル」に選び、Independent Games Festivalは2018年のExcellence in Narrative賞にノミネートした。2019年に日本語版に対応した。2022年に続編の『Butterfly Soup 2』が公開された。
システム
ジャンルはビジュアルノベルであり、キャラクターのイラストによって場面が進行する。ゲームはほとんど一本道でストーリーの分岐はなく、目的地や対象物を選択する機会はあるものの、それによって結末は変化しない。ストーリーは4人の主人公それぞれに焦点を当て、プレイヤーは一人称視点から異なる登場人物の視点を追体験する[1]。
ストーリー
2008年のカリフォルニア州フリーモントを舞台に、高校1年生になったばかりのLGBTのアジア系アメリカ人の少女4人が野球同好会のメンバーとして絆を深めていく様子を描いている。主人公は強いが内気なインド系アメリカ人のディーヤ、小柄だが攻撃的な韓国系アメリカ人のミン=ソ、変人で元気なインド系アメリカ人のアカーシャ、賢く真面目な中国系アメリカ人のノエルの4人。他にミンの双子の弟のジュン=ソや野球同好会のキャプテンのクリッサとリズなどが登場する。
物語は主人公4人を順番に焦点を当て、高校1年生の現在と小学3年生の頃の視点を交えながら進む。物語は小学3年生のディーヤとミンの友情と、ミンのディーヤに対する恋心の芽生え、そしてミンが突然フロリダに引っ越してしまうところから始まる。現在では、ディーヤのアカーシャとノエルとの友情やレズビアンとしての自覚を描く。3人が一緒に新設された野球同好会に入部しようとし、ミンがフリーモントへ帰ってきたことが明かされ章は終わる。
ノエルの章では、小学3年生の頃のディーヤとミンとの交流や、教育熱心な両親への不満が描かれる。現在では、主人公4人が野球同好会で練習試合をする。母から友人とスポーツに費やす時間は全て無駄だと言われたあと、野球同好会に加入することを決める。アカーシャの章は現在のみを舞台とし、ミンの弟のジュンの学校のチームとの試合が描かれる。ミンがディーヤに小学3年生のときに習得すると誓ったナックルボールでチームは勝利する。ディーヤとアカーシャはお互いにカミングアウトし、ディーヤとミンは両思いだとアカーシャがディーヤに教える。
ミンの章では、虐待的な両親との関係や伝統的な女性性への違和感が描かれる。野球同好会はチームでレストランに行き、そこでミンがディーヤをデートに誘う。アカーシャとノエルはミンに翌日ディーヤをかき氷屋へランチデートに誘うよう助言する。デート当日、アカーシャとノエルに尾行されており2人が不安がるディーヤにアドバイスしているのに気づいた後、ミンはディーヤにキスし、一同は学校へ帰る。ポストクレジットシーンでは、ディーヤとミンはシェルターから犬を引き取る[注釈 1]。
開発
『Butterfly Soup』はブリアナ・レイによって2年半をかけて開発された[3]。公開以前に、23歳のレイはインディーゲーム制作を5年間行っていた。当初南カリフォルニア大学のインタラクティブメディア&ゲーム学科の学生だったが、のちにプロのゲームライターとしても活動を始めた[3][4]。『Butterfly Soup』以前に自身の最も人気だったゲームは第1作の『Pom Gets Wi-Fi』だったと述べている[5]。
『Butterfly Soup』の企画開発中、レイは『ハイキュー!!』や『おおきく振りかぶって』、『Free!』のようなスポーツアニメや、『スキンズ』のようなティーン向けドラマに触発された。「日常生活」という設定は物語を登場人物の人格や性格描写に重きを置かせると感じており、似たようなスタイルのゲームを作りたかったと述べている[3][5]。アートとゲームプレイのスタイルはビジュアルノベルの逆転裁判シリーズに影響を受けている[6]。ビジュアルノベルの経験が乏しかったレイは、ジャンルの慣習にも捉われなかった[7]。コンセプトはサンフランシスコ・ベイエリアを舞台にした「野球百合」ゲームに決定した[3]。レイはカリフォルニアで育った自身の経験から、また単一の背景をもつアジア系の登場人物しか登場しないティーン向けドラマへの応答として、複数のアジア系の背景をもつ登場人物を創造した[6]。レイは想像上のプレイヤーの好みに合わせてデザインを決めるのではなく、自分がプレイしたいゲームを作るという自身の基本的なゲーム開発哲学の一環として、自分が成長期に欲しかったようなキャラクター設定を作りたかった[5]。
ゲームの初稿では、仮題は「Queen of Diamonds」とされ最終版よりも長い予定であり、登場人物の1年生全体を取り扱っていた。歳上の野球同好会のキャプテン2人が卒業するところで締め括られていた[8]。加えて、主人公はディーヤとミンのみであり視点人物はディーヤのみであり、ミンは別の野球チームのメンバーであり、2人のキスは1年のもっと後の予定だった[8][9]。アカーシャとノエルは脇役であり、物語は1年を通して複数の試合を描いていた[5][8]。しかし開発初期段階にて、短編しか制作してこなかった経験に対してゲームが長すぎるため、物語を1つの試合とディーヤとミンのデートを結末として終わらせることに決めた[8]。またアカーシャとノエルを主人公格に押し上げ強い個性を持たせ、視点を4人の登場人物全員に分割した[5]。しかしゲームを短縮するために予定されていたプロットやアカーシャ、ノエル、その他の脇役のキャラクターアークが削除されることとなり、これはのちに『Butterfly Soup 2』へ移行した。レイは開発期間が予定より1年以上長引いていることに気づき、ゲームを公開するために新たな場面の執筆をやめアートワークを完成させることに注力した[5][8]。
レイはゲームのプロットを先に執筆し、それからユーモア溢れるセリフや個人的な人生の要素から会話を組み立てた[5]。ディーヤは最初にデザインされた登場人物であったが、野球をテーマに決める以前から野球の美学をもつデザインがなされていた。ディーヤの片耳の失聴は、彼女の社交不安を導くものとして与えられた。ミンは対照的に「小さくて過度に攻撃的」にデザインされた。対照的にアカーシャとノエルは同身長にデザインされた[9]。主人公4人はノエルとアカーシャは秩序対混沌を、ノエルとミンは理性対感情を表すというようにある観点からみると対になるよう「ゆるやかにデザイン」された[3]。
ゲームのデモ版は2017年5月29日に公開された。当初は英語版のみでWindows、macOS、Linux向けに公開されたが、のちにファン翻訳がいくつかの言語に追加された[10]。日本語版は2019年1月1日(UTC)に公開された[11]。また非公式としてウェブブラウザ版、Android、iOSに移植された[注釈 2][12]。望むだけ支払う方式での購入が可能。レイはゲームを無料でも利用可能にするべきだと感じており、その理由として若い頃の自分が「こういうゲームを必要としていた」だろうからと同時に、購入やゲームの主題について親と議論することなく支払えなかっただろうからと述べている[5]。
評価
PC Gamerは2017年の「最高のビジュアルノベル」に選び、Independent Games Festivalは2018年のExcellence in Narrative賞にノミネートした[13][14][15]。Polygonは2017年のベストインディーゲームの一つに挙げた[16]。Rock Paper Shotgunは「素早くヒットした今の時代の古典」と表現し、2017年プレイヤーと批評家に最も人気だったビジュアルノベルの一つだと述べた[8][15]。KotakuのCarolyn Petitは2023年に「傑作であり、私にとってこの時代の決定的で欠かせない作品の一つとなった類い稀な奥深いゲームだった」と述べている[17]。2018年にデジタルゲーム財団の国際学会で発表された論文は「ゲームにおけるクィアロマンス」の最も人気な例であると表現している[18]。Laptop Magは2022年6月時点でいまだにitch.io上で抜きん出たタイトルの一つであると述べている[19]。
批評家はゲームのシナリオ、特にその主題とユーモアを好意的に評価した。VG247のCaty McCathyは「カルトヒット」と呼び、主題や雰囲気、ユーモアを広く称賛した[7]。The VergeのD. M. Mooreは真実味のあるティーンエイジャーを作り出しているとシナリオを称賛した[1]。PC GamerのBrittany Vincentも同様にシナリオを称賛し、「セクシュアリティの率直な扱い」とそれがいかに常套句に頼ることなく登場人物の感情を個性に統合しているかがゲームを特別にしていると述べた[4]。PolygonのAllegra Frankのレビューもシナリオに注目し、「今年経験した中で最も心を動かし記憶に残る物語のひとつ」と呼び、登場人物がみんな実際のティーンエイジャーのように感じられると述べ、人種やセクシュアリティが個性を圧倒することなく扱われているかを称賛した[20]。KotakuのPatricia Hernandezはシナリオ、特にユーモアとキャラクター設定のためにゲームをその年のベスト5に挙げた[21]。批評家はシナリオほどにはシステムに注目しなかったものの、The Verge'sのレビューはプレイヤーの選択が登場人物を操作したりストーリーを変えたりするのではなく、物語のペース調整や登場人物の人となりを表すことに使われていることを称賛した[1]。
続編
ゲームの公開後、ブリアナ・レイは企画からカットした内容を含む続編を計画した[5]。数ヶ月後の2018年初頭には、期間を軽く見積もっているかもしれないと警告しつつも2019年中頃の公開を予定していると発言した[8]。続編の『Butterfly Soup 2』は2022年10月29日にWindows、macOS、Linux向けに公開された。物語は4人の主人公のその後を描き、ノエルとアカーシャの関係をさらに掘り下げている。 ゲームのボリュームは前作と同程度で、itch.ioで配布されておりプレイヤーは任意の価格でゲームを入手することができる[22]。2025年7月4日(UTC)に日本語版が公開された[23]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c “Butterfly Soup is a game about queer Asian-American teens, love, and baseball”. The Verge. Vox Media (2018年1月21日). 2018年9月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月1日閲覧。
- ^ “Anon Butterfly Soup Asks below the cut!” (英語). Tumblr (2017年9月9日). 2025年10月18日閲覧。
- ^ a b c d e Couture, Joel (2018年3月5日). “Road to the IGF: Brianna Lei's Butterfly Soup”. Game Developer. 2021年8月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月3日閲覧。
- ^ a b “Brianna Lei's Butterfly Soup is a triumph for queer storytelling”. PC Gamer (2017年11月12日). 2023年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i “An interview with Brianna Lei, creator of Butterfly Soup”. Tomorrowed (2017年11月14日). 2023年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ a b Hayes, Spencer (2018年4月10日). “"Make a game someone would kill a man to play" An interview with Brianna Lei of Butterfly Soup”. Itch.io. 2023年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ a b McCarthy, Caty (2018年7月26日). “From The Witcher 3 to Queer Dating Sims: How Writers are Expanding the Boundaries of Video Game Storytelling”. VG247. 2023年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g “Developer of indie hit Butterfly Soup talks sequel plans”. Rock Paper Shotgun. Gamer Network (2018年2月28日). 2018年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月1日閲覧。
- ^ a b Lei, Brianna (September 16, 2017). Art of Butterfly Soup
- ^ Lei, Brianna. “Butterfly Soup by Brianna Lei”. Itch.io. 2022年12月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ “Now available in Japanese and Brazilian Portuguese! - Butterfly Soup by Brianna Lei” (英語). itch.io. 2025年10月18日閲覧。
- ^ Lei, Brianna. “Butterfly Soup Web & Android Ports by Brianna Lei”. Itch.io. 2021年2月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月4日閲覧。
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- ^ “2018 Independent Games Festival announces Main Competition finalists!”. Game Developer. Informa (2018年1月3日). 2023年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
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- ^ “2017's most horrifying and heartfelt indie games”. Polygon. Vox Media (2017年12月14日). 2023年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ Petit, Carolyn (2022年11月8日). “Don't Miss One Of The Most Heartfelt (And Funniest) Games Of 2022”. Kotaku. Gawker Media. 2023年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月22日閲覧。
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- ^ Hearts, Rosy (2022年6月25日). “Best indie games that aren't on Steam”. Laptop Mag. Future. 2022年6月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月27日閲覧。
- ^ “Girls fall in love over baseball in one of the year's secret gems”. Polygon. Vox Media (2017年9月25日). 2023年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ Hernandez, Patricia (2017年9月27日). “In A Year Of Great Games, A Small One Called Butterfly Soup Stands Out”. Kotaku. Gawker Media. 2023年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年1月20日閲覧。
- ^ Castello, Jay (2022年10月31日). “Butterfly Soup 2 review: a heartfelt return of the gay baseball teens” (英語). Rock Paper Shotgun. Gamer Network. 2022年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月31日閲覧。
- ^ “Now available in Japanese! - Butterfly Soup 2 by Brianna Lei” (英語). itch.io. 2025年10月18日閲覧。
外部リンク
- 公式ウェブサイト - itch.io
- Butterfly Soup - ビジュアルノベル・データベース
- Butterfly Soupのページへのリンク