ASM-3とは? わかりやすく解説

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ASM-3

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/02 11:46 UTC 版)

ASM-3
XASM-3-E
種類 空対艦ミサイル空対地ミサイル
製造国 日本の旗 日本
設計 技術研究本部防衛装備庁
性能諸元
ミサイル直径 0.35m
ミサイル全長 6.0m
ミサイル重量 940kg[1]
射程 推定300キロ以上(ASM-3A)[2]
推進方式 インテグラル・ロケット・ラムジェット[3]
誘導方式 慣性/GPS誘導(中間段階) + アクティブ/パッシブ複合誘導(終末段階)
飛翔速度 最大マッハ3以上
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ASM-3は、防衛装備庁[4]三菱重工業[5]が開発した超音速空対艦ミサイル対艦誘導弾[6]。開発中はXASM-3と呼称されていた。2018年平成30年)1月に開発完了が報道されたが[7]、すぐには量産配備には至らず、さらに改良を加え射程が延伸されたASM-3A2021年令和3年)度に取得開始[8][9][10]、さらに射程延伸型のASM-3(改)の開発を2020年(令和2年)度から2025年(令和7年)度まで行う予定である[11]。2026年8月31日に発表された内容によれば、ASM-3改[12]はソフトウェアの変更により対空目標にも対応が可能となり、長距離空対空ミサイルとしても運用されることがわかった[13]

概要

ASM-3・ASM-3A

ASM-3は、従来の国産対艦誘導弾と比較して大幅に性能を向上させることで迎撃されない確率を高めて、防空能力が大幅に向上しつつある敵艦艇をより確実に撃破出来るミサイルとして計画された[14]F-2戦闘機で運用する事[15]を前提に、1980年代末より開発の検討が開始された[16]。2013年時点では、2016年(平成28年)度の開発完了を目指していた[14]

最大の特徴は、インテグラル・ロケット・ラムジェット(integral rocket ramjet、IRR)による推進系で、構造としてはラムジェットエンジンの後部に固体ロケットブースターが統合(integrate)されている。推進時にはまず固体ロケットブースターが作動してラムジェットの動作可能速度まで加速した後、固体燃料が焼失した後のロケット部分がラムジェットの燃焼室となる。これによりマッハ3以上で超音速飛行し、敵の迎撃可能時間を減少させている[16]。また、ステルス性を考慮した弾体形状にすることで被探知性を低下させ、アクティブ・レーダー・ホーミング方式とパッシブ・レーダー・ホーミング方式の複合シーカー方式を採用しECCM能力を向上させることで、敵艦艇をより確実に撃破出来るようになっている[16]。さらに敵艦艇の艦対空ミサイルより長射程化させ敵の迎撃可能範囲外から誘導弾を発射できるようにすることで、発射母機の安全性が高まっている。

当初は赤外線画像、アクティブレーダー、パッシブレーダーの3方式の併用を予定していたが、赤外線画像誘導方式に関しては、これを省いても命中率・破壊力には大差ないと見られたことから、開発経費削減のため削除された[16]。これにより開発経費が10%程度削減されたとされる。2002年時点では、XASM-3は旧式化した80式空対艦誘導弾(ASM-1)のみを置き換えるものとし、誘導方式が異なる(赤外線画像方式を採用する)93式空対艦誘導弾(ASM-2)と併用し、対妨害性を確保するとして開発が検討されていたが[17]、2009年時点ではASM-2の後継ともされている[15][14]。またASM-3Aは、ASM-2Bと同様に中間誘導にGPS誘導を用いているため、艦船だけでなく地上の目標や沿岸攻撃などの対地攻撃能力を持つ。そのため、敵基地攻撃能力の一つに十分なり得る。

2018年1月7日、XASM-3の計15回に及ぶ発射試験が終了し、2019年度から量産を開始することが報道されたが[7]、2018年度と2019年度の防衛予算に調達予算は計上されず、中国人民解放軍海軍艦艇の高性能化に対する射程の短さから改良型の開発が行われることとなり、2020年度から射程400km以上の射程延伸型のASM-3(改)の開発予算が計上される予定である[11][2]。ASM-3(改)はF-2戦闘機での運用を維持するために機体規模は変更せず、軽量化による射程延伸を予定している[11]。また、周辺国艦艇の高性能化に少しでも早く対応するため、ASM-3(改)の開発途中の成果を反映させ射程を延伸させたASM-3Aを量産し取得する予定である[8][9]。2024年度の予算においてASM-3A取得のために118億円が計上された[18]。 その後2025年度から航空自衛隊に配備開始と報道がされた[19]

なおASM-3(改)の開発と並行して、2019年度から2025年度にかけて、さらに高速なマッハ5以上の極超音速で飛行可能なスクラムジェットエンジンで飛行する誘導弾の要素技術に関する研究「極超音速誘導弾要素技術の研究」を行い[20][21]、2023年度から2031年度にかけて総額1,851億円かけて「極超音速誘導弾の研究」が行われる予定である[22]

ASM-3改[12]

2026年8月31日、防衛省から発表された令和9年度(2027年度)防衛予算概算要求[23]で取得整備の対象にF-2戦闘機の12式地対艦誘導弾能力向上型(空発型)搭載改修、JSMF-35A戦闘機搭載)、JASSMF-15戦闘機能力向上型搭載)、対レーダミサイルAARGM-ER)等の取得整備と共に「空対艦/対空ミサイル(ASM-3改)」の取得整備が盛り込まれた。

翌9月1日の森田雄博航空幕僚長の記者会見によると、企業との調整により、プログラム改修により、ASM-3改の長射程を生かしつつ、空対空ミサイルとして使用することが可能と確認されたとした。また、近年のAAM(空対空ミサイル)の射程は非常に伸びている状況で相互、彼我の関係からいってより長射程のミサイルが必要と判断した、とした。また、記者の「中国軍早期警戒管制機とか空中給油機などを含めて、より遠方で継続的に航空作戦を行う能力を強化しています。そのため、今回のASM-3改対空能力付与は、こうした相手方の航空作戦を支える目や航空支援の機能を遠方から無力化するための必要性」との質問に対して「一般論」と前置きした上で、否定するものではないと答えた。

開発経緯

ASM-3

F-2に搭載されたXASM-3
  • 1992年度(平成4年度)~2001年度(平成13年度)
    • 「将来空対艦誘導弾の研究試作」を行い超音速推進装置を試作[16]
  • 2002年度(平成14年度)
    • 2010年の実用試験を目指し、本開発開始を予定していたが、開発予算が承認されなかったため延期。
  • 2003年度(平成15年度)~2008年度(平成20年度)
    • XASM-3の開発を見据え、要素技術の一つである、IRRの小型化等を目的とした「超音速空対艦誘導弾用推進装置の研究・試作」を実施、F-2戦闘機からIRRを搭載した飛翔体の発射試験等を行う[16]
  • 2010年度(平成22年度)
    • 防衛予算で本開発である「新空対艦誘導弾(XASM-3)の開発」分の予算23億円が承認され開発を開始。今後総額325億円をかけ開発される予定[15][24]
  • 2014年度(平成26年度)~2015年度(平成27年度)
  • 2017年度(平成29年度)
    • 退役した海上自衛隊護衛艦「しらね」を艦型標的とし、実射試験が行われた[26][27]

ASM-3A

  • 2021年度(令和3年度)
    • 令和3年度予算に計上、取得開始予定[8][9]。2022年3月、ASM-3A(仮称)として三菱重工業と契約[10]。2024年度の予算においてASM-3A取得のために118億円が計上[18]。 2025年度から航空自衛隊に配備開始と報道[19]

ASM-3(改)

  • 2020年度(令和2年度)~2025年度(令和7年度)
    • ASM-3(改)の開発[11]
    • ソフトウェアの変更により長距離空対空ミサイルとしても運用される

出典

  1. Introduction to the Equipment of the Japan Self-Defense Forces A Reference Guide to the Defense Industrial Base of Japan (Edision 2)”. 防衛省. p. 48. 2020年11月6日閲覧。
  2. 1 2 “射程外から攻撃可能 空自ミサイル開発へ”. 読売新聞. 2019年3月17日. 2019年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ.
  3. 誘導武器の開発・調達の現状 平成23年5月 (pdf). 防衛省経理装備局 システム装備課. 2021年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月17日閲覧。
  4. 統合装備”. 防衛装備庁. 2019年6月17日閲覧。
  5. 空対艦誘導弾:ASM-3”. 三菱重工. 2026年9月2日閲覧。
  6. 長距離対艦ミサイル開発へ=中国念頭、20年度にも着手-防衛省”. 時事通信 (2019年3月24日). 2019年6月17日閲覧。[リンク切れ]
  7. 1 2 “超音速ミサイル:量産へ 国産「ASM3」、抑止力強化”. 毎日新聞. 2018年1月7日. 2018年1月7日時点のオリジナルよりアーカイブ.
  8. 1 2 3 新たな重要装備品等の選定結果について』(プレスリリース)防衛省、2020年12月25日2020年12月26日閲覧
  9. 1 2 3 JSF (2020年12月26日). “超音速対艦ミサイル「ASM-3A」の量産開始が決定”. Yahoo!ニュース. ヤフー株式会社. 2020年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2020年12月26日閲覧.
  10. 1 2 防衛装備庁 契約に係る情報の公表(中央調達分)令和3年度 月別契約情報/随意契約(基準以上)(Excelファイル)2022年3月31日契約分
  11. 1 2 3 4 令和元年度 政策評価 事前の事業評価 ASM-3(改)
  12. 1 2 2026年9月1日の航空幕僚長記者会見では改に()は付かなかったため原文ママで記載。
  13. ASM-3改に初の「対空」、AARGM-ERも取得要求 来年度防衛予算で「敵の目」への対処強化か”. 2026年9月1日閲覧。
  14. 1 2 3 平成25年行政事業レビューシート 新空対艦誘導弾(XASM-3) (pdf). 防衛省. 2013年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月17日閲覧。
  15. 1 2 3 平成21年度 政策評価書(事前の事業評価) 新空対艦誘導弾(XASM-3) (pdf). 防衛省. 2019年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月17日閲覧。
  16. 1 2 3 4 5 6 宮脇 2013
  17. 平成14年度 政策評価書(事前の事業評価) 新空対艦誘導弾(XASM-3) (pdf). 防衛省. 2019年8月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月17日閲覧。
  18. 1 2 令和6年度予算の概要
  19. 1 2 空自、ASM-3Aを今年度から配備開始
  20. “防衛省、極超音速ミサイル開発へ 敵基地攻撃能力懸念も:政治”. 東京新聞. 2018年9月19日. 2018年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ.
  21. 平成30年度 事前の事業評価 評価書一覧”. 防衛省. 2020年1月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月17日閲覧。
  22. 令和4年度政策評価(事前の事業評価)極超音速誘導弾の研究
  23. 防衛力の変革に向けた予算-令和9年度概算要求の概要-”. 防衛省 (2026年8月31日). 2026年9月2日閲覧。
  24. 政策評価書(要旨)(事前の事業評価)新空対艦誘導弾(XASM-3),平成21年10月
  25. 防衛装備庁技術シンポジウム2018発表要旨”. 防衛装備庁. 2024年11月1日閲覧。
  26. 艦型標的(その1)役務請負契約に係る公募の応募者募集要領
  27. 航空自衛隊航空開発集団パンフレット”. 航空自衛隊航空開発集団. 2022年7月25日閲覧。

参考文献

  • 宮脇, 俊幸「新空対艦誘導弾”ASM-3”」『軍事研究』第48巻第6号、ジャパン・ミリタリー・レビュー、2013年6月、38-50頁、 NAID 40019685606 

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