逆オッカムの剃刀とは? わかりやすく解説

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逆オッカムの剃刀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/15 19:15 UTC 版)

逆オッカムの剃刀(ぎゃくオッカムのかみそり、英:inverse Occam’s razor)とは、「ある事柄を説明するのに、シンプルな説明より複雑でエキゾチックな解釈が好まれる」という近年の学術界の傾向である。2022年に物理学者のイゴール・マジンによって提唱された。[1]

概要

イゴール・マジンは、逆オッカムの剃刀が起こる理由として、興味をそそられるような、ありふれたものでない解釈を載せた論文の方が、注目されるジャーナルに論文を掲載できることを挙げている。[注 1]

電子輸送現象の研究において、異常ホール効果で説明がつくが、原理的にはディラックコーン英語版によっても説明がつく現象が発見された場合、ほとんどの研究者は前者の説明を選ばない、とイゴール・マジンは指摘している。[注 2]

また、この逆オッカムの剃刀は、理論的な推測のない実験論文はネイチャー誌やサイエンス誌の査読に落ちやすいという傾向とも密接な関係にある。[注 3]

Sr2RuO4とp波超伝導体

Sr2RuO4に対する初期のNMR実験において、スピン三重項クーパー対を形成しているという仮説が1990年代末に誕生し、p波超電導という前例のない状態として注目を集めた。

その後、スピン三重項に反する証拠が積み重ねられたが、学会において無視されてきた。2020年に当初のNMR実験に欠陥があったことが直接証明されたことで、スピン三重項の可能性が完全に否定された。

脚注

注釈

  1. ^ 原文「What is at work here and now is a more pragmatic assumption - that a more exciting interpretation can get your paper published in a high-profile journal.」
  2. ^ 原文「Suppose you have measured a transport effect (such as anomalous Hall conductivity or linear magnetoresistance), which can, in principle, be attributed to Dirac bands – or to other bands, which are often present in the materials concurrently with the Dirac electrons, and carry a large part of the electron transport. You can bet 10 to 1 that the authors will push for the former explanation.」
  3. ^ 原文「This phenomenon of inverse Occam’s razor is intimately related to another relatively novel tendency: an experimental paper that reports observations without an interpretation has little chance to fly high. 」

出典

  1. ^ Mazin, Igor「Inverse Occam’s razor」『Nature physics』18巻4号、2022年

関連項目




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