単純性母斑
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/28 18:29 UTC 版)
単純性母斑(たんじゅんせいぼはん、英: Naevus simplex, 米: Nevus simplex)および火焔状母斑(かえんじょうぼはん、英: Naevus flammeus)は、新生児によくみられる良性の毛細血管奇形である。出生時に桃色から赤色の斑点として現れ、うなじ、眼瞼、口唇に好発する[1]。単純性母斑と火焔状母斑には異なる部分があるが[2]、曖昧な場合もある[1]。
徴候と症状
乳児血管腫とは異なり、単純性母斑は生誕時に既に存在する。その割合は22~40%[3]とも40~70%[4]とも言われており、白人に多い[3]。皮膚毛細血管の恒常的な拡張により生じており[4]、子供が泣いたり緊張したときに色が濃くなることがある[5]。皮膚に隆起や肥厚は見られない。
単純性母斑は境界やや不明瞭で平坦な淡紅~紅色であり、うなじに生じることが多い他、額、眼瞼、上唇部にも好発する[3]。稀に身体の他の部位にも発生しうる。一方で火焔状母斑は境界明瞭で、成長とともに紫褐色~暗赤色に変化する傾向がある。
単純性母斑では血管内皮細胞の増殖は見られないが交感神経細胞の減少が見られており、神経支配の減弱の結果毛細血管の緊張が低下していることが原因であると思われる[6]。
経過
単純性母斑(特に顔にあるもの)は自然消退しやすいと言われるが[7][8][9]、うなじにあるものは消退しにくいとされている場合もある[10][11]。対照的に火焔状母斑は成長とともに肥厚し、成人以降になると軟部組織や骨の過剰増生や結節形成を来す場合もある。
治療
単純性母斑の治療は通常必要ないが、消退しないものに対してはレーザー治療が実施される[12]。
呼称
単純性母斑や火焔状母斑は乳児血管腫と鑑別診断されるが、一方で単純性母斑と火焔状母斑の区別は曖昧な場合がある。
単純性母斑の中で身体の中央付近に位置するものを正中部母斑(英: Macular stain)、うなじにあるものをウンナ母斑(英: Unna naevus)と呼ぶ。その他、俗称として顔にあるものをサーモンパッチ(英: Salmon patch)、眉間や額の中央に位置するものを天使のキスマーク(英: Angel's kiss)、うなじにあるものをコウノトリの咬痕(英: Stork bite)と呼ぶ。
火焔状母斑は別名、単純性血管腫(英: Hemangioma simplex)またはポートワイン母斑(英: Portwine stain)とも呼ばれる[13]。
関連項目
出典
- ^ a b “Naevus simplex” (英語). DermNet® (2023年10月26日). 2025年6月26日閲覧。
- ^ Med-Peds, Brown (2021年11月30日). “Nevus Simplex vs Nevus Flammeus: Do You Know Which is Which? | Brown Med-Peds” (英語). 2025年6月25日閲覧。
- ^ a b c Fletcher, Mary Ann (1998). Physical Diagnosis in Neonatals. Philadelphia, PA, US: Lippincott-Raven. p. 151. ISBN 978-0-397-51386-4
- ^ a b Habif, Thomas P. (2016). Clinical Dermatology. Amsterdam, Netherlands: Elsevier. p. 913. ISBN 978-0-323-26183-8
- ^ Zitelli, Basil John; McIntire, Sara C.; Nowalk, Andrew J. (2012). Zitelli and Davis' Atlas of Pediatric Physical Diagnosis (6 ed.). Philadelphia, PA, US: Elsevier Saunders. p. 351. ISBN 978-0-323-07932-7
- ^ Gelmetti, Carlo (2018-03). “Vascular Birthmarks: A Hidden World behind a Word” (英語). Indian Journal of Paediatric Dermatology 19 (1): 1. doi:10.4103/ijpd.IJPD_124_17. ISSN 2319-7250 .
- ^ “おしえて!サーモンパッチの原因とレーザー治療のこと | 赤ちゃん・子供のあざ治療なら|最新レーザー治療×形成外科専門医の大阪梅田形成クリニック” (英語) (2022年3月28日). 2025年6月27日閲覧。
- ^ “サーモンパッチ | あざ治療の専門クリニック|西堀形成外科”. www.aza-nishihori.com. 2025年6月27日閲覧。
- ^ “東京(文京区)で単純性血管腫(サーモンパッチ・ウンナ母斑)の治療を検討している方へ|皮ふと子どものあざクリニック茗荷谷”. 東京(文京区)で単純性血管腫(サーモンパッチ・ウンナ母斑)の治療を検討している方へ|皮ふと子どものあざクリニック茗荷谷 (2025年1月26日). 2025年6月27日閲覧。
- ^ “ウンナ母斑 | 赤ちゃん・子供のあざ治療なら|最新レーザー治療×形成外科専門医の大阪梅田形成クリニック” (英語) (2021年10月4日). 2025年6月27日閲覧。
- ^ “血管腫(あかあざ)のやさしい解説|日本医科大学武蔵小杉病院”. www.nms.ac.jp. 2025年6月27日閲覧。
- ^ “アザとホクロ Q14 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)”. www.dermatol.or.jp. 2025年6月27日閲覧。
- ^ 『あたらしい皮膚科学 第3版』中山書店、2018年1月、21-22頁。 ISBN 978-4-521-74581-7 。
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