聖遺物 聖俗の権力者と聖遺物

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聖遺物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/12 05:02 UTC 版)

聖俗の権力者と聖遺物

十字軍による略奪

11世紀末から13世紀にかけて、十字軍は多くの聖遺物を西ヨーロッパに持ち込んだ。宗教指導者たちは教会や修道院の略奪を禁止していた。だが第4回十字軍(1202年 - 1204年)の攻撃によりコンスタンチノープルが陥落し、何世紀もの間その大量の聖遺物の所蔵地として有名だったビザンツ世界の首都の門が開かれると、数多くの信徒や聖職者が教会に押し入り、略奪した聖なる品物を西方へと持ち去った[4]。これら「敬虔な盗人」には次の聖職者が含まれる。

権力者の聖遺物収集

中世においては、価値ある聖遺物を所有することは、単に信仰心からくるだけでなく、政治・経済的な意図が働いて高額で取り引きされることも多かった。例えば、信仰心の強かったフランスルイ9世は、キリストのかぶったという「イバラの冠」や「聖十字架」を高額で買い求めたと言う。キリスト教会が聖遺物の分与を通じてキリスト教の勢力を拡大し、ヨーロッパに残っていた異教の習慣をキリスト教化しようとしたのに対し、世俗の権力者はキリスト教の権威によってみずからの権威を確立し、贈答を通じて他の権力者との間に友好関係を結ぶために聖遺物を活用した。13世紀以降、聖遺物の認定や移動に対する教皇庁の統制が強まるが、これはキリスト教会の中央集権化とかかわっている。


  1. ^ 17世紀にはルーアンの聖職者マチュー・ド・ラロック Matthieu de Larroque (1619-1684) が著した『聖体拝領の歴史』(1671年)には「10世紀以来聖別(パンと葡萄酒をキリストの血と肉へと変える聖変化)の儀式に必要とされる手順は増加し」、それは当時の典礼定式書に記載されている通りとなったと書かれている。そしてその記述によれば「司祭はミサにおける聖体の聖別を執り行う前日に、すべての聖遺物を聖別を行う祭壇の中に安置しなければならない」とある (M. de Larroque, Histoire de l'Eucharistie, divisée en trois parties, dont la première traite de la forme de la célébration, la seconde de la doctrine, et la troisième du culte. Seconde édition, revue et corrigée, Amsterdam 1671, p. 80-81.)。
  2. ^ 柏木 2015, pp. 191–194, 204–212.
  3. ^ この聖遺物略奪正当化の論理はアルビジョア十字軍が緒戦においてかかげた「神はおのれの者を知りたまう(異端者でないものは神がお守りになるはずである。ゆえに十字軍は相手が異端者であるかどうか気にする必要はない)」に通じる論理であるといえる。
  4. ^ A. J. Andrea, B. E. Whale, B. E. Whale, Contemporary Sources for the Fourth Crusade, Leiden, 2000, p. 226.
  5. ^ KONRAD von Krosigk († 1225)(ドイツ語) – Biographia Cisterciensis
  6. ^ Martin of Pairis(英語) - The Crusades
  7. ^ Jerome, Ad Riparium, i, P.L., XXII, 907.
  8. ^ The Catholic Source Book A Comprehensive Collection of Information about the Catholic Church ISBN 0-15-950653-0
  9. ^ The ''Code of Canon Law''”. Vatican.va. 2013年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月4日閲覧。
  10. ^ Venerating Relics at Mass”. 2018年5月22日閲覧。






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