油井 ポンプ採油

油井

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/08 06:27 UTC 版)

ポンプ採油

自噴しない油層からオイルを汲み上げる方法の1つはポンプを使用する事である。 採油するためのポンプには、いくつかの種類がある。

サッカーロッド・ポンプの概略図
1.エンジン 2.減速ギヤ 3.クランクアーム 4.ヒットマンアーム 5.ビームウェイト 6.ワーキングビーム 7.ホースヘッド 8.サッカーロッド 9.チュービング 10.ポンプ 11.送油管[5][3]
サッカーロッド・ポンプ

地上に往復運動をする装置を設置して、サッカーロッドを経由してパイプの底のピストンを駆動し、原油を汲み上げる。ポンプジャック、ビームポンプとも呼ばれる。1800年頃から登場し、2008年の現在でも使用されているが、徐々に他のより効率の良い方法に変わってきている。

サブマーシブル・ポンプ

水用の井戸と同様にパイプの底にポンプを沈め、原油を汲み上げる。

ガスリフト・ポンプ

二重になった内部のパイプからパイプ先端へガスを吹き込み、ガスの圧力と上昇力を利用して、外側のパイプで底から原油を押し上げる。ガスは再利用される。日本では一般的な方法。

ハイドローリック・ポンプ

地上から原油を二重になった内部のパイプに圧力をかけて送り込み、この力で先端部のピストン・ポンプを上下に駆動して外側のパイプで底から原油を押し上げる[3]

蒸気注入英語版

掘削技術

トップドライブ方式

ロータリー・テーブルとケリーパイプを使わずロータリースイベルの下に減速機付き電動モーターを備えたトップドライブ方式が使用されている。このトップドライブ方式によって従来、1本の掘削パイプの継ぎ足しごとに掘削が停止されていたが、掘削パイプが3本程度が1つにつなげられているため作業の手間と時間が3分の1に削減できる。

傾斜掘り、水平掘り

「傾斜掘り」と「水平掘り」は、21世紀初頭の現在では当然のように使用されている掘削技術である。

従来方式では曲げたい箇所にくると、掘削先端に鋼鉄のクサビ型ブロックを置いてドリルの方向を変えたが、21世紀の現在では元々10度ほど屈曲したドリル先端部を使って屈曲部を掘り進む。このドリルは加圧された泥水の流れによって回転力が作られるダウンホール・タービンのため、直線掘りにしたい場合は地上から先端を含むパイプ全体をゆっくり回転させることで屈曲掘りを避けることが出来る。掘削中に屈曲部を作ることで傾斜掘りとなり、更に屈曲を行なえばドリルの掘り進む方向が水平方向となって水平掘りになる。

傾斜掘りと水平掘りによって、目的の油層の直上に住宅地があろうと、場合によっては他国の領土であっても、近くの地上から掘り始めて地下で横方向に掘る進めることが出来る。一本の垂直孔に対して複数の穴をあける「マルチラテラル」と呼ばれる方法にも使用されている[4]

特殊な掘削

ダイヤモンド・コンパクト・ビット

新たな「ダイヤモンド・コンパクト・ビット」(Diamond compact bit)が登場している。従来のドリル・ビットは分割された円錐ギヤが回転していたが、新型ビットでは耐摩擦性の高い16分の1インチ厚の合成ダイヤモンドでコートされた先端部は固定されている。従来ビットが約1万ドルで新型ビットが約10万ドルであっても、1つのビットで6000フィートを一気に掘れるため、従来のビット交換のための時間と人件費が節約出来るので経済的となっている[4]

コイル・チュービング・リグ

「コイル・チュービング・リグ」(Coil-tubing rig)も比較的新しい技術である。これまでのようにまっすぐな鉄管を何度も継ぎ足しながら地下へと伸ばしてゆく手間を一気になくし、掘削管は大きなリールに巻き取られた長い屈曲したものとなっている。従来の「ロータリー式」では地上から続く長大なパイプ全体が強力なモーターによって回されていたが、本方式ではチューブ自身は回転せず、地上から圧送された泥水の流れによってダウンホール・タービンを回し、これによって先端にあるビットだけが回転する。21世紀初頭現在のところ、全ての掘削に使えるほど改良が進んでいるわけではないが、すでに一部の油井での利用においてよい結果が出ているとされる[4]


  1. ^ 藤和彦著 『石油を読む』 日本経済新聞社 2005年2月15日1版1刷発行 ISBN 4-532-11056-4
  2. ^ a b c 著者表記なし 『知っていますか石油の話』 化学工業日報社 1997年2月14日改訂第5版発行 ISBN 4-87326-235-6
  3. ^ a b c d e f g h 山崎豊彦著 『オイルフィールド・エンジニアリング入門』 海文堂 初版 ISBN 4-303-73420-9
  4. ^ a b c d e f g ケネス・S・ディフェス著 秋山淑子訳 「石油が消える日」 パンローリング株式会社 2007年8月5日初版第一刷発行 ISBN 978-4-7759-7088-1
  5. ^ a b c 小西誠一著 『石油のおはなし』 日本規格協会 第1版第1刷 ISBN 4-542-90229-3


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