東武デハ5形電車 車体

東武デハ5形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/04 07:59 UTC 版)

車体

前述のように、用途ならびに製造時期の相違によってその仕様は多岐にわたっているが、全長16,852mm・全幅2,714mm・客用扉幅910mm・側面窓幅610mmの主要寸法は全車とも統一されている[4][5][9]。構体主要部分に鋼板を使用し、リベット組立工法と溶接工法を併用して組み立てられた半鋼製車体は全車とも同一であり、また半鋼製車体ながら本系列に先行して新製された大正15年系同様に木造車のように車体裾部が切り上げられた構造となっており、台枠が外部に露出している点が特徴である[注釈 2]。また、台枠補強用のトラスロッド(トラス棒)が車体中心寄りに設置されたことによって外部から見えなくなった点が大正15年系とは異なる。その他、深い屋根と広く取られた腰板寸法、小ぶりな一段落とし窓方式の側窓も相まって、やや垢抜けない鈍重な印象を与える外観を呈している[10]。車体塗装は全車とも当時の東武における標準塗装であった茶色一色塗りである。

また、本系列の特徴の一つに独特の運転台配置がある。両運転台構造の車両においては、一端の妻面が中央に全室式運転台を備えた非貫通構造であるのに対し、他方の妻面は片隅式運転室を右側に、貫通路を挟んだ向かい側に車内トイレをそれぞれ配した貫通構造であるという、前後非対称の設計が採用され、東武においては全室式運転台側を「正運転室」、片隅式運転台側を「副運転室」と称した[4][5][11]。もっとも、本系列中最初期に落成した4両のみは正運転室側妻面も貫通構造とされており、運転台位置は副運転室側と異なり左側に設置されていたほか、電動車(デハ)の一部や制御車(クハ)については副運転室を設けず、片運転台仕様で落成した車両も存在する[4][5]

車内はロングシート仕様の車両が大勢を占めていたが、一部にセミクロスシート仕様で落成した車両も存在し、大半の車両に設置された車内トイレの存在とともに、本系列が当初より中長距離運用を主眼として設計されたことが窺える[4][5][11]。クロスシート仕様の車両については、戦中の輸送量増加に伴って後年全車ともロングシート化改造が実施された[12][13]

なお、用途ならびに製造時期の相違による構体設計の相違点については、下記グループ別詳細において詳述する。


注釈

  1. ^ a b 本系列の製造年代を考慮すると、落成当初はES500番台(東洋電機製造の独自開発モデルに付される型番)ではなくES150番台(イングリッシュ・エレクトリック社のライセンス製品に付される型番)の制御器が搭載されていたと推定されるが、落成当初の搭載機器が不明であるため、本項では晩年搭載した制御器の型番を記載する。
  2. ^ a b 1927年(昭和2年)から翌1928年(昭和3年)にかけて落成した汽車製造製の車両のみ、車体側面裾部の切り込みがないという特徴を有する。
  3. ^ 一部の車両については副運転室が設置されていない片運転台仕様で落成したとする資料も存在し、特にデハ35・36については副運転室付近にロングシートの撤去跡が存在したと指摘されている。
  4. ^ デハ21 - 36についても落成当初は正運転室側妻面も貫通構造であり、後述合造車化改造に際して同時に非貫通化改造が実施されたとする資料も存在する。
  5. ^ a b c d e 前期合造車型クハユ3ならびに後期合造車型デハ90は、いずれも汽車製造において焼損車体をそのまま修繕する形で復旧工事が施工されたが、出場時に両者の車番の振り替えが実施された。これはデハ90が荷物室を存置したまま復旧工事が実施されたのに対し、クハユ3は復旧工事に際して荷物室を撤去されたことによるものであるが、同改番は汽車側の手違い、すなわち荷物室を存置したデハ90と荷物室を撤去したクハユ3を取り違えたことによって生じた錯誤が原因であると指摘する資料も存在する(『鉄道ピクトリアル 第115(1961年2月)号』 pp.50・52)。なお、「デハ90」として竣功したクハユ3、「クハユ3」として竣功したデハ90とも、現車はいずれも動力を持たない制御車であり、後年の大改番まで車番の修正が実施されることなく運用された。
  6. ^ 事故被災等による復旧名義であると推測されるが、詳細は不明である。
  7. ^ 残る1両はクハ430形434であった。
  8. ^ モハ3210形を例に取ると、1961年(昭和36年)3月当時に東上線へ配属されていた19両(モハ3210 - 3228)については、全車とも副運転室・トイレならびに副運転室側パンタグラフ撤去が施工されており、モハ3210 - 3217については前面貫通構造化も施工済であった。一方で同時期の本線所属車両については、前述接客設備改善工事を施工された6両(モハ3230 - 3233・3235・3236)を除くと、モハ3239・3247の2両に対して副運転室・トイレの撤去が施工されていたのみであり、前面貫通構造化を施工した車両は存在しなかった。
  9. ^ モニ1170を名義上の種車として製造された3000系サハ3682(後サハ3212)は心皿荷重制限の都合上種車の装着したブリル27-MCB-2を流用せず、予備品の省形釣り合い梁式台車TR11を装着した。

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