小山亮 「天罰発言」事件

小山亮

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/27 06:07 UTC 版)

「天罰発言」事件

戦争末期の1945年6月11日の衆議院戦時緊急措置法案(政府提出)委員会で質問に立った際、2日前の本会議で鈴木貫太郎総理大臣が演説の中で、1918年の訪米時に「太平洋は名の如く平和の洋にして日米交易のために天の与えたる恩恵である、もしこれを軍隊搬送のために用うるが如きことあらば、必ずや両国ともに天罰を受くべしと警告した」というエピソードを紹介したことについて、国民は詔勅にある「天佑」という言葉を信じて戦っているのだから、天罰を受けるという考えは毛頭持っていないと思う」という見地から、天罰を受けるという言葉を残すことは戦争を遂行する国民に悪い影響を与える懸念があるとして、それを打ち消す釈明を鈴木に求めた[10]。この際小山は「私は言葉の咎め立てなんということは大嫌いな人間なんです。(中略)人の言質を取った、挙足を取ったということはありませぬ。だから私はそのことを言うのではない」と述べている[10]。だが、鈴木の釈明に対して議場は騒然となり、小山も「聞き逃すことはできない」と述べ、6時間もの休憩を取ってから再開された[10]。鈴木は前の釈明を取り消して改めて見解を述べたが、小山は鈴木の答弁内容に納得せず、再度の返答を求めた。政府がこれ以上答弁しないと委員長の三好英之に伝えられると、答弁すらできない内閣に質問はしないと述べてそれ以上の質問を打ち切り退席した(天罰発言事件[10]

小山は発言の最後で「総理大臣に聞いていただきたいことがある」と切り出し、敗勢濃厚なときに信頼できる内閣がなければ国民は戦えないのになぜ小手先の答弁をするのかと述べ、「国民は真実を求めているんです。真実に飢えておる。ごまかしばかりで勝った勝ったと言いながら、沖縄まで失わなければならぬような、そういうごまかしは国民は求めておりませぬ。どうかもしこの重大なる時局を担当するとするならば、本当に担当のできる内閣が日本に出てもらいたいと私は思っております」と政府の姿勢を痛烈に批判した[10]

小山の所属する護国同志会は、鈴木の演説や小山の質問に対する答弁を「不忠不信」と批判する声明書を発表しているが、これは徹底抗戦の立場からの倒閣運動の一環とみられている[11][12]


  1. ^ a b c d e f g h i j k 杉本恒「弔詞」『鳥羽商船同窓会報』1973年号、pp.14 - 15 [1]。筆者は小山の葬儀委員長
  2. ^ 本校ゆかりの人物 - 弓削商船高等専門学校[リンク切れ]
  3. ^ 卒業年について、「弔詞」は「大正7年」(1918年)と記す。
  4. ^ 『海と安全』1968年1月号 - 日本海難防止協会。18 - 19頁に掲載された「海陸両生の来歴」と題する小山の文章に言及がある。
  5. ^ 小山 亮 - コトバンク(出典は『新訂 政治家人名事典 明治~昭和』日外アソシエーツ、2003年)
  6. ^ 横関、2005年6月
  7. ^ 横関(2005年)では「国民教育振興議員連盟」と記載。
  8. ^ 横関、2005年7月
  9. ^ 三輪史郎「「全船協の歩みと今後」」『全船協』125号、全日本船舶職員協会、2014年5月
  10. ^ a b c d e 衆議院第87回戦時緊急措置法案(政府提出)委員会議録第三回 - 4ページ以下を参照。
  11. ^ 横関、2008年
  12. ^ 保阪正康『本土決戦幻想 コロネット作戦編』〈昭和史の大河を往く 第八集〉毎日新聞社、2009年、p.146。出典は横関(2008年)でも引証されている中谷武世の『戦時議会史』(民族と政治社、1974年)である。


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