ヴォルガ川 民族

ヴォルガ川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/22 19:49 UTC 版)

民族

クストヴォ付近のヴォルガ川、水浴場
アストラハンのヴォルガ川の港

ヴォルガ川・オカ川の上流域の先住民はフィン・ウゴル語派の民族、メリャ人(Merya)であったが、東スラヴ人ルーシの北東の方へ進出してヴォルガ川に達し勢力を広げた。10世紀ごろにはメリャ人はロシア人に同化したと思われる。その他のフィン・ウゴル語派民族は、ヴォルガ中流域に暮らすマリ人(チェレミス人、現在はマリ・エル共和国を構成する)やモルドヴィン人などがいる。

テュルク系の民族は紀元600年ごろヴォルガ流域に現れ、ヴォルガ川の中・下流域にいたフィン・ウゴル語派民族やインド・ヨーロッパ語族の民族を同化した。この子孫がキリスト教徒で現在チュヴァシ共和国を構成するチュヴァシ人、およびムスリムタタール諸民族である。

またモンゴル帝国侵入とともにモンゴル人も多く移住したが、ヴォルガ下流域からカフカス北部を支配したノガイ・オルダの末裔であるモンゴル系ノガイ人は後にダゲスタン人に取って代わられた。17世紀には仏教徒でモンゴル系民族のオイラトがヴォルガ下流に移住しロシア帝国と同盟したが、後にロシア人やドイツ人らに圧迫され中央アジアに戻っていった。このうち戻れなかった人々が、現在ヴォルガ川の西側にあるカルムイク共和国に住むカルムイク人である。

ヴォルガ川沿岸地方はドイツ系少数民族、ヴォルガ・ドイツ人の故郷でもある。エカチェリーナ2世は1763年に、さまざまな報酬を申し出た上で、すべての外国人に対しヴォルガ川流域に来て定住するよう招待する勅令を発した。これは沿岸地域の開発という目的もあったが、ロシア帝国と東側のモンゴル系国家(ジョチ・ウルスの末裔の国々)との間に緩衝地帯を形成する目的もあった。フランス人やイギリス人農民はアメリカへの移住を選び、ロシア帝国の呼びかけに応えたのは貧しいドイツ農民たちであった。ドイツ人の人口は19世紀末には179万に達したが、ロシア革命とその後のロシア内戦によりボリシェビキなどの敵視を受け多くの人口が失われた。ソビエト連邦の下でヴォルガ沿岸の一部にヴォルガ・ドイツ人自治ソヴィエト社会主義共和国が設立されたが、第二次世界大戦前後にその全てが中央アジアなどに移住させられるか処刑され、以後もほとんどの人々はヴォルガ川沿岸に戻ることはなかった。


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