レコーディング・エンジニア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/06 07:51 UTC 版)
一般的な雇用形態
日本におけるレコーディング・エンジニアの雇用形態はいくつかのパターンに分類できる。一般的な例として、録音スタジオや音楽制作会社などが社員として直接雇用契約をむすぶ形態であり、古くからこの形を取るケースが多い。他には、エンジニア集団が作った組織やエンジニア派遣会社などに所属して契約関係にあるスタジオなどから派遣要請されたり、原盤制作者側やアーティスト側からの依頼を受けて雇用される形態がある。日本国内では1970年代後半からそのような雇用形態が増えてきたが、スタジオやエンジニア集団に所属せず、フリーランス・エンジニアとして独立した屋号を持ち、個人で活動するエンジニアとして存在する形態もあり、原盤制作者側やアーティスト側と組織対個人間で契約を結び雇用関係をとる形態もある。
職に就くまでの一般的な流れには、音響系専門学校あるいは大学などを卒業した後にレコーディング・スタジオやレコード会社または音楽制作会社などに就職して、アシスタント業務としての見習いから始める例が多いが、時代と共にパーソナルコンピュータを運用システムの中心としたDAWやプライベート・スタジオなどでのワンマン・オペレートが主流になってきたため、スタジオや音楽制作会社等へ就職してのアシスタント業務などを経験せずに最初からレコーディング・エンジニアとして職に就く形態も出てくるようになった。または、音楽家が作曲及び編曲の段階からDAW上で全ての作業が完結することもあり、否応なしに自身でDAWの操作をしなければならないケースも多くなり、この分野からレコーディング・エンジニアに転身するケースもある[注 7]。
Pro ToolsなどをDAWシステムとして使用するレコーディング・セッションが多くなってきた事により、それまでと比べてアシスタント・エンジニアの作業量が減ってきたり、要求される作業内容がテープレコーダーなどのオペレーションから推移し、コンピュータ・オペレーション上でのリージョン・ファイル編集操作などが増加するなど多岐にわたってきた。
レコーディング・エンジニアからマスタリング・エンジニアに転身・または兼業する人は相応の割合で存在するが、逆のケースはレコーディング経験やスタジオでのコミュニケーションの取り方が異なるなど、様々な理由から困難が伴う事もあり、兼業も含めてあまり存在していない[注 8]。そして、レコーディング・エンジニアとしての女性の就業比率は長時間労働などの面から、以前はあまり多く存在しなかったが、1990年代以降は比率的にもどんどん増えてきていて、長時間や重労働を伴うイメージなども払拭されてきたせいか、レコーディングやミキシングをクリエイティブな面として捉えられた状況になりつつもある。また、歌手や音楽家側が女性である場合などにおいて、女性エンジニアとの作業を希望するケースもあるため、そう言った面からも女性のレコーディング・エンジニアとしての進出は増えてきている。
注釈
- ^ 単に「エンジニア」または「ミキサー」と呼ばれることもある。
- ^ エンジニアの立場に飽き足らず、エンジニアリングと兼務してプロデューサーやディレクターとして活躍の場を広げる人もいる。
- ^ 従来は稀な例であったが、近年では安価で高音質なDAWなどのデジタル録音機器が普及したことで、低予算のプロジェクトではアーティストやアレンジャーなどがエンジニアリングを兼務することも多くなっている。エレクトロニカのような音楽と音響が一体化したDJ分野でも同様である。
- ^ 詳しくは録音を参照。
- ^ 詳しくはミキシングを参照。
- ^ 詳しくはマスタリングおよびマスタリング・エンジニアを参照。
- ^ これは様々なハードウェアで構成されているミキシング・コンソール及びその他周辺機器の電気的知識や操作方法を熟知していなくても、DAWインターフェース内に展開されるソフトウェア上のミキシング・コンソール操作は可能になる状況から、一般的なスタジオでのレコーディング・エンジニアリング経験が無くともレコーディングやミキシングがDAW上で容易に行えるようになってきたという背景もある。
- ^ 数少ない例としては、日本では杉本一家(JVCケンウッド・クリエイティブメディア。マスタリングと兼業)など。
出典
- ^ “大学における実践的な技術者教育のあり方に関する協力者会議(第3回)検討課題(案)”. 文部科学省 (2009年12月7日). 2018年10月5日閲覧。
- ^ “第5回 米国 エンジニアとテクニシャン”. 連載:[海外]グローバル体験. 一般財団法人 アーネスト育成財団. 2018年10月8日閲覧。
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