リバティ L-12
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/19 08:48 UTC 版)
派生型
- V-1650
リバティ L-12を倒立配置としたもので、パッカードで1926年まで生産された。
紛らわしいことに、第二次世界大戦中にパッカードがロールス・ロイスからライセンスを受けて生産したマーリンもほぼ同じ排気量であったため、同じ名前 (パッカード V-1650 マーリン) が付けられた[11]。こちらはP-51 マスタングに搭載されて大成功を収めたエンジンであるが、両者は排気量以外はまったく別物である。
- アリソン VG-1410
アリソン VG-1410はリバティ L-12を空冷化し、倒立させたモデルである。機械式スーパーチャージャーを備え、プロペラは遊星歯車を介して駆動していた。ボア径を 4+5⁄8 in (120 mm)に縮小し、排気量を1,411 in3 (23.12 L)に抑えていた[12][13] 。
- リバティ L-6
直列6気筒としたモデルで、「リバティ・シックス」と呼ばれた。その外見は、ドイツが第一次世界大戦中に完成させた直列6気筒の航空エンジン、メルセデス D.IIIやBMW IIIとそっくりであった。
- リバティ L-8
V型8気筒としたモデルで、排気量は18.02リットル、バンク角は90°になっている。
- ミクーリン M-5
- ソ連で製造されたライセンス生産品もしくは模倣品。
- ナッフィールド・リバティ
ナッフィールド・リバティは戦車用エンジンで、第二次世界大戦に際してイギリスの自動車メーカー ナッフィールドでライセンス生産されたものである。初期の巡航戦車やクルセーダー巡航戦車、 キャバリエ巡航戦車、セントー巡航戦車に採用された。 排気量27 L(1,649 in3) で出力 340 hp (250 kW; 340 PS) という性能は、戦車の重装甲化とそれに伴う車重増大に対応しきれず、冷却や信頼性の面でさまざまな問題を抱えていた[14]。
ナッフィールド・リバティには以下の複数のバージョンがあった[15]。
- Mk.I: アメリカ製のエンジンをイギリスで改修したもの。吸気系とキャブレターをソレックス製のものに変更し、クランクケースブリーザーやタイミングギアが見直され、クランクシャフト端出力が向上している。1,500rpmで340 hp (250 kW; 340 PS) を発揮した。
- Mk.II: イギリス製で、始動用エアコンプレッサーは使用しない。後期型ではエアコンプレッサーは撤去された。
- Mk.III、IIIA、IIIB: クルセーダー巡航戦車に搭載するにあたり、エンジンベイの高さ制約に合うようにオイルポンプの再設計と冷却水ポンプの移設が行われた。空気圧式のブレーキと操向機の採用に合わせてエアコンプレッサーが再度搭載された。北アフリカ戦線の砂漠で大きな問題がいくつか起きたため、Mk.IIIは何度か改良された。3種類でそれぞれ補助空冷ファン駆動用チェーン周りの設計は異なっており、この他にバルブ調整機構の見直しや圧縮比の向上、給油系の見直しや冷却水ポンプの交換が行われた。
- Mk.IV: 空冷ファンの駆動軸が追加され、交換に手間のかかるチェーンが廃された。エアコンプレッサーはより低速で駆動するよう改められた。
- Mk.IVA: 回転数の上限を1,700rpmに上げることで出力を 410 hp (310 kW; 420 PS) に高めたモデルで、キャバリエ巡航戦車に搭載するためインテーク・マニホールドとキャブレターが新規に設計された。
- Mk.V: Mk.IVAと同出力を発揮するよう再設計されたモデルで、セントー巡航戦車に搭載された。油分配系統が見直されたが、回転数の上限は1,700rpmで据え置かれた。元はクロムウェル巡航戦車に搭載される予定であったが、そちらにはロールス・ロイス ミーティアが採用され、同じ車体にMk.Vを搭載したものはセントー巡航戦車として別に生産された。
- ^ Trout, Steven (2006). Cather Studies Vol. 6: History, Memory, and War. University of Nebraska Press. pp. 275–276. ISBN 0-8032-9464-6
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- ^ Vincent 1919, p. 400.
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- ^ “Liberty V12 Engine”. darwinsairwar.com.au. Darwins Aviation Museum. 2017年1月29日閲覧。
- ^ “Liberty 12A V-12”. New England Air Museum. 2013年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月30日閲覧。
- ^ “Cole Palen's Old Rhinebeck Aerodrome - Aircraft Engines - Page 4 - Liberty”. oldrhinebeck.org. Rhinebeck Aerodrome Museum. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月22日閲覧。 “Produced in large numbers and used extensively in mail planes following the War, the Liberty was a significant U.S. contribution to aviation. Jesse Vincent of Packard and E.J. Hall of Hall-Scott designed the engine in five days. One month later the first prototype was built and running.”
- ^ Grey, C.G. (1969). Jane's All the World's Aircraft 1919 (Facsimile ed.). David & Charles (Publishing) Limited. pp. 1b to 145b. ISBN 0-7153-4647-4
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