ラリー
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ラリーの種類
ラリーは順位決定の主要素によって競技方法が異なり、大別して速さを重視するラリーと、走行の正確さを重視するラリーに分けられる。日本自動車連盟 (JAF) の国内ラリー競技開催規定では前者をスペシャルステージラリー、後者をアベレージラリー(第1種・第2種)と定義している[6]。
スペシャルステージラリー
最高峰の世界ラリー選手権 (WRC) を始めとする現代の主なラリーは、SSにおけるタイムトライアルを主体としている。数日間の合計タイムによって純粋な速さを競う。「スプリントラリー」とも呼ばれる。
通過確認地点はチェックポイントではなくタイムコントロール (TC)と呼ばれ、サービス地点の出入り口や、各SSスタート地点の手前に設けられる。シークレット方式のアベレージラリーと異なり、走行ルートやTCの位置は事前に公開されており、SSを制限速度内で予習走行(レッキ)することも認められている。
競技者はSSスタート前に次のTCまでの目標到着時間(ターゲットタイム)を知らされ、オフィシャルのカウントダウンでタイムトライアルを開始。レッキ時に作成したペースノートを頼りにSSを全力走行する。フィニッシュ地点を全開で駆け抜けた後停車し、TCカードにタイムを記入される(区間タイムはスタート/フィニッシュ地点の光電管で計測される)。その後、ロードブックに従い移動区間(ロードセクションまたはリエゾン)を走行して次のTCに到着し、またSSタイムトライアルを行うという流れを繰り返す。全ルート終了後に、SS走行タイムの積算が少ない順に順位が決定する。
ロードセクションは次のTCに余裕を持って到着できるよう時間設定されており、TCの手前でチェックイン時刻を待つことができる[注 2]。ただし、SSでのタイムロスやロードセクションの交通渋滞などによってTCへの到着が遅れると、1分あたり10秒のペナルティを受ける(早着は1分あたり1分のペナルティ[注 3])。日本国内の競技では一般道の制限速度や通行量を考慮して、SSが極端に遅くてもロードセクションを急がないで済むようなルールが採用されている[7]。
アベレージラリー
「タイムラリー」「ロードラリー」とも呼ばれる。日本では長年に渡りメインのラリー方式であり、全日本ラリー選手権も2005年まではこれを採用していた。現在も地方のラリーイベントではよく見られる。
第1種アベレージラリー
指定区間を指示された平均速度で走行し(リライアビリティラン)、その所要時間の正確さを競う。
競技者はラリー当日に配布されるロードブックに記された道のりを、指示された平均速度で走行する。コマ図にない交差点や分岐路は直進(道なり走行)が原則。途中に指示速度変更地点(パスコントロールポイント、PC)が設けられる場合もある。実際は道路状況によって走行ペースが変動するので、ナビゲーターが常に指示速度と自車の平均速度のずれを計算し、ドライバーにペースアップ/ペースダウンを指示する。
ルートの途中には何箇所か通過確認地点(チェックポイント、CP)があり、それぞれ所要時間(=走行距離÷指示速度)が設定されている。競技車両はここで一時停車し、自車の通過時刻が記されたチェックカードを受け取る。チェックポイントは路面に白線などで表示されるが、その場所はロードブックには記されていない(ブラインドチェック)[注 4]。
ルートを完走した時点でチェックカードを集計し、CPごとに早遅誤差(ファイナルタイム)に対して減点を受ける。減点はイベントによって「1秒あたり1点」か「1分あたり1点」という換算方式がある。その他に、給油や修理を行なうサービス地点(レストコントロールポイント、RC)で制限時間をオーバーした場合なども減点対象となる。これらの減点の総計が最も少ない者が勝者となる。走行状態の正確な把握、チェックポイント出現場所の予想など、経験やナビゲーターの実力が大きく成績に関わることが多い。
誤差の修正
ロードブックに記載されている走行距離はオフィシャルの計測車両が事前走行した際のデータによるものだが、競技車両との間にはトリップメーター誤差が発生する。これはタイヤの減り具合や空気圧、トリップメーターの製造時誤差などに起因し、そのまま競技を行うと、それぞれ車に計測距離の違いが生じる。これを修正するため、スタート地点からある程度の距離にオド・メーター・コントロール・ポイント (OMCP) と呼ばれる地点が設けられる。ナビゲーターがこの地点でオフィシャル車両の計測した距離と競技者車両の誤差を校正し、OMCP後の区間の計測距離を補正する。
ロードブック上のOMCP地点には、オフィシャルが計測したスタートからの距離が記載されている。この記載されている距離が、例えば10.0kmであるのに対して、自車がスタートからこの地点まで来た時のトリップメーターの数字が11.0kmであった場合、修正係数は11.0/10.0即ち1.1となり、自車は指示速度に1.1を乗した速度で走る必要が生じる。
この修正係数及び指示速度の算出には、古くは筆算、計算尺、歯車式計算機などが用いられた。クルタ計算機はラリー競技者に愛用された歯車式計算機のひとつである。しかし、交通戦争などの社会事情からラリーへの風当たりが強くなると、ラリーは指示速度が頻繁に変更される計算ラリーと呼ばれる形態に姿を変えて行き、簡単な算出方法が必要とされるようになった。
この需要に答えたのが、「円盤」と呼ばれるラリー専用の計算尺であった。これは、互いの角度を固定できる2本の針をもった円盤式計算尺で、まず一方の針をロードブック上のOMCPの距離(先の例の場合10.0)の目盛りに合わせ、もう一方の針を自車がこのOMCPまでに走った時点でのトリップメーターの距離(先の例の場合 11.0)の目盛りに合わせて、2本の針の角度を固定する。その後、最初の針を指示速度の目盛りに合わせると、もう一方の針が指す目盛りの速度が、自車が走行すべき速度になるというものであった。
しかし1980年代にトリップメーターと電卓が内蔵された専用のラリーコンピューター(通称ラリコン)が出現し、これらの算出用具を一掃した。ラリコンはグローブボックスに嵌め込まれ、現在時刻やスタート時刻、指示速度を入力すると自動的にファイナルタイムが表示される(操作するのは相方であるナビゲーター)。OMCPでオフィシャル数値を入力すると以後トリップメーターが自動的に補正される。
第2種アベレージラリー
リライアビリティランを主体とするが、コースの一部にスペシャルステージ (SS) やハイ・アベレージ区間 (高速走行区間) を含むことで、走りの正確さ+速さを競う。中上級以上に存在し、「スポーツラリー」とも呼ばれる[8]。
SSに指示速度は無く、目標タイムは0秒。したがって、この区間を通過するのに要した時間が減点される。例えば、SS走行タイムが3分12秒の場合、1秒1点換算では192点(60×3+12)の減点となる。ハイ・アベレージ区間(ハイアベ区間)はSSのような必ずしも占用状態ではないが、競技者が達成困難な速度(法定・指示速度以内)をあえて指示する。競技者が減点を最小限に留めようとハイペース走行をすることで、事実上のタイムトライアル区間となる。
レジャーラリー
競技性は薄く、初心者でも参加して楽しめるラリー。
注釈
出典
- ^ “ラリーの意味”. コトバンク プログレッシブ英和中辞典(第4版). 朝日新聞社/VOYAGE GROUP. 2017年3月13日閲覧。
- ^ a b "HISTORY". スズキWRCチャレンジ
- ^ WRC基礎用語辞典「ラリー」 世界ラリー選手権日本語オフィシャルサイト
- ^ 『F1と世界のモータースポーツ』138頁。
- ^ "ラリージャパンがやってくる!". ニッポンレンタカー. 2014年2月26日閲覧。
- ^ 2013国内競技規則 付則 (PDF, ラリー競技開催規定第2条(280頁))
- ^ "スペシャルステージラリーの競技規定について (2) ロードセクション". JRCA. 2014年2月25日閲覧。
- ^ 『新・実践ラリー入門』36頁。
- ^ a b 『新・実践ラリー入門』37頁。
- ^ 5. Rally Terra da Auga 2018
- ^ AUTO SPORTS 2012年12月13日 三栄書房刊
- ^ "ラリーを始めてみませんか". SSER. 2014年2月25日閲覧。
- ^ "【動画】ラリークロスの世界戦昇格が決定!". RALLY PLUS NET.(2010年10月9日)2014年2月25日閲覧。
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