ホビット (映画)
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ホビット | |
---|---|
The Hobbit | |
監督 | ピーター・ジャクソン |
脚本 |
フラン・ウォルシュ フィリッパ・ボウエン ギレルモ・デル・トロ ピーター・ジャクソン |
原作 |
『ホビットの冒険』 J・R・R・トールキン |
製作 |
ピーター・ジャクソン フラン・ウォルシュ キャロリン・カニンガム |
製作総指揮 |
ゼイン・ワイナー カラム・グリーン ケン・カミンズ |
出演者 |
マーティン・フリーマン リチャード・アーミティッジ イアン・マッケラン ベネディクト・カンバーバッチ オーランド・ブルーム アンディ・サーキス ケイト・ブランシェット イライジャ・ウッド クリストファー・リー |
音楽 | ハワード・ショア |
撮影 | アンドリュー・レスニー |
製作会社 |
ニュー・ライン・シネマ メトロ・ゴールドウィン・メイヤー ウィングナット・フィルムズ |
配給 | ワーナー・ブラザース |
製作国 |
ニュージーランド アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
興行収入 | 三作合計:$2,935,490,211 |
作品リスト
- 第1部 『ホビット 思いがけない冒険』(ホビット おもいがけないぼうけん、The Hobbit: An Unexpected Journey)
- 第2部 『ホビット 竜に奪われた王国』(ホビット りゅうにうばわれたおうこく、The Hobbit: The Desolation of Smaug)
- 第3部 『ホビット 決戦のゆくえ』(ホビット けっせんのゆくえ、The Hobbit: The Battle of the Five Armies)
概要
原作の小説『ホビットの冒険』は、J・R・R・トールキンの小説『指輪物語』の前日譚にあたり、映画『ロード・オブ・ザ・リングシリーズ』3部作を監督したピーター・ジャクソンが、本作でも引き続き監督を務めた。ホビット族の青年ビルボ・バギンズの冒険が、「一つの指輪」の発見や闇の勢力の伸展といった『ロード・オブ・ザ・リング』に連なる要素を絡めながら描かれた。3D映画として製作され、ワーナー・ブラザースの配給により、第1部『思いがけない冒険』は2012年12月14日(日本:同日)、第2部『竜に奪われた王国』は2013年12月13日(日本:2014年2月28日)に公開、第3部『決戦のゆくえ』は2014年12月17日(日本:2014年12月13日)に公開された。
主人公のビルボ・バギンズ役を、イギリス人俳優のマーティン・フリーマンが、ドワーフの王トーリン・オーケンシールド役を、同リチャード・アーミティッジが務めた。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズからも、ガンダルフ役のイアン・マッケラン、ゴラム役のアンディ・サーキス、フロド役のイライジャ・ウッドをはじめ、多数のキャストが参加した。
ピーター・ジャクソンによる映画化の具体的な企画は、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ成功後の早い段階で上がっており、待望されていたが、シリーズの利益を巡るジャクソンと製作会社ニュー・ライン・シネマ間の訴訟問題や、『ホビットの冒険』の配給権を握っていたメトロ・ゴールドウィン・メイヤーの度重なる財政危機問題、ニュージーランド映画産業全体を巻き込んだ俳優組合によるストライキ運動など複数の事情が重なり、遅々として進展しなかった。その後、これらの問題の解決を経て、遂に2011年3月より撮影が開始されるに至った。この間、一時期ギレルモ・デル・トロが監督として決定し、製作プロセスにおいて大きな貢献を果たしてきたが、スケジュールの遅延により調整が付かず辞退となった。
当初は前後編の2部作として製作が進められたが、本撮影終了後の2012年7月に全3部作となることが発表された。児童向けで分量も比較的少ない原作を壮大な3部作に仕上げるにあたっては、原作の冒険の背景や同時期に起こっていた出来事についての記述がある『指輪物語』の「追補編」からも素材が引かれている。
あらすじ
第1部 思いがけない冒険
平穏を愛するホビット族の青年ビルボ・バギンズは、魔法使いガンダルフの推挙により、ドワーフ王トーリン・オーケンシールド率いる13人のドワーフ族と共に、邪竜スマウグに奪われた彼らの祖国エレボールと財宝を奪還するため、「忍びの者」としてはなれ山への冒険に出発する。一行は、道中トロルとの遭遇やオークの襲撃を受けながらも、ビルボ自身の機転や魔法使いラダガストの助けにより難を逃れ、半エルフのエルロンドが治める裂け谷に辿り着く。裂け谷でガンダルフは、エルフの奥方ガラドリエルや魔法使いの長サルマンに対し、ラダガストよりもたらされた闇の勢力の復活の予兆を具申する。
裂け谷での休息を終え、霧降り山脈に入った一行であったが、地下街に棲むゴブリン達により捕えられてしまう。一方1人逃れたビルボは、地底湖でゴラムと遭遇し、なぞなぞ勝負の果てに姿を消す能力のある不思議な「一つの指輪」を手に入れる。辛くもゴブリン街から抜け出した一行であったが、一行の前にトーリンの仇敵であるオーク王アゾグが姿を現す。アゾグに追い詰められ、トーリンまで負傷してしまうが、ビルボがアゾグに果敢に立ち向かい、危機を脱する。それまでビルボに懐疑の目を向けていたトーリンであったが、以後ビルボに信頼を寄せるようになり、ビルボ自身も一行の仲間としての自信を持つようになる。
第2部 竜に奪われた王国
アゾグから逃れ、闇の森へ足を踏み入れた一行は、巨大なクモの群れに襲われ、更に闇の森のエルフに捕まってしまう。トーリンの因縁の相手である闇の森の王スランドゥイルの命により投獄された一行であったが、ビルボの一計により樽に乗っての脱出劇を試みる。急流を下る一行に再びアゾグの息子ボルグ率いるオーク隊が襲い掛かるが、一行を追う闇の森の王の息子レゴラスや護衛隊長タウリエルにより撃退される。
やがて湖のほとりに辿り着いた一行は、エスガロスの船頭バルドと出会い、エスガロスの町へ入国する。かつてエレボールの前に栄えた谷間の国デイルの王族の末裔であるバルドは、スマウグを刺激しはなれ山の奪還を目指すトーリンを非難するが、一行は財宝目当てのエスガロスの統領に歓迎され、遂にはなれ山へと辿り着く。一方、闇の森の前で一行と別れ、古城ドル・グルドゥアに侵入したガンダルフは、そこでアゾグ率いるオークの大軍を目の当たりにし、更に復活した冥王サウロンに遭遇する。はなれ山では、王の証であるアーケン石の捜索を命じられたビルボが財宝の間に侵入するも、スマウグの目を覚ましてしまう。ドワーフの帰還に激昂したスマウグが一行に襲い掛かるが、一行は怯まずスマウグを倒すべく反撃を試みる。しかしながら作戦は失敗に終わり、スマウグはエスガロスの町を破壊しに飛び立っていってしまう。
第3部 決戦のゆくえ
飛来したスマウグによりエスガロスの町は炎の海と化すが、バルドがスマウグの弱点を射抜き、スマウグは討ち取られる。エレボールを訪れたバルドは街の復興に必要な財宝の分け前を主張するが、「竜の病」に冒され、黄金への執着を見せるトーリンは申し出を断る。同じく財宝の所有権を主張するスランドゥイル率いるエルフの軍勢も加わり、ドワーフとエルフ・人間間の戦争が始まろうとしていた。トーリンを正気に戻すため、アーケン石を交渉の道具として密かにバルドに差し出したビルボであったが、真相を知ったトーリンは激高し、ビルボを追放する。バルドはアーケン石を手にトーリンに和平を呼びかけるも、ダイン率いる救援のドワーフ軍が到着したことを確認したトーリンは、交渉には応じず、開戦を宣言する。その時アゾグ率いるオーク軍が、サウロンの命のもとエレボールの占拠を目論み、姿を現す。
悪の勢力の登場を前に共同戦線を張るドワーフ・エルフ・人間軍であったが、トーリンだけは財宝の間に籠り、流される犠牲に目もくれず黄金を守り抜こうとしていた。仲間にも失望されるトーリンであったが、自問の末「竜の病」に打ち克ち、先陣を切って戦場に飛び出していく。死闘の末、アゾグと刺し違えたトーリンは、今際の際に駆け付けたビルボに自戒と謝罪の言葉を掛け、静かに息を引き取る。やがてドワーフ・エルフ・人間軍は勝利を治め、ドル・グルドゥアでもまた、ガラドリエルらがサウロンを東のモルドールへと撤退させることに成功していた。ここに長い冒険の旅は終わり、ビルボは友人トーリンとの思い出を胸に、故郷に戻ってきたのであった。
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- 1 ホビット (映画)とは
- 2 ホビット (映画)の概要
- 3 登場人物
- 4 キャスト
- 5 製作
- 6 外部リンク
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