フンボルトペンギン 生態

フンボルトペンギン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/21 23:58 UTC 版)

生態

野生での知見は限られ、主に飼育下での知見に基づいている[6]

協調性はよく、集団繁殖地(コロニー)でも激しく争うことは少ない[5]。飼育下での敵対行動として屈みながら頸部を捻じって片目で交互に相手を見るもしくは頭部の片方を相手に見せる・前のめりになり嘴を相手に向けるなどがある[6]。主にペルーでは1月、チリでは2月に換羽(水を弾く羽毛が生え代わり水中に入ることができない)を行い、約2 - 3週間を風を利用するために海岸の岩の上に集まり消耗を避けるためにほぼ眠って過ごす[5]。遊泳速度は平均時速3.4キロメートルだが、最高時速11キロメートルで泳いだ例もある[5]。ペンギン類としては浅い水深までしか潜水せず27メートル以上潜水することはまれで、最深潜水記録は54メートル[5]。主な潜水時間は1分から2分半で、最長潜水時間は165秒[5]

チリではサンマ類Scombresox、カタクチイワシ類Engraulis ringens、マイワシ類Sardinops sagaxなどの魚類を食べていたという報告例がある[6]。アルガロッポでは主にカタクチイワシ類を食べるが、マイワシ類・ミナミスルメイカTodarodes filippovaeも食べていたという報告例がある[6]。卵や雛の捕食者としてセチュラギツネ、ペルーカモメ、ミナミトウゾクカモメ、クロコンドルなどが挙げられる[6]

特定の繁殖期はないが、主に4 - 5月に繁殖を開始することが多い[5]。飼育下では周年繁殖することから、野生でも周年繁殖している可能性も示唆されている[6]。南部個体群では通常年に1回のみ繁殖するが、北部個体群では繁殖・育雛に失敗したペアと約半数の繁殖・育雛に成功したペアが9 - 10月に2度目の繁殖を開始することもある[5]。婚姻様式は一夫一妻制だが、飼育下では性比に偏りがある飼育環境では一夫多妻・一妻多夫となることもある[6]。死別しなければ前年のペアを解消することは少なく、同じ巣を利用する[5]。飼育下の観察例ではオスよりもメスの方がペアを変更する傾向があるとされる[6]。ペアの形成・維持の決定権がメスにあることが示唆されている[5][6]。繁殖行動(ディスプレイ)として単独で頭部をやや反らし翼を広げ鳴き声をあげながら前方に移動する(野生100 %・飼育下91.3 %でオスのみ行う)・ペアで向き合い前方に移動せずに同様の行為を行う・オスがメスを翼で叩いたり翼を震わせる・互いにおじぎをするなどが報告されている[6]。 日差しを避けるためにグアノの斜面に穴を掘り巣をつくることもあるが、グアノが採掘された場合は海岸の砂地や海岸の洞窟で繁殖することもあるが海岸では高波による浸水などにより繁殖成功率は低下する[5]。野生ではメスの巣材集めをした報告例はなく、飼育下では約81.5 %の巣ではオスのみが巣材を集める[6]。2個の卵を産み、産卵間隔は2 - 3日[5]。雌雄共に抱卵し、抱卵期間は平均40.7日[6]。繁殖成功率は環境による変動が大きく、平均で1つの巣で1.3羽[5]。エルニーニョが発生すると獲物の回遊範囲が変化することで繁殖地周辺に獲物がいなくなり、親鳥が獲物を探すために遠方まで移動し帰れなくなるほどの距離まで移動してしまうと残された片親が繁殖を放棄し雛が餓死してしまう[5]。エルニーニョ発生時には繁殖成功率が0.1羽以下まで激減することもある[5]。北部個体群では最大で年あたり4羽の個体が巣立つ可能性もあるが、4羽全てが巣立つことはまれとされる[5]。雛同士で群れ(クレイシ)を形成しない[5]。一生を巣と海を往復して過ごす。トンネルを掘り巣にするほか、海岸の洞窟や丸石の間などを利用するが、ときには地表面にも巣を作るときがある[7]。卵を2個産み、40日ほどで孵化する[7]

平均寿命は25年ほどといわれている[10]


  1. ^ Appendices I, II and III (valid from 26 November 2019)<https://cites.org/eng> (download 30/04/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Spheniscus humboldti. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (download 30/04/2020)
  3. ^ a b c d e f BirdLife International. 2018. Spheniscus humboldti. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T22697817A132605004. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T22697817A132605004.en. Downloaded on 30 April 2020.
  4. ^ a b c d e ポーリン・ライリー 「フンボルトペンギン」『ペンギン ハンドブック』青柳昌宏訳、どうぶつ社、1997年、147-149頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af David Salomon「フンボルトペンギン Humboldt Penguin」出原速夫・菱沼裕子訳『ペンギン・ペディア』、河出書房新社、2013年、83-95頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Tony .D. Williams 「フンボルトペンギン」津崎さゆり訳『ペンギン大百科』、平凡社、1999年、403-408頁。
  7. ^ a b c d e 藤原幸一『ペンギンガイドブック』阪急コミュニケーションズ、2002年、118-119頁。ISBN 4484024152 
  8. ^ Tony .D. Williams 「マゼランペンギン」津崎さゆり訳『ペンギン大百科』、平凡社、1999年、409-421頁。
  9. ^ チリのフンボルトペンギンに絶滅のおそれ、調査報告”. AFP通信社. 2023年5月29日閲覧。
  10. ^ フンボルトペンギン ご長寿「トォちゃん」35歳に”. 産経ニュース (2022年2月5日). 2022年2月5日閲覧。
  11. ^ a b c d 堀秀正 「日本でのペンギン飼育」『ペンギン大百科』、平凡社、1999年、216-232頁。
  12. ^ a b Penguin Library フンボルトペンギン”. HOSHIZAKI. 2016年7月1日閲覧。[出典無効]
  13. ^ a b “絶滅危惧のフンボルトペンギン、日本では“増え過ぎ””. 読売新聞. (2006年7月9日) [要出典科学]
  14. ^ “フンボルトペンギン:絶滅の危機、救いたい チリの飼育担当者、都内で研修”. 毎日新聞. (2006年2月5日) [要出典科学]






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