チキータ・ブランド 新しい株主とサイラス

チキータ・ブランド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 02:36 UTC 版)

新しい株主とサイラス

1992年、チキータ・ブランドは2.84億ドルの赤字を計上した。そこで大掛かりなリストラに手をつけ、1995年コスタリカ事業を売り払い、同年12月に精肉部門をスミスフィールド・フーズへ6千万ドルで売却した。この安い価格に加え、欧州連合との貿易摩擦に苦しんでいたこともあり[注釈 7]、業績は改善されなかった。1996年、チキータ・ブランドはリストラとしてホンジュラスのプランテーション労働者100家族を住み込み家屋から追い出した。人権委員会とカトリック教会が違法行為として糾弾したが、チキータ・ブランドは合法と主張して譲らなかった。1997年春からは世界貿易機関がEUクオータ制度に攻撃を加えるようになった。チキータ・ブランドは同年だけわずかな黒字を計上したが、翌年は台風に打ちのめされた(Hurricane Mitch)。EUクオータのせいで13億ドルも売上げを減らされていると主張、2000年に売上げ22.5億ドルと9480万ドルの赤字を計上した。2001年春に欧米双方が和解し、クオータ制度がゆくゆくは廃止されることとなった。しかし同年11月にはチキータ・ブランドが民事再生法の適用を申請した。2002年3月、債権者が保有する7億ドルの社債を95%分の新株に交換するという、画期的な整理が行われた。本当に、これまでの株主は持分を5%に圧縮されてしまったのである。新しい会長兼社長にブーズ・アレン・ハミルトン副会長であったサイラス(Cyrus F. Freidheim, Jr.)が選ばれた。[2][注釈 8]

EUクオータ全廃

怒涛の会社再編の結果、2003年に26.1億ドルの粗利と9920万ドルの黒字を計上した。この年ドイツ・オーストリア圏の販路としてアトランタ(Atlanta AG)を買収しており、これが利益をあげた。2004年1-2月にサイラスが退職し、プロクター・アンド・ギャンブルのフェルナンド(Fernando Aguirre)がそっくり交代した。3月、不祥事を発表した。合衆国政府がテロリスト指定していたコロンビアの組織に、コロンビアの子会社が用心棒代として金を払っていたのである。翌月、その子会社は処分されたが、しかしバナコル(Banacol)という売却先からチキータ・ブランドは仕入れを続けたのであった。2005年6月、カリフォルニアのPFG(Performance Food Group)からサリナス(Salinas)という生鮮食品卸会社を買収した。PFGはマクドナルドケンタッキー・フライドチキンピザハットにサラダを出荷し、アメリカサラダ市場の4割を支配していた。PFGは(サリナスで)カットフルーツも売っており、これにチキータ・ブランドの付加価値がついた。2006年からEUクオータが修正された一方で、ラテンアメリカからの運賃が膨れてきた。同年2月、チキータ・ブランドはコアマルク(Core-Mark)にアメリカ中のコンビニへチキータ・バナナを置いてくれるよう合意をとりつけることができた。[2]

  • 2007年3月、テロ組織と指定されていたコロンビアの民族解放軍へ金を払っていたことが露見、アメリカ当局へ2500万ドルを支払うことになった。
  • 2010年3月までにダノンと合弁会社を設立し、フランスのフルーツジュース市場の51%を支配している。
  • 2011年アトランタをベルギー資本のウニヴェグ(UNIVEG)に売却した。
  • 2014年10月、株主総会でアイルランドの同業(Fyffes)との合併を否決した。
  • 2017年9月末でEUクオータが全廃される見通しである。

脚注


注釈

  1. ^ 1カバレリア=13.4ヘクタール
  2. ^ 死者数は全て併せると20万人にも及ぶと推測される。
  3. ^ Donaldson, Lufkin & Jenrette. ドレクセル・バーナム・ランバートの庇護下にあり、2000年8月にアクサ・フィナンシャルからクレディ・スイス・ファースト・ボストンへ売却された。
  4. ^ ここで利益をあげた機関投資家には、ドナルドソンが運用するファンドもあったが、ドレフュス商会(現メロン財閥)が運用しバーニー・コーンフェルドが売りさばくドレフュス・ファンドもあった。
  5. ^ ブラックの息子レオンはドレクセル・バーナム・ランバートでキャリアを積んで、1990年にアポロ・グローバル・マネジメントApollo Global Management)を創設した。
  6. ^ ボストンの血を引くチキータ・ブランドは、ラッセル商会やボーンズマンとのしがらみをブッシュと持ち続け、一方ではジョン・モルガンロスチャイルドのいるベルギーのランベール閨閥の勢力下にあるといえる。
  7. ^ 砂糖・バナナ両面で。砂糖は1981年からEUが輸出補助金を出している(外部リンクの亀岡レポートを参照)。バナナは従来チキータがEU市場に4割のシェアを維持していたのが1993年から半分となった。
  8. ^ サイラスが他に持つ肩書きとしてブルッキングス研究所理事。Michael A. Levi、Michael E. O'Hanlon, The Future of Arms Control, Brookings Institution Press, 2004, p.111.

出典

  1. ^ 阿部久子 「ユナイテド・フルーツ会社: キューバにおける帝国主義支配の一事例」 ハバナ, 1976年(書評) 一橋研究8巻2号 1983年; 原書 Jorge Pérez, etc., eds., United Fruit Company: un caso del dominio imperialista en Cuba, Editorial de Ciencias Sociales, 1976
  2. ^ a b c d International Directory of Company Histories, Vol.83.
  3. ^ Cohen, Rich (2012年6月6日). “Birth of America’s Banana King: An excerpt from Rich Cohen’s The Fish That Ate the Whale”.
  4. ^ Zemurray (1877-1961)”. United Fruit Historical Society (2001年).
  5. ^ 松岡正剛. “反米大陸”. 松岡正剛の千夜一夜・遊蕩篇. 2012年4月7日閲覧。
  6. ^ Robert B Durham, False Flags, Covert Operations, & Propaganda, Lulu.com, 2014, pp.278-295.
  7. ^ Edsall, Thomas B. (July 1, 2004), “Republicans Name 62 Who Raised Big Money”, The Washington Post: A06, http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A19026-2004Jun30.html 
  8. ^ Drinkard, Jim (2005年1月17日). “Donors get good seats, great access this week”. USA Today. http://www.usatoday.com/news/washington/2005-01-16-inauguration-donors_x.htm 2010年5月17日閲覧。 
  9. ^ “Financing the inauguration”. USA Today. (2005年1月16日). http://www.usatoday.com/news/washington/2005-01-16-inaugural-donors_x.htm 2010年5月17日閲覧。 
  10. ^ “Some question inaugural's multi-million price tag”. USA Today. (2005年1月14日). http://www.usatoday.com/news/washington/2005-01-14-price_x.htm 2010年5月17日閲覧。 


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