ジョン・W・キャンベル 人柄と評価

ジョン・W・キャンベル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 00:41 UTC 版)

人柄と評価

デーモン・ナイトはキャンベルの風貌を「太っていて、ブロンドの髪を逆立たせ、挑発的な睨み方をする人物」と表現している[28]。「6フィート1インチでタカのような風貌で、一見して怖そうである」とはサム・モスコウィッツの言である[29]。アシモフは「背が高く、髪の毛は明るい色で、幅広の顔に薄い唇、常にシガレットホルダーをくわえていた」と書いている[30]

さらにアシモフはキャンベルについて「話好き、独断的、移り気で高圧的。彼と話をするということは、彼の話を一方的に聞かされるということを意味していた……」と記している[30]。ナイトもほぼ同様の意見で「キャンベルに捕まると長々と講義を聴かされることになるので、なるべくそういう事態にならないよう避けていた。キャンベルは相手の何倍も話し、特にとんでもないことを言って驚かせるのが好きだった」と述べている[31]

イギリスの作家で評論家のキングズリー・エイミスはキャンベルについて「社会学的注釈としてこの『アスタウンディング』誌の編集長は、際立った残忍さを持った人物であり、超能力機械を自ら発明したと思っていたようだ、とだけ付け加えたい」とそっけなく記している[32]

SF作家アルフレッド・ベスター"Holiday" 誌の編集者であり、洗練されたニューヨーカーだった。彼はキャンベルを「バートランド・ラッセルアーネスト・ラザフォードを足して2で割ったような人物」だと想像していた。そして「発狂したような邂逅」を果たしたときのことを後に語っている。それによるとキャンベルが真っ先に言ったのは、ダイアネティクスの新たな発見によってフロイトはとどめを刺されたということだった。そして、L・ロン・ハバードがノーベル平和賞を受賞するだろうと予言した。困惑するベスターにキャンベルは「思い出せ。お前の母親がお前を流産しようとしたことを思い出せるはずだ。お前は彼女を常に憎んできただろう」と言ったという。ベスターはこれについて「このことで、SF界の大多数が分別の無さを見逃しているという私の個人的意見が補強された」とコメントしている[33]

キャンベルは1971年、ニュージャージー州マウンテンサイドにて61歳で没した[34]。『アナログ』誌で34年間編集長を務め、最後のころにはキャンベルが育てた著名な作家の多くは、キャンベルの奇抜な個性と風変わりな編集方針についていけず、ほとんど彼の下に原稿を送らなくなっていた。

アシモフはキャンベルについて「彼の晩年の20年間は、かつて彼がそうであったものの縮み行く影でしかなかった」と結論している[26]。キャンベルが発掘した中でも最も成功した作家でしかも親友だったハインラインも[35]、最終的にはキャンベルとの親交を絶っている[36][37]


  1. ^ Isaac Asimov: I. Asimov: A Memoir, page 73
  2. ^ Ash, Brian (1976). Who's Who in Science Fiction. London: Elm Tree Books. pp. 63. ISBN 0-241-89383-6 
  3. ^ a b Amazing Stories. (August 1963). pp. 101. 
  4. ^ Analog Science Fiction/Science Fact. (October 1971). pp. 4. 
  5. ^ a b c Malcolm J. Edwards (1994) [1993]. “CAMPBELL, JOHN W(OOD) Jr”. In Clute, John & Nicholls, Peter. The Encyclopedia of Science Fiction. New York: St. Martin's Press. pp. 199. ISBN 0-312-09618-6 
  6. ^ Introduction: The Father of Science Fiction, by Isaac Asimov, in Astounding edited by Harry Harrison, page ix
  7. ^ a b del Rey, Lester (1976). The Early del Rey. New York: Ballantine Books. pp. 4–7,18. ISBN 0-345-25063-X 
  8. ^ a b Tuck, Donald H. (1974). The Encyclopedia of Science Fiction and Fantasy: Volume 1. Chicago: Advent: Publishers, Inc.. pp. 87. ISBN 0-911682-20-1 
  9. ^ del Rey, Lester (1979). The World of Science Fiction and Fantasy: The History of a Subculture. New York: Ballantine Books. pp. 91. ISBN 0-345-25452-X 
  10. ^ Astounding Science-Fiction. (November 1937). pp. 159.  1937年11月号の奥付によれば、1937年10月1日時点の編集長はトレメインだった。
  11. ^ 1938年4月号の編集後記によると、キャンベルが2月には掲載する作品の選択を任されていたことがわかる。編集後記に署名はないが、そこで最近の3号に掲載された作品を参照しており、そのうちの1つ(デル・レイの "The Faithful")はキャンベルが買い付けたことがわかっている。デル・レイ作品買い付けの経緯については The Early del Rey に詳しい。編集後記は Astounding Science-Fiction. (April 1938). pp. 125.  を参照
  12. ^ 例えば Nicholls (Clute, John & Nicholls, Peter, ed (1994) [1993]. The Encyclopedia of Science Fiction. New York: St. Martin's Press, Inc.. pp. 199. ISBN 0-312-09618-6 ) は「キャンベルによるSF黄金時代の始まりは1939年の夏だと正確に示すことができる」とし、1939年7月号から解説を始めている。レスター・デル・レイ (del Rey, Lester (1979). The World of Science Fiction and Fantasy: The History of a Subculture. New York: Ballantine Books. pp. 94. ISBN 0-345-25452-X ) は「7月がターニングポイントだった」と記している。
  13. ^ Unknown”. www.philsp.com. 2010年8月23日閲覧。
  14. ^ Joshi, S T (December 2006). Icons of horror and the supernatural. Greenwood Press. pp. 600. ISBN 978-0-313-33780-2. https://books.google.co.jp/books?id=CNXZZdER5mQC&pg=PA600&lpg=PA600&dq=unknown+magazine+john+w+campbell&redir_esc=y&hl=ja 2009年7月1日閲覧。 
  15. ^ Introduction: The Father of Science Fiction, by Isaac Asimov, in (Harrison 1973, pp. ix–x)
  16. ^ Through Eyes of Wonder, by Ben Bova, Addisonian Press, Reading, Massachusetts, 1975, ISBN 0-201-09206-9, pages 66-67
  17. ^ Our Five Days with John W. Campbell, by Joe Green, The Bulletin of the Science Fiction and Fantasy Writers of America, Fall 2006, No. 171, page 13
  18. ^ Our Five Days with John W. Campbell, by Joe Green, The Bulletin of the Science Fiction and Fantasy Writers of America, Fall 2006, No. 171, page 15
  19. ^ Editorial of June, 1961, Analog, page 5
  20. ^ Editorial of June, 1961, Analog, page 8.
  21. ^ Editorial of September, 1964, Analog, page 8
  22. ^ a b Astounding Science Fiction. (April 1950). pp. 132. 
  23. ^ SF作家で評論家のデーモン・ナイトは著書 "In Search of Wonder" に「SF雑誌界の万神殿においては、ジョン・キャンベルほど複雑で不可解で奇妙な者はいない」と書いている。ナイトはまた、キャンベルの疑似科学への興味を詩にしている。最初の一節は次の通り(試訳):
    おお、ディーン・マシン、ディーン・マシン
    あなたはまさにそれを潜水艦に設置した
    それはあまりにも高く飛び、見ることもできない
    素晴らしい、素晴らしいディーン・マシン!
  24. ^ 1957年、作家で評論家のジェイムズ・ブリッシュは次のように記している。「プロの作家の観点から見ると、『アスタウンディング』誌は編集者の興味の中心である超能力に偏っている。(中略)1957年1月・2月号のうち113ページが超能力関連で、172ページがそれ以外となっている。(中略)ただし、連載されていた長編は後に超能力ものになっているため、それを考慮すれば145ページが超能力関連、140ページがそれ以外となる」 James Blish, The Issues at Hand, pages 86-87.
  25. ^ 福島正実「ニューヨーク:二つの会見記 ポール、キャンベルに会う」『S-Fマガジン』1967年9月号。『S-Fマガジン』2014年7月号、pp.41-46に再録
  26. ^ a b Asimov 1994, p. 74
  27. ^ Introduction: The Father of Science Fiction, by Isaac Asimov, in (Harrison 1973, p. xii)
  28. ^ Aldiss & Harrison 1975, p. 114
  29. ^ Sam Moskowitz: "John W. Campbell: The Writing Years", in Amazing Stories, August 1963; Ziff-Davis Publishing Corporation. Reprinted in Seekers of Tomorrow, Masters of Modern Science Fiction, Sam Moskowitz, Ballantine Books, New York, 1967
  30. ^ a b Asimov 1994, p. 72
  31. ^ Aldiss & Harrison 1975, p. 133
  32. ^ New Maps of Hell, Kingsley Amis, Ballantine Books, New York, 1960, page 84
  33. ^ Aldiss & Harrison 1975, p. 57
  34. ^ Solstein, Eric; Moosnick, Gregory (May 23, 2002). “Appendix F: Obituary from The New York Times (July 13, 1971)”. John W. Campbell's Golden Age of Science Fiction: Text Supplement to the DVD. Digital Media Zone. pp. 98–100. http://www2.ku.edu/~sfcenter/JWC_Study_Supplement.pdf 2010年5月28日閲覧。 
  35. ^ Heinlein 1989, p. 8
  36. ^ Heinlein 1989, p. 36: 『天翔ける少女』をキャンベルに送ると、キャンベルから「少女の成長について何をしっているのか」とたずねる数千語の手紙が届いた。これをきっかけとして徐々に親交が途絶えていったという。
  37. ^ Heinlein 1989, p. 152: 1963年のハインラインから版権代理人への手紙で、キャンベルに原稿を送るくらいなら他の雑誌に送ってボツになったほうが楽しい旨が記してある(キャンベルに原稿を送るとどこがダメなのかを記した長い侮辱的な手紙が返ってくるから)。
  38. ^ Science Fiction and Fantasy Hall of Fame”. 2006年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年6月21日閲覧。
  39. ^ A Statement from the Editor” (英語). Analog Science Fiction and Fact. Dell Magazines (2019年8月27日). 2019年8月27日閲覧。






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