コールスタック 構造

コールスタック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/28 17:16 UTC 版)

構造

コールスタックはスタックフレームから構成される(アクティベーションレコードとも呼ばれる)。スタックフレームはマシン依存のデータ構造であり、サブルーチンの状態情報が格納される。各スタックフレームは完了していないサブルーチン呼び出しに対応する。例えば、DrawSquareから呼び出されたDrawLineを現在実行中としたとき、コールスタックのトップ部分は下図のようになる。

スタックトップのスタックフレームは現在実行中のルーチンのためのものである。最も典型的な手法では、スタックフレームには次の情報が格納されている。

  • そのルーチンの局所変数領域
  • 呼び出し側に戻るためのリターンアドレス
  • そのルーチンに渡された引数

フレーム内のメモリ領域はスタックポインタと呼ばれるレジスタを使ってアクセスされることが多い。スタックポインタはスタックのトップを指している。別の方法として、スタックポインタとは別のレジスタ(フレームポインタと呼ばれることが多い)を使うこともある。フレームポインタはフレームの中の決まった場所を指していて、例えばリターンアドレスが格納されている位置を指している。

スタックフレームは必ずしも同じサイズではない。サブルーチン毎に引数の個数も違うので、スタックフレームのサイズも異なる。ただし、同じサブルーチンを呼び出したときのスタックフレームは一般に同じサイズとなる。同様に局所変数領域もサブルーチンが違うとサイズが変わってくる。実際、言語によってはスタック上に動的にメモリを確保する機能を持っているので、同じサブルーチンを呼び出してもフレームサイズは変わってくるし、そのサイズはコンパイル時にはわからない。そのような場合、スタックポインタではなくフレームポインタでアクセスする必要が生じる。というのは、スタックポインタからリターンアドレス格納位置までのオフセットがコンパイル時に判明しないからである。

多くのシステムでは、スタックフレーム内に前のフレームポインタレジスタの値を格納する場所がある。つまり呼び出し側ルーチンを実行していたときに使っていたフレームポインタの値である。例えば、上図のDrawLineのスタックフレーム内にDrawSquareが使っているフレームポインタの値を格納する場所があるということになる。その値はサブルーチン呼び出し時に格納され、復帰時に戻される。そのようなフィールドがスタックフレーム内の所定の位置にあると、コールスタックに積まれているスタックフレーム群を(さかのぼって)辿っていくことが可能となる。

場合によっては、スタックフレームはオーバーラップしていると見なすこともできる。オーバーラップしているのは、呼び出し側から呼び出されたルーチンに渡される引数の部分である。環境によっては呼び出し側はスタックに引数をpushして自身のスタックフレームを拡張し、その後に呼び出しを行う。また別の環境では、各サブルーチンは自身が呼び出すかもしれない別のサブルーチンへの引数の領域を予めスタックフレーム内に確保していることがある。この領域は outgoing arguments area あるいは callout area と呼ばれる。この手法ではコンパイラが呼び出す可能性のあるサブルーチンのうち最大の引数領域を必要とするものを予め求めて領域サイズを決定する。


  1. ^ Interstage Application Server/Interstage Web Server チューニングガイド - 7.1.4 スタック
  2. ^ /STACK (Stack allocations) | Microsoft Learn
  3. ^ Threading Programming Guide - Thread Management | Apple Developer Documentation Archive
  4. ^ “Call Stack Coverage for GUI Test-Suite Reduction” by Scott McMaster and Atif M. Memon. In Proceedings of the 17th IEEE International Symposium on Software Reliability Engineering (ISSRE 2006), Nov. 2006.
  5. ^ “Call-Stack Coverage for GUI Test-Suite Reduction” by Scott McMaster and Atif M. Memon. IEEE Trans. Softw. Eng., 2008, IEEE Press.






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