エリソミケス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/14 02:20 UTC 版)
分類の変遷
本属のタイプ種はHesseltineとAnderson によって1956年に記載されたが、この時にはエダケカビ属のものとの判断から Thamnidium anomalum とされた[13]。しかしエダケカビ科全体の見直しの中でBenjaminらは上記のような判断からこの種を独立属として本属を記載した。なお、属名はこの分野で著名な菌類学者であるJohn J. Ellis に献名されたものである[14]。これ以降、本属の種は新たに記載されていない。
他方、属の所属に関しては記載の時点では特に議論のないままにエダケカビ科とされた。これは分枝した枝先に少数胞子の小胞子嚢をつけ、接合胞子嚢がケカビ Mucor に類する形式のものであるものをエダケカビ科とする、との判断に基づく[15]。これはこの時点までに行われてきた無性生殖と有性生殖の器官の特徴を用いた分類体系によるものであった。
しかしながら、分子系統による情報がこれらが真の系統関係を反映していないことを示し、大きな見直しが行われた。Hoffmann et al.(2013)によると本属のものは系統樹の一番奥、きわめて多彩な属種の入り交じったクレードに含まれ、これがケカビ科 Mucoraceae とされている[16]。詳しく見ると、本属のものはケカビ属の種である M. circinelloides や M. ctenidius などと同じクレードに含まれている。
さらにこのケカビ属の M. circinelloides と、本属を含むそれに類縁とされる群について詳細に調べた結果によっても本属のものとこれらのケカビ属の種とがやはり近縁である、というよりこの群の系統樹の真ん中に入り込んでいる、との結果が得られている[17]。もちろん本属の特徴は一般的なケカビ属の特徴、大型の胞子嚢のみを付ける、というのとは大いに食い違うのであるが、ここで興味深いのは M. ctenidius という種の存在である。この種は直立する胞子嚢柄の先端に大型の胞子嚢を付け、その軸の側面から短い細い枝を出して小胞子嚢をつける、というもので、そのために最初の記載ではエダケカビ属 Thamnidium ctenidiumとされ、後にバクセラ属 Backusella に移された(B. ctenidia)ことがある、というもので、つまり近縁な群に小胞子嚢をつけるものが存在していることになる。ただしこの種の系統樹の上での位置は、この群の一番基盤で分枝し、他の全種に対して姉妹群をなす、ということになっている。なお、この研究では上記のような結果を得た上で、本属を属として維持する、との判断を示している。
- ^ Benny & Benjamin(1975),p.330
- ^ 以下、Benny & Benjamin(1975),p.330
- ^ 以下、Benny & Benjamin(1975)p.330-332
- ^ ただし図では表面に顆粒が並んでいるようになっている。
- ^ 以下、Benny & Benjamin(1975),p.332
- ^ a b Benny & Benjamin(1975),p.332
- ^ a b Benny & Benjamin(1975),p.334
- ^ Benny(2005)[]2020/02/15閲覧
- ^ Wagner et al.(2020),p.84
- ^ この段はBenny & Benjamin(1975),p.332-333
- ^ Benny & Benjamin(1975),p.314-317
- ^ Benny(2005)[1]2020/02/15閲覧
- ^ Benny & Benjamin(1975),p.(331-332
- ^ Benny & Benjamin(1975)p.330
- ^ Benny & Benjamin(1975),p.303
- ^ Hoffmann et al.(2013)p.69
- ^ 以下、Wagner et al.(2020)
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