D型肝炎ウイルスの増殖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 10:19 UTC 版)
「D型肝炎ウイルス」の記事における「D型肝炎ウイルスの増殖」の解説
D型肝炎ウイルスのヘルパーウイルス(欠損ウイルスが必要とする別なウイルス)はB型肝炎ウイルスであり、感染力を持ったD型肝炎ウイルス粒子(ウイルス全体)を宿主の細胞内で作る時にB型肝炎ウイルスを必要とする。しかしながら、D型肝炎ウイルスのゲノムなどを複製する時にB型肝炎ウイルスは必要でなく、あくまでD型肝炎ウイルスがエンベロープに持つHBs抗原を供給してもらうことのみが、ヘルパーウイルスとしてのB型肝炎ウイルスの唯一の役割である。 D型肝炎ウイルスのゲノムは、宿主の細胞が持つ酵素によって複製されるのであって、B型肝炎ウイルスは関係無い。 他にも、ウイルスの型によって、D型肝炎ウイルスのゲノムRNAの転写部位が多少異なりはするものの、いずれにしてもδ抗原をコードするRNAも転写されて、宿主の細胞がδ抗原を生産するといった具合に、HBs抗原以外については宿主細胞があればD型肝炎ウイルスだけで事足りるのである。ただし、D型肝炎ウイルスのゲノムはマイナス鎖のRNA(つまり宿主が普段合成しているmRNAとは逆側の鎖)であるのにもかかわらず、D型肝炎ウイルスのゲノム自体にはRNA合成酵素(RNAポリメラーゼ)がコードされていない。 さらに、宿主の細胞にはマイナス鎖のRNAを合成するRNA合成酵素は無い。宿主の細胞が持っているRNA合成酵素であるRNAポリメラーゼIIを使って、D型肝炎ウイルスが自身のゲノムを複製していることは、RNAポリメラーゼIIを阻害するα-アマニチンを投与すると、D型肝炎ウイルスのゲノム複製も阻害されることから間違いないだろうと考えられている。 しかし、D型肝炎ウイルスが、宿主の細胞の持つRNA合成酵素では合成できないはずのマイナス鎖のRNAウイルスのゲノムを、一体どうやって宿主に合成させているのかは、1998年現在、謎となっている。
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