鉄鋼業の衰退と地域経済への打撃
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「ヤングスタウン (オハイオ州)」の記事における「鉄鋼業の衰退と地域経済への打撃」の解説
1920年代から1960年代にかけては、ヤングスタウン市内にはリパブリック・スチールやU.S.スチールなど大手の製鉄会社のものを含む数多くの溶鉱炉や鋳造所が建ち並び、市は重要な工業の中心地となっていた。しかし、シカゴ、ピッツバーグ、クリーブランド、アクロンなど、より規模の大きい工業都市とは異なり、その頃のヤングスタウンの産業構造は多角化することはなく、地域経済は鉄鋼業に大きく依存していた。そのため、ヤングスタウンは1970年代の全米的な経済構造の変化についていくことができず、市内の工場は数多く閉鎖に追い込まれ、その穴を埋める産業がほとんどないままで取り残された。 1969年の、ニューオーリンズに本社を置く造船会社ライクス・コーポレーションによるヤングスタウン・シート・アンド・チューブの買収は、この地域における鉄鋼業が終焉へと向かう転換点となった。この合併により、ヤングスタウン・シート・アンド・チューブは何十万ドルもの債務を負い、経営拠点もマホニング・バレーの外に置かれることになった。1977年9月19日、ヤングスタウン・シート・アンド・チューブはこの地域における操業の大部分を停止し、77年の歴史に幕を閉じた。地元住民の間では「ブラック・マンデー」と呼ばれ、記憶に残ることとなったヤングスタウン・シート・アンド・チューブの閉鎖は、この地域における鉄鋼業の「死」の凶兆となった。これに続くように、1979年から1980年にかけてUSスチールがヤングスタウンから撤退し、1984年にはリパブリック・スチールが破産し、LTV傘下のジョーンズ・アンド・ロックリン・スチールと合併してLTVスチールとなり、創業の地であるヤングスタウンを離れた。 地域の鉄鋼業再生への試みもなされたが、成功することはなかった。ヤングスタウン・シート・アンド・チューブが閉鎖された直後、地元の宗教指導者、鉄鋼労働者、運動家は、南東郊のキャンベルに残された同社の廃工場を買い取り、再生させる草の根プロジェクトに共同で参加した。しかし、そのプロジェクトは1979年4月に失敗に終わった。 鉄鋼業の衰退はヤングスタウン市内の商業にも影響を与えた。1900年代初頭から1970年代中盤にかけては、ヤングスタウンはマホニング・バレーにおける小売業の中心地であった。かつては、ダウンタウンにはヤングスタウン創業のストラウス・ハーシュバーグス(現在はメイシーズの一部)、およびマクケルビーズ(現在はディラーズの一部)という2つの代表的な百貨店があった。市の目抜き通りであるウェスト・フェデラル・ストリートには各種専門店が軒を連ねていた。また、ダウンタウンにはパレス・シアター、ワーナー・ブラザース・ファースト・シアター、ステート・シアター、パラマウント・シアターという4つの映画館もあった。しかし、これらの映画館は1950年代から1970年代にかけて、徐々に客足が遠のいていき、やがて閉館に追い込まれた。さらに、1970年代初頭に完成した、南郊のボードマンのサザン・パーク・モール、および北西郊のナイルズのイーストウッド・モールという2つの大型ショッピングモールの開店により、ダウンタウンに残っていた店舗は相次いで閉店や移転に追い込まれた。そこに追い討ちをかけたのが1970年代終わり頃の地元鉄鋼業の崩壊であった。1980年代から1990年代にかけて、市の商業を再生させようという試みもなされてきたが、全て失敗に終わった。 製鉄会社の閉鎖・移転の余波により、この地域では約40,000人の製造業従事者が職を失い、約400社の関連企業が倒産・閉鎖に追い込まれ、個人所得の合計額は4億1400万ドル減少し、学校用の税収は33-75%減少した。ヤングスタウンは今もなお、その傷跡から完全に立ち直ってはいない。 ブルース・スプリングスティーンが1995年にリリースしたアルバム、「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」に収録されている「ヤングスタウン」というバラード曲では、ヤングスタウンにおける鉄鋼業の衰退と、地元労働者に降りかかった影響が歌われている。スプリングスティーンはこのアルバムをリリースした直後に行ったコンサートツアー、「ゴースト・オブ・トム・ジョード・ツアー」の行程にヤングスタウンでの公演を入れた。スタンボーグ講堂(後述)で行われたこの公演は満席になった。
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