規模が大きくかつ未盗掘の粘土槨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/24 03:38 UTC 版)
「長尾山古墳」の記事における「規模が大きくかつ未盗掘の粘土槨」の解説
長尾山古墳で特徴的な点の一つが、全国で10指に入る規模の長大な粘土槨の埋葬施設を有することである。古墳の規模から見て分不相応とも思える規模の粘土槨である上に、これまでに掘り込まれた跡は皆無で極めて遺存状態が良く、未盗掘であると考えられる。 粘土槨は良質の灰白色の粘土で作られている。底面は長さ約6.8メートル、幅2.6メートルから2.7メートル、高さは遺存状態が良好な部分で約1メートルである。また墓壙と粘土槨との間の距離は狭い。粘土槨上部は長さ5.8メートル、幅1.2メートル程度の陥没が認められるものの陥没の程度としては軽度であり、特に小口付近は粘土槨完成当時の様相をよく留めていると考えられる。つまりこれまで盗掘者に荒らされていない上に木棺の腐朽などによる形の崩れも少ない、遺存状態が極めて良好な粘土槨であると評価できる。 墓壙底面の礫敷は粘土槨の下部にも敷かれていると考えられるため、礫敷が完成した後にまず棺床粘土を敷き、その上に木棺を据え、それから被覆粘土で木棺を覆うという工程で粘土槨は作られたものと推定されている。また粘土槨南西部の形状から、おおよそ10センチメートルの厚みの粘土を層状に積み重ねるようにして粘土槨を作っていったものと推定される。長尾山古墳の粘土槨には楕円形の浅い圧痕や細長い窪みが検出されているが全体としては滑らかな表面をしており、粘土槨でよく見られる工具を使用して叩き締めた痕跡は見当たらず、工具を使用していたとの断定は困難である。むしろ墓壙と粘土槨との隙間が狭いため、圧痕や窪みは作業時に膝が当たったり手をついたりして出来たものと見られている。 粘土槨は発掘されることなく、荒らされることを防ぐために上面を鉄板で覆った上で埋め戻された。このため被葬者の埋葬状況は不明であるが、粘土槨の状態から被葬者は北側に頭を向けて埋葬されていると推定されている。
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