異端児の苦悩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 04:55 UTC 版)
営業の活動範囲が徐々に拡がり始めると、世間はおろか住友関連企業も厳しい反応を示すようになる。住友以外の企業を訪問すると社名のため「土建屋さんですか」と聞かれる。住友の商事であることを説明すると「浮利を追わない住友が商売なんかやれるはずがない」と言われ、「ヤミ建」と陰口をたたかれたこともあった。廃墟のような工場をはいずりまわり、在庫物資の払い下げを受けていたことなどからそう見られた。また住友系企業の経営幹部には、「鈴木総理事の商社禁止宣言と、住友の営業要旨の「浮利を追わず」に商事活動は反する」と決まって2つの理由をあげるものもいた。また後年、日建産業が住友商事と社名を改称しても、商事を爪はじきする住友系企業がまだあった。住友商事の幹部が、日本を代表する企業にのしあがったある住友系企業に取引の拡大をお願いに行ったところ「当社の製品を扱うのは第一級の商社である。住友商事に商売ができるはずがない。まして禁を破ってつくった会社に扱ってもらういわれはない」。日建産業時代の社員は、世間や住友関連会社の厳しく冷たい態度に何度もくやしい思いをした。そのたびに、旧本社時代に骨の髄までたたきこまれた住友精神「浮利を追わず」をあらためて噛みしめた。
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