無盲腸目の解体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 08:29 UTC 版)
1954年、R. Sabanは、形態を使った系統学的解析により、無盲腸目の中でハリネズミ科が他より離れているとし、無盲腸目をハリネズミ型亜目(ハリネズミ科)とトガリネズミ型亜目(その他全て)に分けた。しかし1981年、J. F. Eisenbergは、無盲腸目の中でテンレック科とキンモグラ科からなる系統が最初に分かれたことを示唆し、テンレック型亜目として独立させた。しかし当時はまだ、無盲腸目の単系統性を疑う者は少なかった。 1980年代より、分子生物学(分子系統学的解析)の発展により、従来の生物分類体系には、大きな変更が加えられた。その中で、テンレック型亜目は無盲腸目の中で最初に分かれたのみならず、まったく別の系統であることが明らかになった。また、まだ可能性があった、有盲腸類のいずれかと無盲腸目が近縁ではないかという主張も、完全に否定された。 2001年、W. J. Murphy et al.は哺乳類の新たな分類を発表した。これは真獣類を4つの大グループに分けるものであり、そこでは、従来の無盲腸目が、別々の大グループに属する2つの目に分けられていた。この分類から旧食虫目の位置づけのみを抜粋すると、次のようになる。 真獣下綱真主齧上目登木目 皮翼目 ローラシア獣上目真無盲腸目 - トガリネズミ科、モグラ科、ハリネズミ科、ソレノドン科 異節上目 アフリカ獣上目アフリカトガリネズミ目(アフリカ食虫目) - テンレック科、キンモグラ科 ハネジネズミ目 テンレック形亜目が、無盲腸目の他のグループとは系統を異にする「アフリカトガリネズミ目 (Afrosoricida)」として、目のレベルで独立した。このグループは、長鼻目、海牛目などと単系統をなす。この系統はアフリカ大陸に起源をもつとされ、アフリカ獣上目 (Afrotheria) と名づけられた。 一方、トガリネズミ、ハリネズミ、モグラなど、それ以外の無盲腸類は新しく「真無盲腸目 (Eulipotyphla)」と命名され(言葉自体は古くからあったが新しい意味に再定義された)、奇蹄目、食肉目、翼手目などと単系統をなす。この系統は北半球のローラシア大陸起源であるとされ、ローラシア獣上目 (Laurasiatheria) と名づけられた。 なおこれ以降も、無盲腸目が食虫目と呼ばれたのと同様に、真無盲腸目を食虫目、あるいは無盲腸目と呼ぶことがあった。
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