核スピン異性体
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核スピン異性体(かくスピンいせいたい、英: Nuclear spin isomer)は、核スピンが0でない原子核が分子内において等価な位置に2つ以上有る時に発生する核スピン修飾 (nuclear spin modification)の違いによる異性体。例えば、水素分子のように等価な原子が2つのものの場合、核スピンが置換に対して「対称」なものをオルトと呼び、「反対称」なものをパラと呼ぶ。これらの異性体間の変換は核スピンの変換を伴うために、気相のような自由空間では非常に遅いとされる。よって、このような場合、お互い別々の分子として扱われることがある。
- 1 核スピン異性体とは
- 2 核スピン異性体の概要
- 3 参考文献
核スピン異性体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 01:03 UTC 版)
「プロトン化水素分子」の記事における「核スピン異性体」の解説
H3+ の構造は正三角形なので、3つの水素原子は等価な位置にある。水素原子核は核スピン1⁄2を持ち、3つが等価な位置にあるために、H3+ は核スピン異性体を持つ。3つの水素原子核の核スピンの対称性により、総核スピン数が1⁄2と3⁄2という違う値となり、これによりオルト H3+ (3⁄2) とパラ H3+ (1⁄2) という2種類の核スピン異性体が存在する。 1997年にウイ (D. Uy) らが行なった水素の放電実験において、放電ガスとして、普通の水素ガス(オルト水素:パラ水素 = 75%:25%)を放電したときと、パラ水素を濃縮した水素ガス(パラ水素99%以上)を放電したときで、放電によって生成さする H3+ のオルトとパラの比が違う(パラ水素ガスを使った場合はパラ H3+ が多く生成する)ことが発見された。これは、H3+ が生成するときの反応 ortho-H2+ + ortho-H2 → ortho/para-H3+ + H ortho-H2+ + para-H2 → ortho/para-H3+ + H para-H2+ + ortho-H2 → ortho/para-H3+ + H para-H2+ + para-H2 → ortho/para-H3+ + H において、生成物である H3+ のオルトとパラの生成比が違うことを意味する。また実験結果から、それらの分岐比は、核スピンの対称性を保存するようになっていることが示された。 さらに、このオルトとパラの比の放電開始直後の時間変化を追った場合、生成後もオルトとパラの間で変換が起こっていることが発見された。このことは、 ortho/para-H3+ + ortho/para-H2 → ortho/para-H2 + ortho/para-H3+ という、反応前後で分子の数としては変化のない反応でも、プロトンをやりとりすることにより、オルトとパラが変化する反応が起こっていることを示している。 このように、核スピンの対称性が化学反応の前後で保存されるとする理論(化学反応における核スピン保存則)は、クアック (M. Quack) により1977年に提案されたが、この H3+ の実験により、はじめて実験的に検証されたことになる。
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核スピン異性体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 20:17 UTC 版)
核スピンが0でない原子核が分子内において等価な位置に二つ以上有る時、その分子は核スピン修飾 (nuclear spin modification) による核スピン異性体を持つ。その中でもっとも合成核スピン量子数が大きい物をオルトという。 例)オルト水素 ortho-H2 (I = 1)、 ortho -CFH3 (I = 3/2)
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核スピン異性体と同じ種類の言葉
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