店頭市場と会計戦争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 21:34 UTC 版)
デリバティブ市場には二種類ある。金融商品取引所などの公開市場を介さない相対での取引(店頭デリバティブ)と、公開市場を介する取引(市場(上場)デリバティブ)である。取引規模としては市場デリバティブより店頭デリバティブの方が圧倒的に大きい。店頭デリバティブ市場は1980年代初頭にユーロカレンシー・ユーロ債市場で発生した。発行体のバランスシートには載らないオフバランス取引が、デリバティブについては堂々と行われていた。 1984年、財務会計基準審議会が緊急問題専門委員会(EITF)を設置して、オフバランス金融に関する問題を集中討議した。委員会は金融商品ごとの事後対応に限界を感じて、審議会に包括的な会計基準をつくることを要請した。1986年5月、審議会は委員会の要請を討議の項目に加えた。さしあたりディスクロージャーさせて実態を認識し、各デリバティブを負債/資本項目のいずれとするべきかを考えることにしたが、悠長な姿勢は機関投資家をグローバルに増長させた。ようやく1990年3月と1991年12月にそれぞれ基準書を公表して、審議会はディスクロージャーの充実を図った。これらの基準はリスクの顕在化しないデリバティブをディスクロージャーの対象外とする甘いものであった。この点、1994年10月の対応で打ち切りとなった。 ビッグバン目前の1985年12月、英国勅許会計士協会が「オフバランス金融と粉飾決算」という真面目な会計基準を公表した。実質的な経済効果を重要とするウェールズの会計基準であったが、しかし法律専門家が反発して論争がおこった。機関投資家の時間稼ぎであった。会計委員会の示す妥協案は、支持されながらも会社法改正作業で施行されなかった。会計委員会が蒸し返すと、後継の会計基準審議会(Accounting Standards Board)は早急に基準化はできないといい、またも時間がすぎた。1993-4年に分厚いレポートが出たものの、やはり遅く、内容も結果から推察されるあまいものだった。
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