導管体としての限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 08:09 UTC 版)
「特別目的事業体」の記事における「導管体としての限界」の解説
SPVは単なる資金調達のための器(conduit)でしかないため、譲受資産から得られる収益から調達金利や必要なコスト等を差し引いて残った利益に対して、課税されずに投資家、あるいはオリジネーター(資産原所有者)へ還元する必要がある。そこで、たとえば、常に純利益を0とする、もしくは初年度に大幅な欠損金を計上し、それ以降の期においてはその欠損金を利益で徐々に埋める。 純利益を常に0とする方法では、会社の場合は匿名組合を用いて、利益を匿名組合配当として還元する方法や、特定目的会社の場合は税制優遇を利用して、社員への配当を利益の90%以上行うことで実現する方法、信託を用いる場合は常に信託会計上のP/L(損益計算書)は0になるようになっているためにこれを実現することが出来る。 SPVは単なる器に過ぎないため、例えばSPVが金銭債権をオリジネーターから譲り受けた場合であっても、SPV自体が元利金の回収を行うことは当然不可能である。そのため、通常SPVとオリジネーター間にはサービシング契約を締結し、オリジネーターが当該債権の回収業務をSPVに代わって行うことが通例となっている(債権回収会社となる)。その際、オリジネーター兼サービサーに対してはSPVからサービシング報酬を支払う事が一般的である。 しかし、サービサーがオリジネーターであると言うことは、SPVに対してオリジネーターから譲渡した資産であっても、当該資産がオリジネーターの倒産リスクに晒されることとなる。これを排除するため、通常はSPVは1人(=1社)以上のバックアップサービサーを準備することが一般的である。これにより、オリジネーターが破綻した場合であっても代わりにバックアップサービサーがサービシングを行う事でSPVが保有する資産を滞りなく回収することが出来る。ただし、その場合でも資産の劣化は否めない。
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