対内的紛争と集団の安定性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/26 04:16 UTC 版)
「紛争理論」の記事における「対内的紛争と集団の安定性」の解説
対外的な敵対関係が集団内部の結束を強める一方で、内部紛争も集団の凝集性・安定性を促進させる効果を及ぼすとコーザーは指摘している。意外なことに、結束力の弱い集団においても内部紛争が集団の維持を可能とする「安全弁」の役割を果たすと主張している。それは、下記に示す理由によっている。内部紛争によって生じた敵対的な参加者(集団へ不満を持つ者)が、集団から脱退することによって集団は解体を免れる(その代わり、敵対的な参加者が別の敵対的集団を形成することになる)。 ある程度の内部的対立は、集団の成員に満足・気晴らし・救いを提供するものであり、個々の不満を解消し、より大きな不満の蓄積を回避するものである。 人間社会において、あらゆる関係に対立は付き物である。その対立を蓄積することなく放出すれば致命的な紛争に発展することなく、集団の統一性を維持・強化できるというのがコーザーの理論の骨子である。 だが、それも対立・紛争を許容する開かれた社会・集団であれば可能だが、敵対的な意思の表明をほとんど認めることがない硬直した社会・集団においては、対立・紛争は「安全弁」の役割を果たさず致命的な打撃をあたえる暴力的な闘争へと発展することも示唆している。さらに、成員同士の相互依存関係が致命的な紛争の勃発を抑止するが、そのような関係性が希薄な場合は、対立・紛争はより激しいものへと発展していくことになる。つまり、集団の凝集性・安定性は、成員間の相互依存の程度によっても大きく左右されるということを示しているのである。
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