クマラスワミ報告書
別名:クマラスワミ報告、女性に対する暴力に関する特別報告書、女性への暴力に関する特別報告書、女性に対する暴力、その原因および結果に関する特別報告者
1996年に国連人権委員会に提出された、女性に対する暴力をテーマとする特別報告書の通称。特別報告者ラディカ・クマラスワミの名にちなむ。
このクマラスワミ報告書の「付属文書1」が、日本の、いわゆる従軍慰安婦問題に関する調査報告となっている。
クマラスワミ報告書・付属文書1では、日本軍が女性を「性奴隷」として扱った、軍隊性奴隷制(military sexualsl avery)の実態があった、と断言さえている。「被害者」として調査取材に応じた朝鮮人女性らの証言にもとづき、日本軍が行ったとする「蛮行」の様子を仔細に記述し、その上で、日本政府に被害者女性への謝罪や賠償などを行うよう勧告している。
産経新聞が2014年4月に報じたところによれば、クマラスワミ報告書が提出された直後、日本政府は国連人権委員会に反論文書を提出している。反論文書は、この「付属文書1」の内容が「極めて問題が多い」「法的には成り立たない恣意的な解釈に基づく政治的主張である」として、これを全面的に否定するものとなっている。しかし、この反論文書はすぐに撤回されている。文書の内容も非公開とされた。
日本政府は、クマラスワミ報告書に対して、「甘受」とでも表現すべき立場を示してきたといえる。
いわゆる従軍慰安婦問題は、1980年代に朝日新聞などで取り上げられた吉田清治による証言(いわゆる「吉田証言」)に依拠するところが少なくない。吉田証言は慰安婦問題の基調となり、クマラスワミ報告書にも影響を与えている。しかし吉田証言の信憑性には疑義も持たれていた。2014年に朝日新聞が「吉田証言」の内容に虚偽・誤報があることを認め、吉田証言は虚言であったことが確定的となった。
この流れを受けて、2014年10月半ば、菅義偉・内閣官房長官が、日本政府としてクマラスワミ報告書の内容の一部を撤回するよう特別報告者ラディカ・クマラスワミに要請したことを明らかにした。
関連サイト:
「慰安婦=性奴隷」に対する日本の反論文書を入手 国連報告は「不当」「歪曲」と批判も撤回 - MSN産経ニュース 2014年4月1日
「クマラスワミ報告書」に対する日本政府の反論文書の要旨 - MSN産経ニュース 2014年4月1日
クマラスワミ報告
(クマラスワミ報告書 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/10 02:14 UTC 版)
クマラスワミ報告(クマラスワミほうこく)とは、国際連合人権委員会の決議に基づいて提出された、「女性に対する暴力とその原因及び結果に関する報告書」の通称である。「クマラスワミ」は、国際連合人権委員会に任命された特別報告者であるラディカ・クマラスワミ(Radhika Coomaraswamy)を指す。クマラスワミ報告書ともいう。
- ^ 秦郁彦 1999, p. 260
- ^ アジア女性基金 [1] 21ページ
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- ^ a b 西岡力「世界中にばら撒かれた「慰安婦問題」が捏造である完全なる根拠 (5/7)」『SAPIO』2012年8月22・29日号、小学館、2012年9月13日、2012年10月20日閲覧。
- ^ 『戦争と性』第25号2006年5月[要ページ番号]
- ^ a b 従軍慰安婦問題への政府の対応に関する声明 - 日本弁護士連合会・1995年11月16日付け
- ^ 西岡力「世界中にばら撒かれた「慰安婦問題」が捏造である完全なる根拠 (6/7)」『SAPIO』2012年8月22・29日号、小学館、2012年9月13日、2013年6月6日閲覧。
- ^ アジア女性基金 アジア基金と私たち(P21-23)
- ^ 全文はアジア女性基金サイト内「慰安婦問題と償い事業をめぐる国内外の論議」>国連等国際機関における審議>国連関係>人権委員会(国連人権理事会)>E/CN.4/1996/53/Add.1.,4 January 1996「Addendum Report of the Special Rapporteur on violence against women, its causes and consequences, Ms. Radhika Coomaraswamy, in accordance with Commission on Human Rights resolution 1994/45, Report on the mission to the Democratic People’s Republic of Korea, the Republic of Korea and Japan on the issue of military sexual slavery in wartime」で英語・日本語ともに読めるほか、ラディカ・クマラスワミ 2003もある。
- ^ クマラスワミ報告 附属文書1 日本語訳 (44-48ページ)
- ^ 秦郁彦 1999, p. 268
- ^ 秦郁彦 1999, pp. 268–270
- ^ 日本語訳『従軍慰安婦 : 性の奴隷』三一書房 1995年
- ^ a b c 秦郁彦 1999
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- ^ 「クマラスワミ報告」解説 【荒井信一】
- ^ 秦郁彦 1999, pp. 266–267
- ^ クマラスワミ報告 付属文書1.IV.証言 54節
- ^ 秦郁彦 1999, pp. 273–274
- ^ 秦郁彦 1999, p. 265
- ^ 【あの戦争と向き合う(中)】従軍慰安婦:もつれた糸、ほぐして 戦後の歩みこそ「誇り」 47NEWS 2014年8月19日
- ^ アジア女性基金 アジア基金と私たち (PDF) (p.23)
- ^ 【歴史戦】「クマラスワミ報告書」に対する日本政府の反論文書の要旨+(4/4ページ) MSN産経ニュース 2014年4月1日
- ^ 【歴史戦】「慰安婦=性奴隷」に対する日本の反論文書を入手 国連報告は「不当」「歪曲」と批判も撤回+(1/2ページ) MSN産経ニュース 2014年4月1日
- ^ 秦郁彦 1999, p. 328
- ^ 記事を訂正、おわびしご説明します 朝日新聞社 慰安婦報道、第三者委報告書 朝日新聞 2014年12月23日
- ^ “従軍慰安婦報告書の修正不要 元国連調査人と会見”. 共同通信社. 47NEWS. (2014年9月4日) 2014年9月4日閲覧。
- ^ a b 読売新聞2014年9月6日13S版2面
- ^ 国連人権委報告「朝日の記事が影響」…官房長官 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2014年9月5日
- ^ 読売新聞2014年10月16日13S版1面
- ^ クマラスワミ報告書の記述撤回要請…日本政府、ク氏に面会し直接申し入れ 産経ニュース
- ^ 2014年10月21日参議院、内閣委員会、サイバーセキュリティ基本法案(第186回国会衆第35号)、官房長官の10月16日記者会見に対し山下芳生質問、菅義偉官房長官答弁
- 1 クマラスワミ報告とは
- 2 クマラスワミ報告の概要
- 3 慰安婦問題に影響する付属文書1
- 4 評価
- 5 参考文献
- 6 関連項目
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