キャリーオーバー制の導入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/30 19:40 UTC 版)
「マクロ経済スライド」の記事における「キャリーオーバー制の導入」の解説
平成28年に成立した「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」により、平成30年度からは、マクロ経済スライドによって前年度よりも年金の名目額を下げないという措置は維持した上で、未調整分を翌年度以降に繰り越す仕組み(キャリーオーバー制度)を導入することとなった。これにより、平成30年度以降の調整期間における改定率については、新規裁定者については「算出率」を、既裁定者については「基準年度以降算出率」を基準とすることを原則とする。 「算出率」=名目手取り賃金変動率×(調整率×前年度の特別調整率) 「基準年度以降算出率」=物価変動率×(調整率×前年度の基準年度以降特別調整率) 過去の未調整分を前年度まで累積させたもの(特別調整率)を改定率に乗じることにより、未調整分を含めた調整を行うこととなる。なお「算出率」「基準年度以降算出率」が1を下回る場合は改定率の改定は行わない(=年金額は据え置きとなる)。また調整率が1を上回るときは、これを1とすることとされた。つまり、新規裁定者の改定率は前年度の改定率に算出率を乗じたもの、既裁定者であれば前年度の基準年度改定率に基準年度以降改定率を乗じたものがそれぞれの改定率となる。なお平成29年度の特別調整率は1とされ、以降は毎年度、(名目手取り賃金変動率×調整率/算出率)を基準として改定する。 平成30年度の場合、物価変動率がプラス0.5%、名目手取り賃金変動率がマイナス0.4%であることから、マクロ経済スライドは実施せずに年金額は前年度から据え置き(0.998)となるが、未調整分の累積分(マクロ経済スライドが発動した場合の調整率。公的年金被保険者総数変動率(1)×平均余命の伸び率(マイナス0.3%)=マイナス0.3%)については、翌年度以降に繰り越して特別調整率として調整する。 平成31年度は、物価変動率がプラス1.0%、名目手取り賃金変動率がプラス0.6%であることから、マクロ経済スライドが発動され、本来の改定率は1.004となるところであるが、前年度のキャリーオーバー分が繰り越され、 平成31年度算出率(1.001)=名目手取り賃金変動率(1.006)×(調整率(0.998)×前年度の特別調整率(0.997)) となり、 平成31年度改定率(0.999)=前年度改定率(0.998)×算出率(1.001) であるから、平成31年度の老齢基礎年金の満額は780,900円×0.999=780,100円となる。
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