カリアスの誇り(正義)の吟味
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 18:33 UTC 版)
「饗宴 (クセノポン)」の記事における「カリアスの誇り(正義)の吟味」の解説
続いて、先に挙げた各人の誇りとするものを、1つずつ吟味・検証していくことを、ソクラテスが要求する。 まずカリアスの「正義(正しさ)」についての吟味から行われ、カリアスは、ソクラテス等が「正義(正しさ)」についての(哲学的な・頭でっかちな)議論に行き詰まり(アポリア)、途方に暮れている間、自分は「人々に金を与える(寄付・施しをする)ことで、実際に彼らをより正しい者にしている」と主張する。 すると、アンティステネスが立ち上がり、カリアスに批判的に「人間が正しさを持っているのは、魂の中か、財布の中か」と問う。カリアスは「魂の中」だと答える。 アンティステネスが、それではカリアスは「人々の財布の中に金を入れることで、人々の魂をより正しいものにしている」ということかと問うと、カリアスはそうだと答える。 アンティステネスが、なぜそういう理屈になるのか問うと、カリアスは「人々は、生活必需品を購入できるだけの財貨があると知っていれば、危険を冒してあえて悪事を行おうとは望まない」と指摘する。 アンティステネスが、ではその人々は、カリアスに金を返したり、感謝の気持ちを表したりするかと問うと、カリアスは「返さないし、表さないし、(劣等感から)むしろより一層自分(カリアス)を嫌う者すらいる」と答える。 アンティステネスは、やり込めるようにカリアスを見つめながら、「人々を、他の人々・他の事柄に対しては正しい者にできるのに、自分(カリアス)自身に対しては正しい者にできないのは、不思議なことだ」と皮肉を言う。 しかし、カリアスは、「他の人々のために家を作るが、自分は借家に住んでいるような(他者を益するのと同じような形で、自分自身を益することができない)大工・建築家も多くいるのだから、そうしたことは不思議なことではない」し、むしろやり込められているのはアンティステネスの方だと反論する。 ソクラテスも、「占い師たちも、他の人々のために未来を予言するが、自分自身の予見はできないと言われている」と、カリアスに同調し、アンティステネスに耐え忍ぶよう諌める。 この話はこれで終わった。
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